ALIVE
@24027724
1ー1 紅く染まる
「ねえ。好きなんだけど」
急な言葉に心臓が、騒ぎ頭の天辺を熱くする。鳴りやんだチャイムが夕陽と一緒に溶けていくグラウンド。紅く染まったセーラー服の
「
止めて。
「良いと思いますよ。俺も好きです。うん、かわいいっす」
昇った血が、胃へと逆流していく指も頭も冷えてお腹が、グツグツと気持ち悪い。小五からだったか
「ん?
私に気付いた先輩が、ぶんぶんと大きく手を振る。口角いっぱいに上げた口と細めた猫目で夕陽に負けない輝きの笑みを向けてくる。くそぅ自分で言うだけの事は、有る。
「どげんしたァ? 一回り元気が、無いじゃないか」
誰のせいだと思ってるんです。
「せっかくのお顔が、台無しだぞお。やっぱり少女は、笑顔でなくちゃな!」
「お、大きなお世話です」
「そんなんじゃ
うるせえなあ! ホントマジでうるせえよこの人!
「そうだ良いの見してやるよ」
「え、何です」
先輩が、私の前に良いものを持ってくる。
「うっぎゃあああああ!」
ゴツゴツとした茶色いブニブニな皮で覆われるデップりとしたそいつが、倒れ込む私を見下ろす、
「うひぃ」
「驚き過ぎだろ……。
目を丸くして蛙と一緒に見下ろす先輩そんな先輩に反論する
「勘弁してくださいって
「そ、そうですそうです。ホントにダメなんです……」
「不意打ちの牛蛙は、俺でもビビりますって」
牛蛙が、じっと縦に何度も首を振る私を見据える。ヌメヌメしてる。
「だから素直に可愛いアマガエルから始めましょうよ!」
「ちっがあーう! もっとヌメヌメしとーよアマガエル! 大体始めるって何だ、何ば始める気だあ!」
「え、違ったごめん」
「なんにせよ元気になったじゃないか、もう良いだろ
「ああ、すまねえ長々と大丈夫やったか?」
私いま
首を横に振りたいのに固まって動かない。
「もう
挫けろー挫けよ足ぃー心挫いてとる暇が、有んなら足ば挫けよ
「よいしょっと、
「う、うん。帰る途中でたまたま二人を見つけてそしたらその、好きだとか、聴こえて」
「ええー盗み聞き。
「今からペットショップに行くけど、どげん? ふわふわもふもふ見放題だよー。私は、ザラザラ、スベスベ目当てだけど」
「
おお、
「ゴメン。お兄ちゃん今日で退院だから」
「そうか、良かったな。
「ええっ
二人が、兄の為に祝い物をどうするか顔を見合わせている。病弱で入退院を繰り返す兄は、出席率の割に有名だ。同情心から来るものじゃなくて積極的に兄が、皆に声をかけるから。病院で何時も暇している兄にとって学校の時間は、刺激に満ちて大人しく出来ないようだ。そのお陰で友達が、たくさん居るみたいだけど。
「良いですよそんな何時もの事ですし、
「そうか?」
これじゃ今回も祝い物で置き場に困りそうだな。
「あの、兄は、MGfって言うカードゲームにはまってます」
パアッと二人の顔が、明るくなる。納得してくれたようだ。カードなら嵩張らないし被っても大丈夫だろう、きっと多分。
「お兄ちゃんの見舞いを欠かした事無いもんな。やっぱり利生ちゃんは、いい娘だ」
先輩が、指でとんとんとおでこを叩いて撫でる。なにかスイッチが、入ってしまったのか執拗にいい子いい子と止めてくれない。とろけた猫目の
「あの、もう行かないと……」
「あ、ああスマン。思った以上に紅くなったもんだから」
ハッとした先輩が、ようやく手を止める。
「紅くなったからって何なんですか! 理由になっとらんでしょ!」
「なろーもん! 一年坊は、可愛いんだよ! 愛でて何が、わるい!」
「可愛いってなに言ってるんです?」
思わぬ言葉に顔の熱が、燃え盛る。
「一年生の可愛さは、一年坊には、わかんないの! ん、女生徒の可愛さと考えたら、坂姫なら分かっろ!」
不意に振られた
何だよその思春期ムーヴ止めて下さい勘弁して下さい意識させないで下さい。自分の顔が、期望と願望で燃えて逝く、
「可愛いとか、どうでもよかじゃないですか!
