田舎から出てきた少女 ①-2-2

「今日の夕飯は何食べます?」


「牛丼」


「それは今朝も食べたじゃありませんか」


「ん」


「ちなみに明日の朝は何が食べたいですか?」


「牛丼」


「それはこれから食べるじゃないですか」


「ん。大丈夫」


「だいじょばないですよ」


ユエンは牛丼がお気に入りになった。


牛丼【キチの家、生娘シャブ漬けシリーズ】生卵紅生姜味噌汁お新香付き。


俺には味も香りも毎日三食食べたくなるほど魅力的な味には感じられないのだが、彼女には美味しいらしい。


俺は台所へ。


金持ちになったので家のライフラインを開通した。


上下水道が使用可能になったオール電化住宅。平屋。電気や水がどこから来ているのかは不明である。


「ユエンさん」


「ん」


「ポルナエンの林にはいつ帰ります?」


「帰らない」


「そういうわけにはいかないんじゃないですかね。ご親族の方とか心配してると思いますよ」


「大丈夫」


「だいじょばないのでは」


「誰もいない。たぶん」


「でも、故郷が気になりませんか?」


「…………」


俺の言葉に暫し考え込む女の子。


「問題ない」


しかしその問いは即片づけられた。女王様、国が気にならないのかよ。


「そうですか。でも気になるようでしたらすぐに言ってくださいね」


「ん」


これぜってー気にならねーわ。完全に無かったことになってるわ。


俺はこの女にどうにかしてご帰宅いただきたかった。


この女がいるとわくわく引きこもりライフに集中できない。


どうしてもいろいろ気になって、結果気が付くと世話をしている自分がいる。


風呂だって入る必要がないのにさっき掃除してお湯を張ってしまった。


ご飯を食べたらお風呂に入る予定だ。


俺一人なら問題ない。でも女がいたら風呂に入れないと病気になってしまう。


女は汚くしていると病気になるのだ。


服だってジャージのままというわけにはいかない。


ちゃんとパンティとスカートを用意しなければ。


女は股間が蒸れると病気になるのだ。


男より股間品質管理が面倒くさい。


お風呂道具一式もバスタオルも化粧水も思いつくものは一通り買い揃えた。


「ご飯できましたよ」


「ん」


お盆に牛丼だの生卵だのお新香だの紅生姜だの味噌汁だのを載せてテーブルへ運ぶ。


ユエンは破顔する。無口無表情キャラがこの時ばかりはほころぶ。


「では、いただきましょう」


自分の分もテーブルに運んでごはんタイム。


こうして二人のなぁなぁな生活は続いていくのであった。



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キチのや!―生娘をシャブ漬け戦略― にーりあ @UnfoldVillageEnterprise

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