第7話 諦めと打開策と放浪と溺没

未確認生物発見のニュースは大いにSNSを賑わせていた。それもそうだ私は頭の中で『どうしよう…』そればかり考えていた。はるは「すごいねー!未確認生物だってー!」と能天気にテレビを眺めていた。

私は、もううおミンを違う世界に送ることで終わりにするそんな手立てを考えていた。はるは悲しむだろうそれでも世界を守るためには仕方ないとそう言い聞かせはるに伝えようとしたときだ。


家のインターホンがなる。はるは「はーい!」と来客用のカメラを見て「桝おじさん来たよ!何か忘れ物かなー?」と言ってドアを開けに玄関へと向かっていった。すると「すずちゃーん!おじさんが呼んでるよー」と玄関にくるように促された。「夜分遅くに申し訳ない。少しいいか?」そう外に出るように合図された。「あ、はいわかりました」私はそう言いサンダルを履いて外に出た。


「あの未確認生物は多分異界の生き物だろうな…もう余り時間がないな」そうおじさんは口を開いた。「あの子を…うおミンをもう異世界に送るつもりか?」とそう言われたとき私は心の内側が全て見透かされたような気がした。

「表情が暗いな…昼間のお前はもっと生き生きとしていたぞ」と私は「時間が…ないじゃないですか」と悔しさから拳を強く握り少し涙がこぼれてきた。おじさんはそう聞くと優しく頭を撫でながら「そう気負うな…何かあった時は俺がなんとかする。それにあの子を送り返すのを諦めないんだろう?」そう少し笑いながら笑っていた。

「でも…!方法がないんです。」そう言うとおじさんは「まあそれはそうだな…だが可能性が全部無くなったわけじゃないだろ?」そう言うとおじさんは「明日出かけるぞ」そう告げられた。


朝早く私たちは日本海の船の上にいた。はるは「すっごーい海だー!」とはしゃいでいた。うおミンも同様にテンションを上げて変な踊りをしている。船の操舵席からおじさんが「あまりはしゃいで海に落ちるなよ。」と二人を嗜めていた。未確認生物の発見された場所へと向かう。

『未確認が仮にうおミンの世界線が混ざり合う過程でこちらの世界に迷い込んで来たならお前の力で同じ世界に送り返せるんじゃないのか?』そうおじさんに提案されて私たちは今日本海の未確認生物発見ポイントまで向かっていた。


はるとうおミンは船酔いで完全にダウンしていた。「いいか?発見されたポイントはこのあたりだ。しかし潜ったりすることはできない。だから」そう言うとおじさんはうおミンを持ち上げて「ちょっとだけ怖い想いをするが許してくれ」そう言うとうおミンを海に浸けた。

すると少し水面がうおミンを中心に振動を始めた。それに気づいたはるが「うおミン溺れちゃう!」とおじさんを突き飛ばして海に落としとた。

「うおミン!大丈夫?」とおじさんからうおミンを引ったくると「おじさん!なにしてるの!うおミン死んじゃったらどうするの!」と泣きながら怒っていた。

海に突き落とされたおじさんはなんとか這い上がりながら「すまないでもこれでくるはず。うおミン大丈夫か?」そう聞くとうおミンは全然平気そうだった。むしろ少し元気になっていた。はるに抱きしめられて苦しそうにはしているが。


少したつと魚たちが一方向に一斉に泳ぎ出した。おじさんは「来たか。」そう告げると海面に現れた巨大な影に何かを投げた。するとあたりにはすごい霧が溢れ始めた。周りは一切見えないが声だけが聞こえる「今のうちだこの影に触って鍵を作れ!」そう言われて私は咄嗟に手を出した瞬間海に落ちた。私は焦ってしまいどちらが上かわからなくなった時何かに持ち上げられた。それは巨大なヒレのようなもので少しザラついていた。記憶を読もうとしてない私に何故か記憶が流れて来た。それはその魚の様な物の生きてきた記憶だが瞬きをすると世界が変わっていく。


あるときは海の中の様な場所をある時は砂漠の様な海をそして宇宙のような海をそこでその生き物は体をくねらせ体から光り輝く小さな卵が生まれたことに気づく。私は「綺麗…」そう呟いていた。

そして現実に戻る一瞬ある記憶が見えた。それは人間の大人と小さな女の子との記憶それは何故か少し懐かしい気持ちにさせられた。


目を覚ますと船の上で「おい!おい!大丈夫か?」そういいながらおじさんが顔を覗かせていた。はるは「すずちゃん大丈夫!?」そううおミンと少し安心した顔をしていた。起き上がると手のひらの中に小さな鍵を握っていた。

「この生き物色んな世界に行ってる。すごく…すごく綺麗だった。迎えにきたんだようおミンを。」そう私ははるに告げた。はるは「そっか…お母さんに会えたんだねうおミン…」とまた泣き出していた。


私達は、うおミンに「さよならだね…」と告げるとうおミンは巨大生き物と私達を交互に見つめはるに抱きよった。しばらくうおミンは抱きついたままでいるとはるはまたボロボロと泣きながら「またね…またね…」と繰り返していた。うおミンはさよならを終えると巨大な生き物に飛びついて海の中に消えていった。


船で陸に戻る時私とはるは背中合わせで座っていた。何も喋らなずにいるとはるがその沈黙を破った。「うおミンがね。さよならする時にくれた物があるの」そう言うとお互いに向き直しはるが手のひらを開く。

それは小さな鍵だった。「うおミンがね。離れた時に手に握ってたの」私は「そっか本当の兄弟みたいだったもんね。それはいつでも会いにきてね。って意味じゃないかな?」そう私ははるに告げた。


陸に着き宿として取っていたホテルに向かう。おじさんはその道中「今回の件実は前歴があったんだ。」そう話し始めた「12年前にな。でも詳しいことは書かれていなくてなサメの子供のような生き物を海につけたら迎えがきた。とそれだけしか書かれてなかった。」はるは「そうなんですねだからうおミンを海に…」と元気がない返事をしていた。「ああ…それでな一つ気になることがあったんだが。報告者の名前が鍵夜成弘と君と同じ姓名でね。」私は「お父さん…?」と聞いた時だ。ひどく頭が痛み出した。はるが「すずちゃん?すずちゃん大丈夫!?」そう呼びかけられながら意識がなくなっていく。


まるで海に溺れた時のように意識が沈んでいくような感覚に囚われた。


第8話に続く

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