第4話 家族と暗闇と笑顔と新生活
私は扉を開くために今にも崩れそうな鍵を鍵穴へと入れる。ゆっくりと扉を開くそこには見たことない街の夕暮れが広がっていた。私は扉をくぐり抜け辺りを見回すそこには綺麗な夕暮れとはるの姿があった。「はる!」と声をかけようとした時はるの隣には三人の人影があった。黒いモヤの様な物体とはるは楽しそうに話している手を繋ぎ横一列にならんで歩いている。はるは満面の笑みを浮かべている帰り道私に見せるあの笑顔だ。声をかけるのに一度躊躇した私はまずは静かに見守ろうと後をつけたしばらく後ろをつけたころ見覚えのある光景があった。はるの記憶を辿った時だこの後はるの家族は扉に引きずり込まれるそれは止めなければと体が動く。私が「はるー!」と声をかけた瞬間世界がぐにゃぐにゃと歪み始めた。
次の瞬間そこは暗闇だった光は一切ない本当の暗闇だ辺りに腕をふると壁の様な感触がある私は壁をつたいながら歩き始めた。一体自分がどこにいるのかもわからない果たして前進しているのかその場に止まっているだけじゃないのかと気の遠くなる様な感覚に身震いする。何時間歩いただろうもう私は何も見えず何も感じなくなっていた。はるに会いたいそう強く想っていた。私はその場に座り込み涙を流しがら「はる...はる...どこにいっちゃったの?」と小さく漏らす扉を開ける前あんなに強く保っていた感情は今まさに音を立てて崩れ去ろうとしていた。その時だ私は思い出すはるの言葉を『困っている人がいるなら必ず助ける!』と言っていたはるの言葉を「助けてはる...私どうしたらいいかわかんないよ...」うなだれる私を白く薄い光がてらしだした。
目の前には扉が現れていた、私はすがる様に扉を開くその先にははるが立っていた。はるは私を見ると優しく声をかけてきた「すずちゃん...こんなところまで迎えに来てくれてありがとう」と私は「ごめんね...ごめんね...」と何度も何度も謝るそんな私をはるは優しく抱きしめる「すずちゃんはね何にも悪くないよ」と私は涙が止まらなかった罪悪感からでも後悔からでもないただただはるに会えた。それだけがとても嬉しかったからだひとしきり泣いた私ははるに「元の世界に帰ろう」とはるの手を引くはるは少し驚いた様に「すずちゃんから誘ってくるなんて初めてだね」そう話すはるは少し微笑んでいた「でも...」と少し寂しそうに「私は帰れないここがいいの」と全く想像してない返答が返ってきた。はるは涙をポロポロと流しながら喋り出す「ここはね...ここにはね...お父さんも...お母さんも...弟もいるの」とその瞬間私ははるの記憶で見た瞬間がフラッシュバックする「私ね...全部思い出したの今まで忘れてたこと、なんで家族が急にいなくなっちゃうんだろうって思ってた。でもねもういいのここには皆いるだから私は帰れない」そう語る彼女はいつもの様に笑おうとしながら「だからねすずちゃん本当に迎えに来てくれてありがとうごめんね...」そう言われた時初めて本当に初めて自分の気持ちをぶつけた。「嫌だ...!嫌だよはる!こんなお別れなんてないよ!私はずっと...ずっとはると一緒にいたいの!」心臓が高鳴るそれは今までの人生で感じたことのない感覚だ。私ははるの手を握る「行こうはる...!もう寂しいなんて思わせない!私はどこにも行かない!私ははるのために生きるだからはるも私のために生きて!」そういいながらはるを強く...強く抱きしめた。はるは泣き出したお互いに抱きしめあいながらはるは「うん...うん...!」と頷いている。
その瞬間薄い暗闇だった世界が壊れていく雲ひとつない青空が広がっていくそして目の前にあの黒いモヤが現れた。表情はわからないだがはるが静かに手を振るとモヤ達も手を振ったはるが泣きそうな顔でせいいっぱいの笑顔で「行ってきます!」と言うとモヤ達は頷きながら消えていった。はるは満足そうな顔をしている。その顔を見て私も嬉しくなってきた。
「さっ!帰ろっか!」とはるが手を引く私も頷きお互いの手を重ね合わせる二人の記憶いつもの帰り道の記憶を辿る。すると手のひらにまた崩れそうな鍵が生まれる。
はるが「えらくボロボロだね」と鍵をつつきながら言う「こら折れたらどうするの」とはるが鍵に触れた瞬間モヤが溶けた様に鍵の形状が変わって行くそれはほのかに温かみを感じる輝きを放つ鍵へと変わった。
私は「はるの心が救えたから綺麗な鍵に生まれ変わったんだね」と呟くするとはるが「これすずちゃんの鍵じゃないの?」そう言い出した。「なんでそう思うの?」と聞くと「ほらこの辺のツンツン具合がすずちゃんそっくり!」と私は「そんなことない!」とはるをみる「またまたー照れちゃってー!」と二人で大笑いしながら「さっ帰ろう!」と扉を開き病室に戻りる。
はるは目をぱちぱちさせながら起き上がる。
病院の先生を呼びはるが開口一番に「先生!私今日退院します!」と叫ぶと鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしていた。
ある程度の検査が終わり付き添いがあるならと特別に許可をもらい帰路につく。
はるは帰り道いつもの様に楽しそうに喋る今日は一晩中一緒にいてはるの話を聞こうとそう思えるほど私ははるが隣にいる安心感を噛み締めた。
そういえばはるの記憶が消せない理由を考えた。私には1つそうじゃないのかと心あたりがあったそれははる自身が私に対しての鍵だったのでは?とだから記憶が消せないのではとでももうそんなことはどうでもいい事件は解決した。はるも帰ってきたもうこれ以上は何もいらないそう感じながら軽やかに二人並んで歩いて帰った。
そうして時が経ち、はるが転校してきて早二ヶ月がたった桜咲く道を歩きながら学校に向かっていた私は新しく始まる生活を楽しみにしていた。いままでの私はもういない壁なんて壊せる。はるのお陰で変われたとそう感じていた。
待ち合わせの場所ではるが待っている。
私は心地よい風を全身に浴びながら昔のはるのように駆け出した。
第5話につづく
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