第8話 過去の記憶と報告書と写真と愛されたい
意識が沈んでいく。身動きは取れないが目の前に映画のようなスクリーンがある。画面がつきまるで走馬灯のような映像が体験した出来事を映画の様に逆再生されいく。
私は「ああはるだ。もう出会ったときが懐かしい」そう流れる記憶を見ながら呟いた。まだまだ記憶は逆流していく。そしてはるに出会う前一人ぼっちで周りとは関わり合わない自分。「ああ…皆からはこう見えてたんだ。」そう思いながら見つめることしかできない画面を見つめる。
そして過去を遡る。映像はある一面でフリーズした。
それは父との記憶だけど映像は止まったまま動かない。
「お父さん…」そう小さく呟いた瞬間体が引き上げられる感覚と共に目を覚ます。真っ白な天井が目にはいる。はるは私の手を握り横でスピスピと寝息を立てている。
はるの頭を撫でると枕元には置き手紙があることに気づく『機関に報告にいく。また何かあればよろしく頼む
桝忠明』と帰りの電車賃と共に短い文章で括られていた。
はるを起こし帰る準備をしようとする。はるに「心配かけてごめんね」と言うと「うん!大丈夫だよ!」と頭を撫でられた。「でも…すごくうなされてたけど大丈夫?」「大丈夫だよ。ありがとう」とそう返事をした。
うおミンと別れて数週間後私達は夏休みに突入していた。
はるはうおミンからもらった鍵をネックレスにして大切に持っていた。私達は夏休みの課題を二人で片していたすると家のインターホンがなる。確認すると桝おじさんだった。
はるは玄関を開け「久しぶりだね!おじさん!」と元気よく挨拶をしていた。「少し邪魔してもいいかな?」とはるの頭を撫でながら私に目配せをする。私ははるに「課題一人でできる?」そう言うとはるは「もう!子供扱いしないで!」とほっぺたを膨らまして怒った。私は笑いながら「じゃあちょっと行ってくるね」と私は家を後にした。
車に乗り込みおじさんが話を始める。「前話したことを覚えているか?」と「何のこと?」と私は何の話か掴めずにいた。「あの巨大生物の文献の話だ。君のお父さん?かはわからないが」と私に資料を渡してきた。「これは報告書だ。私とその前の何かわかればいいな」とおじさんは微笑しながらつぶやいた。
私は資料をめくる。内容はおじさんが伝えてくれていた通りだった。最後のページ以外は。
そこには写真があった。ぼろぼろだがかろうじて大人の男性と小さい女の子にうおミンそっくりの異邦の者が写っていた。「この写真の少女は君か?」そうおじさんは聞いてくる。「多分私だと思う...昼間見た夢の中でこんな光景をみたから…」おじさんは「少し写真を借りていいか?」と言うと写真を握りおでこの前でお祈り?を始めた。
「ぷはっ…記憶は見えてこないな」と言いながら写真を私に返してきた。私は笑いながら「なにそれ」と言いながら同じことをする。記憶を辿るようにすると少しずつ断片的な記憶が流れこんでくる。
「お父さんなんてキライっ!どっかいっちゃえ!」と少女はお父さんと呼ばれる男性に叫ぶ。「■■…そんなこと言わないでよ…」と女の子を抱き上げる。女の子は「いー…だ!」とそっぽを向くが「このこのー!」父親のほっぺたがすり寄せられている。
とても…とても幸せな記憶だ。懐かしい感じがする。そう思うと私は写真を両手で握りしめていた。
何か硬い感触がある。手を開くとそこには鍵がこの写真の記憶?から生まれたものだろうか。前までは物からは鍵は生まれなかったのになと握り込むとおじさんが驚いた顔で「本当に鍵が生まれるんだな…」とそういいながら「その鍵は見なかったことにしておくまた一緒に仕事をしよう」そう言うと家まで私を送り届け車で走り去っていった。
家に帰った私ははるに「ねえはるちょっと出かけない?」と声をかけた。はるは「行く行くー!どこ行くのー?」と二つ返事で了承してくれた。「それじゃあと」私ははるの手を握り写真の記憶から生まれた鍵を使う。
そこは満点の星空が広がる場所だった。あの時の夢で見た宇宙の様な海私はその光景に圧倒されている時だ。
急に大きな鳴き声が聞こえる。あたりを見回すとあの時の巨大な生物だ。その影に隠れて小さな影がはるは「うおミーンまた遊ぼうねー!」と叫んだ。すると遠くから小さな声で「うおーーーー!」と聞こえた気がした。
私達はちょっとだけ涙を流しながら「私たちも前に進もう!」とそう声を揃えた。
そして少し時は流れる。夏の厳しい暑さがなくなり少しずつ涼しくなっていく頃だ。また異界の扉は開く。
その扉を越えてきた者は嘆く。
「ああ…愛されたい。誰か…誰か俺を。俺と認めてくれ…」そう呟く彼は目の前に擬態できる者あるいは物がほぼ無限にあることに気づく。
「愛されないなら…愛されるものになり変わればいい…ヒヒッ」そう小さく笑う影をまだ二人は知らない。
第9話に続く
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