意気地なしぃ私の意気地なしぃ。お世辞でも良いから貰っとけば、良かったじゃん! 一週間は、逝きてけたじゃん! 天国から地獄だよ。
「ゴメンゴメン、こんな事するつもりや無かったんだけどさ。
「何がっすか」
ありがとうございます。ばってん許しません。
脇腹を擦りながら疑問符を浮かべているコイツにバレてなきゃまあいいのか?
「牛蛙殿が、御自身の住みかを御所望だ。ささと用意しカードを探すぞ」
「はい……」
振り返らず校門へ向かう先輩と振り向きながら手を振ってくれる同級生を見送りながら、かき乱された心を夕日と共に沈める。
「行くか、お兄ちゃんとこ」
赤い十字を掲げた巨大で真っ白な建物。暗い空にぼんやりと居座るいかにも公的物で無機質な外観は、冷静に視ると命の温かさを守るには、ミスマッチに写る。
部屋主の兄が、白いベッドで癖っ毛をかきながら穏やかな笑顔で迎えてくれる。部屋の主のクセに建物に合わせたような白い肌。透明感が、有ると言えなくもないが、将来本当に透けそうで怖い。
病院からちゃんと元気を貰えてるのか? 吸われてるじゃないの?
「どうした。一回りも元気が、無いじゃないか」
退院してるとは、いえベッドの上の人に心配されちゃった。ため息混じりに無個性な丸椅子に座って家から持ってきたリュックを床に置く。
「それ、
「
クール? 暴走機関の野生児にしか見えないけど。何度も思い返しても白い歯を見せ猫目を細めて笑う先輩しか出てこない。
「信じらんない」
「
「ふーん」
「
「いや、
「カードか、いいなって
少し身を乗り出す兄。下世話な期待が、透けてる。
「
「どげんも無かよ」
「無いのかよ! 遊びの誘いもなかったのか?
ばふばふと布団を両手で叩き妹の進ちょくを催促する。うざい。
「ペットショップ行こって言われた。カエルの住みかを用意したいからって」
「カエルぅーは、
布団を抱き上げおいおいと顔を埋めて見せる。
「行ける訳なかろ。今何しに来てるか分かってる?」
目的を果たす為兄の私物に手を付けていく。日用品や着替えの他に暇潰しの為のカードやボードゲームでそれなりの数は、有る。その持ち主が、布団を両手で叩いている。
「お父さんは、仕事で遅くなっし、お母さんは、晩御飯作んなきゃだし」
「良いって俺一人で慣れてるし」
「病み上がりが、強がらんの独りで倒れてどげんす? 貧血じゃんしかも原因解っとらんし」
絶えずバタバタさせながら布団に顔を埋める兄。くぐもらせた声で抗議する。
「俺は、
「ハイハイあんがとね。でもそれと
がばりと起き上がって曇りなき
「有る! 中学のお前が、満足に遊べずに寂しい想いを募らせているのは、知っている。坂姫と恋仲に成って青春の帳尻を合わせるべきだ。お釣りが、
「だからあ、お兄ちゃんに私の恋は、関係無いって」
曇りなき
「見舞いのせいで時間を取れないんじゃないか、滅茶苦茶関係有るじゃんか」
溜まらず背を向ける。そんな事言われても自分の不甲斐なさの理由に成らないじゃん。
「今回の件だってよ」
「
窓ガラスの黒い空としょげた顔にも嫌気が、差して向き直ると兄は、もう病院のベッドで仰向けに倒れていた。
「うーん?
