日常

口にいっぱいアルコールの香りがしている、ような気がする。

昼間に食べたガーリックの味が、

唾液腺から蘇ってくる。

たらこパスタのプチプチとした食感はとうに銀河の彼方に消え去っていった。

あなたの笑顔も、

今は夏の大三角のように儚く、

目が眩むほどの夏の空に浮かぶ

影送りのようだ。

死者の声が聞こえる。

人混みの中不意に立ち止まって振り返った。

幾人かに肩をぶつけられ、

舌打ちされた気もするが、

数秒経つと人すら見えなくなる。

死者だ!君!向こうから

本の中で聞こえた声がする。

蝉の声の中、扇風機の調律と、

その中で聞こえた あなたの声だ。

目線を合わせた時、姿がハッキリとした。

何かを話している。

耳からは聞き取れない、魂の言葉だ。

波長は私の魂だけが知っている。

悲しくて涙が出た。

四季折々の自然の風景が

全て走馬灯となって頭に浮かんだ。

悲しいと思った。

あなたは悲しい言葉が

美しさを濃くするような顔をしていた。

私は感情におぼれかけた。

波がやわらかく恐怖にこわばる私を包んだ。

わぷんと音がして、耳が聞こえなくなった。

このまま夢でもいいと思った。

どこかへ私を運んでくれ、風よ

そういえば白い鳩は

幸せの象徴だ。

どうでもいいと人間を睨む

汚い顔をしたひとたちが

ブラックホールとなり消滅した。

わたしは青とエメラルドのする

きれいな海を思い浮かべていた。

幸せを考えていた。

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