第5話 夏とマスコットとボイコットと追跡

「馴染みすぎでは…」そう私は呟く「ん?すずどうしたの?」はるは座ってお菓子を食べながら話しかけてくる。膝の上にちょこんと座るマスコットが悩みの主だ。マスコットの様な小さな魚の生物は名前をうおミン。とはるが名付けた。一応異界の者だ。はると一緒にテレビを観ながらお菓子を食べジュースを飲むなんでこうなったか少し時間を遡ろうと思う。


あれは、夏の始まり徐々に気温が上がり始めた頃だった。私もはるも高校3年生になりはるのお陰でクラスに少しずつ馴染んでいた。私達は四六時中一緒にいた。お互いに家を行き来し登校も学校にいる間も下校中も家にいる時もだ。ある日曜日私達は河川敷を散歩しながら夏休みどこに行こうかと話し合っていた。はるは「海!花火!バーベキューでしょ!あーあとキャンプもいいなー!あとねあとね」ととても楽しそうにしたいことを列挙していた。

「すずは何がしたい?」そう話を振られた時私は少し戸惑い「んーそうだね…」と少し考える。その時だ。河川敷に不自然に水が吹き上がる場所があった。私達は目を合わせその場所に走って行く。私達が近づいたころ不自然な水の噴き出しは止まっていた。だが、そこにはマスコット人形の様なまるで漫画から飛び出してきた様な魚の様な生物?が横たわっている。はるが「なになに?」と覗き込んでくる。一目見たはるは即座にその生物のマスコット人形の様なものを持ち上げまじまじと見ている。「かわいいー!」とはるは持ち上げ抱きしめるその時だ。『ぅお』とそのマスコット人形が声を上げた。私は、「ねえ、はる今声だした?」とはるは「だしてないよ」と二人でまじまじ見つめる。その時だはるの腕の中でマスコット人形が暴れ出す。はるは「う…動いたー!」と目をキラキラさせて歯がいじめにしている。そして逃げられないのがわかったのかマスコット人形は、ぐったりとしてはるの腕の中で大人しくし始めた。はるが「元気ないね。あ!もしかして水の中じゃないと息できないのかも!」と水辺に近づけた瞬間大暴れしてはるの腕から抜け出し川から離れて行く。二人してポカーンとしているとはるは「あの子もしかして扉の向こうからきたんじゃないかな?」とそう言われた時私は「追いかけよう!」と二人でマスコット人形を捕まえに走った。


そしていやっとの想いで捕まえた私達はもう汗でびちょびちょだった。幸い大人しくしてくれていればただの人形にしか見えない。通じるかわからないが「少しだけ動かないでね」といい足速に家まで帰った。

家に着きお風呂に入って出てくると二人はテレビを見ながらお菓子を食べジュースを飲んでいた。「馴染みすぎでは…」と「あ!すず名前付けたの!うおミン!」と自慢げにはるは言う。うおミンと名付けられた方も何故か少し自慢げな雰囲気を出していた。私は「少しごめんね」とうおミンの記憶を辿ろうとうおミンのヒレにふれる。


そこは暗闇だった。次の瞬間ヒビが入り青空が広がる。卵の中にいたのだろうそう感じた次の瞬間水の中に落ちる。

そして海流に飲まれて目を覚ませばはるに抱き上げられていた。「すずどう?何かわかった?」はるがそう聞いてくる。「この子赤ちゃんだ…どうしようこの子の記憶からじゃ元いた世界に返してあげられない」そう呟くとうおミンがうとうとしだしてはるの腕の中で眠った。はるが声を押し殺しながら「ねぇねぇこの子2人で面倒見ようよ!」とだがそうはいかないいずれは元の世界に帰さないと向こうの世界とこっちの世界が混ざってしまう。

しかし目を輝かせるはるをガッカリさせたくない私は「少し間だけね…」けれどもし世界が混ざり始めたら私は強制的にどこかに送る決断ができるのだろうか…そのことははるには黙っておこう。その時が来るまでは。


その日はそのままはるの家で寝た。うおミンとはるはそのままリビングで寝てしまったみたいだ。はるを起こしに行くとうおミンははると全く同じ寝相で寝ていた。もしかしてはるのことを母親だと思っているのでは...それよりも学校の時間が近づく。私ははるを急いで起こし朝食を準備する。うおミンには何を出せばいいかわからず小魚を準備していた。「おはよーぉ」と寝ぼけた声ではるが食卓にくる。もちろんうおミンは抱き抱えてだ。「うおミンは小魚ね」私ははるにそう告げるとはるは小魚を持ち上げうおミンの口元へ「あーん」としていたがそっぽを向かれたようだ。「がーん」と口にだして言うはるを横目にはるの朝食を平らげたうおミンは満足そうにお腹をさすっていた。


朝食を食べ終わった私達は学校の準備をするがうおミンは連れて行けないさてどうしようかと悩む夏休みまではまだ一週間以上ある。「私休もっかな」とはるが言い出す。

1日家に一人で置いておくわけにはいかない「そうだねそうしよっか」と学校をボイコットすることにした。

「学校ずる休みなんて初めてだー!」と何故かはしゃいでいるはるを横目に『どうやって元の世界へ繋げようか』私はそのことで頭がいっぱいだった。


〇〇県の河川敷で扉が開いたと報告があった。しかしそこにはなんの痕跡も残っていない。「一足遅かったか…」男はそう呟く。「全くこの街は異常だな。何故こうも扉の出現が頻発するんだ…まあいい前回のように扉が破壊されているようなことはない多少の猶予はあるか。」男はそういいながら暗闇の中に消えて行く。


第6話につづく

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