「そーだけど」
「おっかしいよな。あっちが、来てくれても良いじゃん」
口を曲げて眉間にシワを寄せている。
「それは――悪いでしょ」
癖っ毛をかきむしり上体を起こした。兄の癖毛は、いくら触ろと原型を崩す事が、無い。
「最初、
「そーだけど!」
外は、すっかり暗い早く片してしまおう。
作業に集中しようとリュックのジッパーを限界まで開ける。
「なあそれって
された事と言えば、カエルにいい子いい子に
「まぁ、ぶっちゃけバレた」
「はーそうか。
服を取り出し再度たたみ直す。
「なわけ無いでしょ」
気が、利く先輩なんて想像できん。兄の制服に手を付ける学校で倒れて救急車に運ばれた時の
だ。一ヶ月は、有ったんだ入院中に片せば、良かった。
「有るってあいつは、後輩カワイイカワイイ系女子だから後輩ちゃんをクールにアシストして慕われてるんだよ」
クールにアシスト? 絶対無いって有ったら
わずかにふっくらした皮膚の下、スポーツで鍛えた筋肉の弾力に満ちた太い腕にうっすら浮かんだ汗と匂い! 兄の制服で鮮明に想い出せた。意外な形で役立ったな。
「
「はあ!?」
何を言い出すんだ! バカ兄貴は!
「
バカが、目を閉じニヤリと笑う。
「もうモタモタしてる暇も無さそうだな。
リュックに積め終えジッパーを閉ざす。
「飛躍し過ぎ、遠慮してくれただけでしょ」
何時もの事と言えば、何時もこの事だけど何かにつけて恋愛絡みにして発破かけるの悪い癖だよな。
「遠慮なんて要らん仲じゃん。特にあん二人は、さあ」
後は、迎えを待つだけか。
「親しき仲にも礼儀ありって言うのデリカシーの無い人には、分かんないでしょーけどね」
フンッと鼻を鳴らして再び仰向けになって布団を顔まで掛ける。ただ単に二人に会えなくて寂しかったのかも知れない。満足に友達と遊べないのは、兄の方なのに何で私をあんなに気にかけるかな。
「
くぐもった声が、問いかける。
良いんじゃないか? 学校なんかで顔を見合わせてどうでも良い事で落ち込んだり笑ったりりたまには、今日みたいなラッキーなんて期待して一日が、終わるのも兄の言う楽しい青春でしょ?
リュックを両手に兄の腹に置いてみる。わずかに揺れて呻く音が、漏れ出た。
「そんなの嫌だけど」
お腹の衝撃に呻きながらもキラキラとした目で見て起き上がる。
「じゃあさ、頑張ろうよ」
「な、何を?」
「恋愛をだよ」
リュックを抱きしめ目と口が、大きく笑ってる。
「どう頑張るっての」
「簡単だよ。デートに誘やー良い」
「かんたんって」
顔も体勢も変わらずお互いが、居ると兄の方が、リュックを退かしてベッドの上で立ち上がる。
「簡単だ。だってよ目的もそれに至る手段も一緒何やから」
「一緒?」
口を開けて見上げる妹の元にベッドから降りて来る兄。肩に兄の白い指が、食い込む。
「付き合いたいんでしょ? デート出来る仲に成りたいんでしょ? 二人っきり異性と遊べば、それだけで胸高まり仲良くなる!」
最後に大きく手を上げて言いきる。
「結局デートだよ。余計な事を考えずただ坂姫と遊ぶ回数を増やせば、良い!」
「そーかもだけどそれが、無理じゃん」
二人で遊ぶ約束とか考えただけでも、吐きそう。
「そんなんで告白できるの? 利生ちゃん」
「もっと無理」
告白なんてしようもんなら今度からそのベッドで寝るのは、私になる。
「勇気を出しても振られたら二度と顔も見れないよ」
そんなの墓の下直行だ。
「でも遊びに誘うの断られた位ならさまだ次が、有るだろ?」
