204 4月11日(木) シケタ商店街のシケタ写真屋

 以前、この日記にシケタ商店街のことを書いた(以下URL)。シケタというのは名前ではないよ。『さえない、ぱっとしない』という意味の『シケタ』だ。


 『103 1月19日(木) シケタ商店街のシケタ眼鏡店』 

https://kakuyomu.jp/works/16816927862654115962/episodes/16817330652021424616


 『104 1月20日(金) シケタ商店街のシケタ和菓子屋』

https://kakuyomu.jp/works/16816927862654115962/episodes/16817330652053517970


 今日は、そのシケタ商店街の中にあるシケタ写真屋の話をしますね。


 さて、ボクのパスポートが期限間近になって、更新をしなければならなくなった。ネットで調べると、今はスマホからオンライン申請できるらしい。オンライン申請する場合は、写真の電子データを添付すればいいらしいのだ。


 でも、さらにネットの記事を読むと・・・「パスポートに使う写真にはいろいろと制約があり、特にオンラインでの電子申請の場合は、指定されたフォーマットやサイズに適切に調整する必要になるので、専門の写真館で撮影を依頼するのが良いでしょう」と書かれていた。それで、ボクは近所のシケタ商店街の一画にある専門の写真屋さんに行ったのだ。


 ボクが写真屋の中に入ると、奥から店の親父が出てきた。ボクが「パスポート用の写真をお願いします。電子申請用の電子データにして欲しいんですが・・・」と言うと、店の親父がこんなことを聞いてきた。


 「写真は何ピクセルにしますか?」


 ボクは趣味でスマホを使った風景写真なんかを撮っているので、ピクセルというのは知っていた。ピクセル(画素がそ)というのは、コンピュータの画像処理に用いる、色情報 (色調や階調) を持つ点のことだ。例えば、640×480ピクセルの画像というのは、横640個、縦480個の点を並べた写真をいうわけだ。また、1280×960ピクセルの画像は、640×480ピクセルの画像に比べてピクセル数が2倍であり、したがってデータサイズも大きくなるのだ。こうして、コンピュータでは、写真のサイズをピクセルで表しているわけだ。


 しかし、お客がパスポートの写真のピクセルを指定するとは知らなかった。でも、パスポートなんだから、当然、写真は何ピクセル以上とか決まっているだろう。そこで、ボクは親父にこう聞いたのだ。


 「パスポートの写真は、何ピクセルか決まっているのではないのですか?」


 すると、親父はこう言った。


 「国によって、何ピクセルか違っているのです」


 国? 当然、日本でパスポートを申請するので、日本でいいわけだ。そこで、ボクは親父に言ったのだ。


 「日本のパスポートの基準に合わせてもらえますか?」


 すると、親父はこう言った。


 「何ピクセルか言ってもらわないと困るんですが・・・」


 ボクは困ってしまった。そんなことを言われても、何ピクセルにしてくださいと言えるわけがない。


 仕方がないので、こう言ったのだ。


 「そんなことを言われても分かりませんので・・・じゃあ、この店で、パスポートの写真を撮る他の人と同じにしてください」


 親父は何か小声で言っていたが、よく聞き取れなかった。


 そういったやり取りがあって・・・結局、ボクは写真を撮ってもらったのだ。その写真を何ピクセルにしたのかは、親父は言わなかったし、ボクも聞かなかった。聞いてもいいか悪いか判断できないからだ。写真の電子データはボクのメールアドレスに送るということだった。


 さて、お金を払う段になった。親父に聞くと、3,000円だという。ボクはカードを出した。すると、親父がレジを打ちながら、フッと笑ったのだ。嫌な笑いだった。


 支払いが終わると、今度は親父が急に饒舌になった。べらべらと陽気にしゃべるのだ。なんだか「カモが引っ掛かった」ことを楽しんでいるという雰囲気があった。ボクは、ますますいやな気持ちになった。


 それで、ボクはお金を払うと、早々に写真屋を出たのだ。店を出るときに、親父が「毎度ありがとうございます」と言ったのだが・・・笑いをこらえているような言い方だった。


 そして、家に帰って・・・ボクはスマホで電子申請の手続きを行ったのだ。で、写真屋からメールで送ってもらった電子写真をアップロードしたら、な、なんと、スマホの画面にこんな表示が出たのだ。


 「この写真は規格のピクセル数より少ないので使用できません。横788×縦284ピクセル以上にしてください。」


 ええ、専門の写真屋で撮ってもらったのに、なんで???・・・3,000円も出したのに、なんで???・・・


 で、調べてみた。すると、外務省のサイトに「オンライン申請する際のパスポートのサイズは横788×縦284ピクセル」と書いてあったのだ。以下のURLですよ。

 https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/page24_002222.html


 してやられたと思った。専門のプロの写真屋が外務省のサイトに規定されている、パスポートの写真のピクセル数を知らないわけがない。知っていて・・・わざと、規格より少ないピクセル数の写真にしたというわけだ。


 アホバカ妻が「お金を返してもらったら・・・」と言ったのだが、わざわざ、また出かけていくのも億劫だ。で、ボクは結局、行かなかった。こうして、3,000円が無駄になってしまったというわけだ。


 で、パスポートの写真をどうしたかというと・・・パスポートのオンライン申請のアプリから自撮りできるようになっていたのだ。この自撮りシステムはよく出来ていて、例えば、身体の位置がずれていて規格に合わなければ、「撮り直しをしてください」と表示されるので、素人でも規格に合う写真を撮ることができるわけだ。こうして、結局、ボクは写真をパスポートの電子申請のアプリから、無料の自撮りで済ませてしまったという次第だ。


 しかし・・・とボクは思うのだ。地元の商店街を悪く言う気はないのだが・・・このシケタ商店街って、こんな店ばっかりなのだ。ぎゃび~ん!・・・


 皆さん、こんな写真屋、どう思いますかぁ?

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