第3話 廃屋と寂しさと過去と覚悟

はるを家まで送り届けた頃空は暗闇に染まっていた。暗い中月と街灯の灯りだけが田舎の団地を照らしていた。神社に開いた扉が破壊されもう既に四日が経つ行方不明者も出ている。これ以上は機関も隠し続けるのは困難なのだろう大規模な人数が組織されこの町に配備されていた。


今晩あの異界の者を完全に排除するつもりなのだろうと考えながら暗がりの道を家に向けて歩いていた。不思議な事にはるがいない帰り道はこうも静かで寂しいのかと足が少し重いその時「すずちゃーん!」と向こうから家まで送り届けたはずのはるがこっちに向かって走ってくる何事かと私も走って近寄った。息を切らしながらもはるは「あの扉から出てきた猿を見つけたの!」と咄嗟に「それはどこ?」と聞いた「私の家の近くの誰も管理もしてない草が沢山生えてる家のとこだよ!」と鼻息を少し荒げながらわくわくしている様な素振りを見せる「怖くないの?」と聞いてみたすると「怖いけど気になる!」と駄目だ止めなければとはるは必ずこちらに踏み込んできてしまうことが容易に想像できた。


私ははるに「とりあえずその場所まで案内してくれない?」と二人で近くまで確認しに行った。場所を確認した私は機関に連絡をしその場を離れようとした時廃屋が壊れる音が聞こえてきた。走って逃げようとした時帰り道のサラリーマンの男性がいた私は大声で「逃げて!」と叫んだしかしその黒い塊の様な物体が目の前を横切った瞬間男性を鷲掴みにし正体が見えた赤黒い体毛に身長は2メートル以上あるだろうだがおかしい報告では片腕しかないはずなのだその異邦の者は両腕があるとお互いに睨み合った状態で静止していた。その時だ目を疑う光景が異邦の者は二匹いた片方は片腕がない。二匹は激しく争いはじめた掴んでいた男性は放り投げられて気を失っている多少の怪我はあるようだが生きてはいる様だ。まるで怪獣映画だ言葉が出ずにはるを庇う様に前に立つが動けないその時だ「邪魔だ」と黒い服に跳ね飛ばされた悪態野郎だと理解する前に男は鍵を使い暴れ続けている二匹を全く知らない別の世界へ送ろうとしている。

それに気づいた時二匹は悪態野郎に猛烈に走り出し殴りかかろうとしたその瞬間はるが「あぶなーい!」と悪態野郎に飛びついた二人は弾きとび私は悪態野郎に目もくれず「はる!はる!大丈夫?」と気づけば涙を流しながら安否を確認していた悪態野郎は「何をするこのクソガキが!」と命を助けてもらったくせに服が汚れたとこちらの安否を確認しようともしない私は苛立ちの最高長に達していただがその前に二匹の化け物をと思った時にはもう姿は無かった。既に悪態野郎が異界のどこかに送り飛ばしたみたいだった悪態野郎は「どけ..記憶を消す」といい近寄ってきただがはるを一目みた悪態野郎はそのままどこかに消えていった。


その後扉管理機構の人間達が証拠を消し去るために集まりはじめたその中を私ははるを背負い隠れるように病院へと向かった。あれから一週間経ったあの夜の騒ぎは機関がもみ消したらしい行方不明者も適当な理由をつけて無理やり解決した様に見せているのだろうニュースで適当な丁稚上げしているのをみた。はるはまだ目を覚さない毎日私は学校が終わると病院へ向かう何を話すわけでもないただはるが眠るその横で面会時間ギリギリまで座っていただけだった。毎日涙が止まらない何故あの時はるを連れて逃げなかったのかもっとこうしていればはるは怪我をしなかったのにと自分自信を責め続ける。病室に通い続けること10日目病室に入るとそこには一人の看護師さんがいた「あら?お見舞い?」と私は小さく頷く「もしかして毎日お見舞いきている子ってあなた?」と優しい笑顔で聞いてきたまた私は小さく頷く「怪我は軽い打撲なんだけどね頭も強く打ってないのになんで目が覚めないのかしら」とそんなことは私が聞きたい。私はただはるとまた一緒に帰り道を歩きたいだけなのだ。また涙が溢れそうになると看護師さんは「この子両親は他界してるみたいだけどあなたみたいに心配して泣いてくれる子がいるなら大丈夫そうね」と私は少し思考が止まった『両親がいない...?』今考えれば確かにはるの家は電気もついていなかった学校でのお昼ご飯もお弁当ではなくコンビニおにぎりが多かった気がするその時私はまた泣き出してしまった涙が溢れて止まらないのだ。

私ははるの事を何も知らないそう思いながらはるの眠る横に座りはるの手をとる。私はあの少女にした様にはるの記憶を辿る。

そこには幸せでいっぱいの満面の笑みで走り回るはるがいた一つの記憶を除いてそこに私が知るはるの面影はない目に光がないまるで死んだ魚の様な目だった。私はその記憶に目を向けるそこには見たくない光景が広がっていた扉だ。開いた扉どこに繋がっているのかはわからないただはる以外は皆引き摺り込まれて行くその光景だけが目に焼き付いていた。目を背けたかったはるが壊れていく涙を流し奇声を上げるはるを見るのは辛かったまた涙が止まらなくなる。

季節はずれの転校はこれが原因なのはすぐわかった。こんなにも傷ついたのにはるは微塵もそれを感じさせないはるに私はなんて事をとまた罪悪感に押しつぶされそうになる。

記憶をみた私はどうすればいいかを考えた時手のひらの中にまた小さな鍵が生まれた事に気づいた。

「この鍵...はるの鍵だ」私は小さく呟いたそれは今にも崩れそうでもほんのり温かみを感じる優しく握り締めた私は鍵を開け扉を開く。

それははるのためにそして次は私がはるを救う番だと強く思いながら...


第4話につづく

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