「う、うん」
確かに告白するよりは、簡単かもしれない無理だけど。
「オマケにさ上手く回数を重ねて行けば、勇気出すんは、
それは――夢見すぎでしょ。
「やろう。幼なじみと遊ぶ位別けないって先ずは、そっからやろう」
「……うん」
約束を交わし終始笑顔の兄と真顔の私を後ろに乗せて白いワゴンが、帰路を走る。お父さんとお兄ちゃんが、何か話しているが、余り頭に残らない。
これ以上頭を使うのは、よそう。指と呼吸が、冷えてゆく。ご飯を食べてお風呂に入ろう。そして寝よう。車の揺れが、止み気付けば、見慣れた車庫の中後は、もう余り覚えていない。
途切れた意識をアラームが、叩き起こす。
スヌーズを使いきり腹を決めて体を起こす。淀み無くテーブルから取り出す自作のピンクウサギ。毛皮ごしに綿を一通り揉み込む。一向に眉間のシワの取れないしかめっ面な自分が、姿鏡に映る。仕方なくテーブルに置きとどめと耳と頭をぽんぽんする。パジャマを脱いだらクローゼットを開けても無かった制服を床から拾い袖を通す何時もと何処か違う朝。
一階へと降りれば、そんな朝の元凶が、笑顔でトーストを噛ってる。
「はぁ」
トーストにガリガリとバターナイフで撫でた。舞った小麦の匂いをテカったベーコンで敷いて目玉焼きで蓋をする。
「気合いの籠ったため息だな。約束は、真剣に考えてくれてるね」
「うっひゃか」
朝御飯を済ませば、登校するだけだ。ぐずついた心を照らす朝日に真の元凶をダブらせる。
「
神城高等学校と書かれた校門を通り。1ー3の教室で大人しくチャイムを繰り返し聞いているともう昼休みだ。座りながら横の窓を開けて生徒達の一時的な解放感で賑わう廊下を覗くも奴は、いない。他のクラスだが、動くことが、好きな奴だ。教室にじっとしてると思えないが。
「
「うおっ」
教室を出ようとうじうじしてると赤茶のツインテールが、私の前で揺れている。何時も目を輝かせている女の子。
「
光る目と口を開いてこちらを伺う同級生と壁に阻まれては、動けない。せめて猫さんには、退いて貰いたい。
「ええと、教室を出たいかなと」
「へえ? 珍しかね。いっつも裁縫しよーやん」
「うん。まあね」
見られてたのか、裁縫と言って良いのか型紙の図案をノートに興こしてるだけなんだけど。
「昨日も珍か
本当見られてるな。聞かれても纏めるのが、難しい。
「ええと、カエル可愛いよって玉萌先輩が」
「カエル? 何で?」
「先輩のぉ趣味?」
猫さんが、口を閉ざして動かない。自分の中の
「知らんかった。先輩にカエル似合わんなぁ」
そうか似合うよ。先輩と牛蛙思い返そうとして自分の皮膚が、蛙の様にぶつぶつし出して止めた。
そうだ。先輩に構ってらんない! あいつは、一定の場所で留まる事をしないんだ。早く教室から出ないと。
「ねえ猫さん。もういいかな?」
「ん? ああごめん
猫さんに退いて貰いようやく席を立つ。それをじぃと見られてる。
「昨日思ったけどあん二人は、付き
ピシリと固まる私の身体。
「な、ないよ。先輩と
「そうね? 先輩と
キラキラした目でそぎゃん事いわんでよ、流石にカエルよりは、似合うけどさぁ。
「
「「うっわ!」」
猫さんと私の目の先にあいつが、居る。自信に溢れた引き締まった身体を半分窓から出していた。
「な、何でん無かくさ。
「え? ええともう大丈夫かな」
口を半分開いて私を視る猫さん。口を閉ざして
「
私のバカ! またばれたじゃん!
