空に何が見えるか

 このエッセイを読んでいて、高村光太郎の「智恵子抄」を思い出した。

 東京も戦前は空がきれいだった。汚くなったのは戦後復興期からである。
 しかし、智恵子は空を眺めながら、『東京に空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ』。
 それに対して、同じ空を見上げていた光太郎は『驚いて空を見る』のである。

 銀河を眺めたり、「銀河鉄道の夜」を読んだりするとき、人は、それぞれの物を感じ取る(のだろう)。
 そういう視点に立った、他の感じ取り方を否定しない、良質なエッセイであった。一読あれ。