第二十七話 ~入学前~ いつも通りに

 翌日、母マリアは使用人一同、ルルン、カミールを集めてラランのいないところで話をした。

・いつもと変わらず接する

・髪の毛の色が変わっていくことを過度に心配しすぎない

・バカにしないこと

・下手に慰めるようなことをしない

数えればきりがないほどきつく伝えた。父は診療所にこもったまま出てこない。

ルルンもカミールも始めのうちはうんうんと頷いていたが、だんだんとあれこれ言われると相槌も打てなくなり、うんざりしている様子に変わって行った。


 一方で、目覚めたその足で洗面所に向かうと鏡を見てため息をついた。

(ダルメシアンみたな頭になっちゃったなぁ~

いや、近所の牛の模様に近いかも・・・。)

呑気に歯を磨きながら、髪を持ち上げたり引っ張ったりして鏡の前でくるくる回って、あちこちの角度から頭の様子を確認してみた。

頭のあちこちで大小さまざまな黒い円の形で変色していた。

髪の根元から黒くなっており、インクや何かで塗られたのとは明らかに

家族が気にしないように平静を装うとするように、はララン自身も皆に心配をかけないよう気丈に振舞った。

かなりショックな出来事ではあったが、散々考えているうちに、魔法が使えることは間違いない事実であるし、今後ギリアムに教わることで光の魔法も使いこなせるようになるかもしれないし、魔法を習得していく中で髪の色も元に戻っていくのではないかと、前向きに考えることにしたからだ。

元々多少は楽観的な性格が幸いしたこともあるのだろう。

いつも通りに洗面所へ足を運ぶ。

いつもと違うのは視界に入ってくるさらさらと揺れる自分の髪の毛だ。

そこに、ややばつの悪そうなルルンが声をかける。

「ララン、おはよう。」

努めていつも通り挨拶しようとするルルンにラランはにっこり笑って

「ルルン、おはよ。ほら見て、今日の朝食はルルンの好きな豆のパンがあるよ!」

と元気に挨拶を返した。

ルルンはほっとした様子でニッコリ笑って

「ほんとだ!わたし、たくさん食べる!」と返事をした。

母マリアは心配と安心を足して割ったような複雑な表情でそんな姉妹のやりとりを見つめる。

「ララン・・・」

そっと手を伸ばしてラランに触れようとする母の方をふり返り、

「お母様おはよう、私大丈夫よ!

体はなんでもないし!この髪だってきっと元に戻るわ!」

そう言って元気に笑うと、ルルンの後を追って食堂へ小走りで走って行った。

マリアは佇み、その背中をやはり不安そうに見つめるのだった。

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光目指して黒く くもまつあめ @amef13

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