廊下の窓の阿保面が、こちらを向き続ける。
こっち心の準備も話の用意も出来とらんて。
「あいやろ? 退院祝いの話し」
違うけど向こうから話しかけてくれたんだ。何とか返さないと。
「退院祝い!?
「
「ほぇー
「どーだろ? もみくちゃにされてんじゃないの?」
猫さんお兄ちゃん知ってんの? 私達まだ入学して二ヶ月だよ? どれだけの一年生と知り合いなんだろう我が、兄は。
違う!有らぬ方向に話が、進んでる。なんとかなんとかしないと。
「そいやと会えそうになかね。って
「違ったのかすまんな」
助かった。猫さんにあのまま引っ掻き廻されるかとアシストして貰えたけども、駄目だ。結局何を話せば、良いのか分からない。
「
「カード。カードショップ」
「が、どうした?」
「え、ええとお」
限界な私の視界の端で動く影が、チラリと見える。握った両手をちいさく上下にふる猫さんだった。
励まされてる? やっぱりそこもバレてる?
「
会話終わり打ち手無し、本当に? これだけ? 弱いな私。三人の間に楽しげな教室の雑音だけが、残る。
「都合良かやん贈り物ダブるんはきつかよ。一緒買い
「んっそいもそうやな。じゃ行くか」
ありがとう猫さん! 貴方にこそ何かを送りたい!
「そん理屈ならどーすう?
「ウチに聞くな。
「先輩最近、
片思いの相手だ、助けてあげたいけど我が身の保身が、大事なので。
それでも両手を合わせ頭を下げる
「わかった」
「
ごめん猫さんでも
「うん」
深い安堵のため息で窓の縁にもたれる
「助かる。
そう告げじゃあなと生徒達の元気溢れる廊下を立ち去って行った。
「
「う、うん」
今日の昼休みで嬉しかった事と言えば、初めて猫ちゃんと一緒にお弁当を食べた事と背中に残してくれた猫ちゃんの手のひらの温もり。それを糧に午後を乗り切りった。勢いそのまま
あの時と同じ鳴り止んだチャイムと夕陽が、溶けて行くグラウンド。違う所も有る。生徒達のタタタと地面を蹴る音、白球と一緒に高く弾ける金属音、シュルルとネットの擦れる音に各々の専門用語が、入り雑じり夕陽をより熱くする。
「ふぅー」
失恋したのかな。どうしても
昼休みの様子を考えていると猫ちゃんの温もりも思い出せる。浴びた夕陽と重ねる。
そうだ。私が、落ち着け! 異性相手に落ち着くのは、恋人だけじゃないはず。そうだ! お姉ちゃんだ、
あれ? そうなると
「わりぃ!」
独りごとに割り込む謝罪。ようやくやって来た
「猫ちゃん!」
「やっほー! やーまちゃん」
猫ちゃんとハイタッチ。
「猫さんと
兄と? 余計なことを言うような人じゃないはず。大丈夫だよね。
「何話したの」
「うーん? 言って良いよな
「ふーん」
「
「何で?」
「妹思いじゃん」
「鬱陶しいだけだよ」
「そういうもんか? 独りっ子だからさ。兄ちゃんとかそう言うの憧れる」
「気持ち分かっよ
思わず鼻が、膨らむ。恥ずかしい。やはりそうだったか。兄ちゃん姉ちゃんが、欲しいんだな?
「実際は、邪魔なだけか?」
「そんなだけじゃないけど」
「良いとこもあんだ?」
さっきからスクールバックの握る手が、落ち着かない。
「ええーそうだなあ。鬱陶しいけど優しいからだよね」
「ほう」
「ほお」
相づちを打ったきり目をそらそうとしない
「うん、何だかんだで頼れるよね。困ってたらアドバイスや手とか貸してくれるし」
今こうやって
「へえ」
「
語る度に
「
チッ。
「そんなのほっといて先輩とこ行こ」
「「ええ!?」」
流石は、自慢の兄だ。妹を思いやってどんな時でも冷静にさせてくれる。
猫ちゃんにまたねと手を振ったら
全くにこりともせず
速い! 迷った隙にもう目の前だ。先輩まるで牛蛙を捕まえた様にほっぺを挟まないでください。
「ゴールに
「よーくでかした
後輩を褒め称えいまだ後輩の頬をこね回す先輩。
「やめてくらひゃい」
「うん。止める」
憧れが、冷める時ってこんなこんなにも心に雨が、降るのか。汗だく泥だらけの似合う先輩も好きだけど爽やかな汗で煌めく先輩をもっと末永く見たかった。
「どこで遊ぶよ。土日の午後なら空いてるぞ」
来た理由を察したのか既に遊ぶ気満々だ。真っ直ぐな眼差しの先輩だが、移された春日和の手のひらの感触の有る間は、上手く見れそうにないな。
「兄の為にカードショップに行きたくてですね」
「おおー良いねえ」
「それで二人は、何を買ったか参考にしたくて、えと私も土日空いてます。
先輩の目に堪えられず逃げた先には、幼なじみの目。目線が、かち合う何て考えてなかったから変に高い声に成ってしまった。やばい心臓が、持ちそうにない。
「お、おう。土曜で良いんじゃないか? 早い内に行こうよ」
「よし! けってー。三日後な!」
両手と片足を上げてはしゃぐ
「何で
先輩が、腰に手を当て答える。
「可愛いもん後は、ヒミツ」
秘密って何!? 解き明かそうと考え込むほど兄の邪推が、駆けめぐる。胃が、ムカムカとする。
「今日の放課後、私抜きに何する気だ?」
「何もないっすよ、俺は、バイトです」
「もったいないな。どっかの部活に入らんのか」
「良いんすよ。時間が、有るときに誰かと身体動かせれば、充分なんでね」
上げた両手を下ろした先輩に別れを告げ
「ええと、それじゃ先輩土曜の五時に」
グランドの端を歩き校門へ向かう。何度目かの小気味良い金属バットの音が、飛ぶ。
「危ない!」
野球部の叫びに上を見れば、空に白球が、小さくポツリとあって直ぐに大きくなっていくバシリと皮膚を叩く硬球の音。ボールを地面に落とし受け止めた手をふる
「ありがとう」
ボールを拾い上げ真反対のバッターへ放り返した。
「いいってことよ」
下げた頭をを空に上げ呆気に取られる野球部員達。それに手を軽くふり
「なあ、待ってくれよ!
「何ですか?」
先輩が、私達にすまなかったと一度頭を下げて改めて
「野球部に入ってくれ!」
「嫌です」
「なんで!? 嫌いか野球」
「好きっすけどサッカーとかも好きなんで」
「そうか、分かった!」
「分かって貰えて何よりっす」
「ああ、サッカー部ならいいンだろ! サッカー部に入ってくれ!」
「分かってねエです!」
それもしないと手を振る
「一年であんだけのポテンシャル」
両拳をわなわなと震わせる先輩。
「
「ファンじゃないっすか」
困ったように頭をかいて部活をしない理由を語っていく。
「俺は、人の為にじゃなくて自分の為にやりたいんすよ。勝ち負けの責任が、大きい大会だと気分が、乗らないんで期待に応えれないと思うっすけどね」
じゃあ、バイトなんでと走り去る
「はあはあ、本当にどこか入らんで
少し苦しくなった胸に手を当てる。肺が、膨らんでは、萎むを繰り返しだ。
「……」
「な、何?」
「別に何でも」
「……」
そっぽを向かれた。私の肺は、落ち着く訳もなく心臓も混じって激しく伸縮を繰り返す。頭の中も伸びたり縮んだりで浮かんで流れて。
真っ赤な雲が、綺麗だ。そうか、今、二人っきり。
「ねえ、いっ一緒に」
「悪い時間が、無くなる」
一緒に二人で遊ぼうよ。
「駄目かあ」
大きく言ってもとっくに届かない。遠のく
ALIVE @24027724
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