後編
確証が取れたことで、今度はイヴリン様はギルバート氏のご両親と、ご実家の両親の元にこのことを報告したの。
そして夫が戻ってくるのを待ったのね。
社会的に実害がある、とまでは言い切れないし、実際仕事もできているし、家庭にも問題は無い。
というかできすぎているくらいできている。
ただやっぱりおかしいじゃない!
イヴリン夫人はもう、逆に普通の浮気の方が責めるにも責めやすいし判りやすいと思ったみたい。
でも本当にこれはただ単純に好きだから奉仕する、自分のことは知られなくても構わない、でもこの気持ちは止まらない、という感じのものなのね。
どうなんでしょう?
でも確実に、マーガレット嬢の気持ちを相当苦しめてはいた訳じゃない。
怖がると思っていずに、ただ自分のしたいことだけしていた訳よ。
何というか、その辺りでやはりサンクド伯爵家もギルバート氏の闇に気付いてしまったのね。
で、もうとりあえず小さい息子に爵位は譲って、後見として弟の子爵がしばらくは代行する、という形を取ることにしたみたい。
ご両親がもう一度爵位に就く、ということも考えたらしいのだけど、やっぱり一番有能な長男、ずっと順風満帆にやってきた息子がそんなことをしてしまったことにショックを受けてね。
ただの悠々自適の隠居から、気落ちした静養に変わってしまったと言う訳。
で、夫人は離婚して実家に戻ったの。
子供達は家に残されてね。
まあこういう時、乳母育ちだからまだ良いのかしら。
私もそうだけど、母って結構たまにしか会えない存在だから、居なくなったり変わったりしても、乳母が変わるよりは、と思ってしまうのね。
……さあそれで、事の真相を知ったマーガレット嬢は本気で気持ちを病んでしまって。
それまでは屋敷で引きこもってらしたのを、郊外の別荘へ静養に。
自分に隙があったのか、とか色々思うところあったみたい。
隠居させられたギルバート氏も、やっぱり遠くに。
他の部分では使える人なんだけど、やっぱり何をいつ起こすか判らない、というのは怖い、ということで、弟から回される仕事を請け負うという形になったみたい。
――で終わればまあ、それはそれで納得いくんだけどね。
何とその別荘行きになった二人が、今度は何故かお互い文通を始めてしまった訳。
しかもマーガレット嬢の方から!
どうも一人考えているうちに、何を相手が考えているのか知りたくなったみたいのね。
それで彼女の方から送ってしまったのよ。
そうしたらまあ、手紙が頻繁に行き来すること!
これが数年続いちゃって。
しかもマーガレット嬢、それでだんだん元気になるからご両親もどうしたのか、と思ってはいたのだけど、まさか相手がギルバート氏だとは思っていなかったのね。
だから彼女の方からギルバート氏に会いたい、と言い出した時にはどうもご両親ひっくり返ったらしいわ。
その時ようやく数年でとんでもない量になっていた手紙に気付いたというのよ。
そこが遠くで静養、の抜け穴だったのね。
確かに侍女とかが持ち込むんだから記録はするけど、送り主の偽名をマーガレット嬢が指定したならば、メイドも侍女もそうそう判るものではないのよ。
向こうも同じでね。
それでまあ、数年の文通の結果、どちらも貴族社会から捨てられた同士、ということでひっそりと結婚したという訳よ。
ちなみにその話を既に再婚していたイヴリン様が知った時には本気で呆れたというか、信じられない、というお顔になったそうよ。
ああもう全く、人の心って複雑怪奇ですのね!
ちょっとそういう相手と結婚しようという気持ちは理解できないのよ。 江戸川ばた散歩 @sanpo-edo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます