第6話 散歩と考えと謝罪とタイムリミット

少し早めの夏休み(ずる休み)を初めて3日経つ未だにうおミンの世界への手がかりは掴めない。

「待て待てー」そういいながらうおミンと部屋の中で追いかけっこしてるはるは、ニコニコとまるで新しい兄弟でもできた様にはしゃいでいた。


笑顔のはるを見るのは嬉しいだが…もううおミンがこちらの世界に来て4日だ。もうあまり猶予はない私は当初一週間の間に解決策を見い出しうおミンを元の世界へ送り返すつもりでいた。だが今のところあれから一切の進展はない。


「はる。私ちょっと出てくるね。家からうおミン連れてでちゃダメだよ?」そう言うとはるは、「ほーい気をつけてねー」とうおミンも言葉を理解しているのか「うお」と小さく返事をした。


私は、雲ひとつない晴天の下を俯きながら歩く出来るだけはるに悲しくないお別れをしてほしいだが世界を守るためには…

そんな考えをまとまらない思考の中でかき混ぜながら歩き続ける。気づけばあの日うおミンと出会った河川敷の近くにまで足を運んでいた。何か手がかりになるものはないだろうかと思いながら河川に近づく。その時だ「おい」と聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。


私は咄嗟に振り向き後ろに立つ男を睨みつける。それはあの二匹の怪物の時に居た扉管理機構の悪態野郎だった。

「お前こんなところで何をしている…学校はどうした。お前も機関の駒なら目立たない行動をしろ」と上から見下す様に悪態を吐く。

「うるさい!あんたには関係ないでしょ!この悪態野郎!」そう言い返すと悪態野郎は「そうかそれはすまなかったな」と言うと少しのの間沈黙が続く。

なんだかいいすぎたなと少し申し訳なくなっていると悪態野郎は「なあ…あの女の子はどうなったんだ?」と口を開いた。「ひとつ頼まれ事をして欲しい。あの時はすまなかったと一言伝えてほしい頼めるか?」そう言われて顔を見た時悪態野郎は少し申し訳なさそうな顔をしていた。

私は「あの子は無事だよ。怪我はしたけど」と逆に少しイジワルしてやった。悪態野郎は「そうか…」と口をつむぐと振り返りどこかに行こうとした。

「ちょっと待ってよ!申し訳ないと思うなら力を貸して!」私は、そう悪態野郎に叫んでいた。


悪態野郎を連れてうおミンがいる家まで戻る。「ただいま」と玄関で声を出すとはるが「おかえりー!」とうおミンを抱いて玄関まで走ってきた。うおミンも「うお」とヒレを片方上げながら挨拶を返す。

悪態野郎は隣で固まっていた。


フリーズした悪態野郎をとりあえずリビングまで上げて話を初めようとすると悪態野郎ははるに頭を下げ「私は桝隆章といいます。あの時はすまなかった。君に助けてもらったのに礼も言わずに現場を去った事を許してほしい」そう深々と頭を下げた。

はるは「おじさん無事で良かったよー」と「私飛び込んだ後から記憶ないからダイジョーブ!」と何故か自慢げにしていた。

内心私はハラハラしていたこの男がまたはるの記憶を消すと言い出すとどうしようかと思っていると「それでは本題に入ろうか」そう男は切り出した。

「まず目の前にいるのは異邦の者だね?」そう男は私に問いかける。「そうだけど記憶が辿れずに元いた世界には返せない」そう言うと男は首をかしげる。

「記憶を辿るとはどう言うことだ?異邦の者は扉を開き違う世界に送り出すただそれだけだろう?何を言っているんだ?」そう男は私に問いかけた。


私はいつも扉で異邦の者を元の世界に送り出す時の方法を男に伝えた。だが男は「そんな方法は聞いたことがない。そもそも記憶など辿れない。しかしだ、お前たちは一体この異邦の者をどうするつもりなんだ?」そう問いかけられた。

私達は声を揃え『この子は元いた場所に返す!』そう口を揃えた。「そうか…わかった。あと2日猶予をやる。このことは機関にも報告はしない。助けてもらった礼だ。だが…世界はもう混ざり始めているそれ以上は待てない。期限が過ぎた時は私がその子ザメを別の世界へ送る。いいな?」そう男は言い放った。

私は「わかった」と言いはるは「子ザメじゃなくてうおミン!」とプリプリ怒っていた。男は「うおミンかいい名前だな。すまなかった。」そう言うと立ち上がり「失礼する」と家を出ようとした時はるが「ありがと!おじさん!」そう言うと少し照れ臭そうに家を出ていった。


はるは「うおミンをうちに帰すぞー!」と意気込んでいたが少し表情に寂しさが見えた。

その日の夕方夕食を食べニュースを見ていると『緊急ニュースです。』と何やら只事ではない様子で報道番組が流れていた。『本日の正午過ぎ日本海沿岸で新種の生物らしき存在が数種類確認されました。』とそこには漁師の人の慌てている動画と共に間違いなくこの世界のものではないものが画面に映し出されていた。

「あ、これマジで時間ないやつだ…」そう私は心の中で呟いた。


第七話に続く

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