十八話だ!!あいつと遭遇したぜ!!

皆様、御機嫌よう。いつもの木霊凛ですわ。


いつもじゃない?もっと荒れてる感じだったんですって?

冗談はよしてくださいな。元男とは言え、今のわたしは淑女ですのよ。そんな野蛮な口調をする訳ないじゃありませんの。うふふ。


それにわたくしの御学友の愛美さんも「お嬢様みたいだね!!」と言ってますし、あんなキラキラと輝く期待の目で見られてしまうと、思わず答えてあげたくなるんじゃありませんの。


というわけで、今のわたくしは御覧の通り大和撫子のように身も心もおしとやかな女性に生まれ変わりましたわ。


そんなわたくしですが、今は丁度その新しい学友たちと別れたところですわ。久々にカラオケというものを楽しんで、後日も一緒にお買い物に行く約束をしましたわ。美しいとはいえ、流石に何故わたくしが今の服を来てるのかと疑問に思って、そう聞いてきましたので、正直にそのまま「これ以外まともそうな服持ってないから」と答えたら、驚かされましたわ。


「それじゃ普段は一体何を着てるの?」とか「どうやったらこれが一番まともな服になるの?」とか、色々質問されましたけど、身元の話は流石に離せないので「家庭のことはちょっと...」と答えたら何故か同情の眼差しで見られて、「私たちが凜ちゃんに似合う服を見繕ってあげるよ!!」と、そんな感じでショッピングの約束を取り付けましたわ。


さて、カラオケから出て既に日も落ちようとしてる頃です。わたくしもそろそろ帰りましょうか。

このあとの予定はありませんが、う~ん...

『ぐぅ....』


あら、ごめんあそばせ。


わたくしってばカラオケではジュースやらお菓子やらは食べましたけど、そう言えば夕飯はまだでしたわ。恐らく自分の美声に思わずテンションが上がってしまい、声が枯れるまで何曲も歌ったからエネルギーの消耗が激しかったようですわ。

確か、冷蔵庫にある食材も少なくなってきましたし、帰る前にスーパーに寄りましょう。

それと、何か大事なことを忘れてる気がしますが、まあ恐らく気のせいですわ。本当に大事なら忘れる筈がありませんので。


確か新しいマンションの最寄りスーパーは...ありましたわ。


数日分の食材と、今日は奮発して何か豪華なものを買いましょう。でも残念ながらわたくしは料理が得意ではないので、高級食材を買っても美味しく調理できる自信がありませんわね。わたくしの唯一淑女としての欠点ですわ。


仕方がありませんね。食材は後日の分だけにして、今日は何か頼みましょう。


あ、そうですわね。寿司、寿司がいいですわ。うん、そうしましょう。


「ふんふんふん~」


スーパーから出てマンションに向かいます。新しいお友達が出来たからでしょうか、嬉しすぎて思わず口ずさみながらスキップしてしまいましたわ。


そろそろマンションに付きますわ。あの角を曲がってーーー

「ごめんなさい!!」

「別にいいよ。過ぎたことだし」


ーーー行く前に、その方向から聞きなれた声がして思わずたち留まりましたわ。

知り合いでしょうか?誰ですの、この時間にこんなところで...


恐る恐る角から覗き込む。

あれは。。。


高身長に天然パーマのワカメ黒髪の少年。最近まで髪をしっかりセットし、すっかり清潔感のあるまあまあイケメンになったけど、元はやはり目を隠すような前髪とじゃ頭。


ーーーって、よ、洋!?


何で洋がここに?!アイエエエエ!ヨウ!? ヨウナンデ!?


はっ!そういえば、そうだった!今日は洋たちに会う予定だった!!

あ、あれ?今まで俺は何をやってたんだ...?


確か、ギャル軍団に囲まれて、それから一緒に飯食いに行って、色々雑談して、教室に戻って勉強して、放課後に一緒にカラオケに行って...。


あ、なるほど。


密室で美少女4人と一緒に2時間もいたら、雰囲気とかなんとかいろいろその場の流れに乗ってたら、俺の心も美少女お嬢様キャラになりかけたわ。


あっぶねぇ!!ギャル軍団恐るべし!!良かったわ、こんなタイミングで元に戻れて。


てか洋の奴なんでここにいるんだ?今日は一応Aクラスの教室に行ったけど、姿なくて元クラスメイトに『先生に高峰洋を呼びに来るように来たけど』って風に装って聞いたら、一週間も学校に来てないからてっきり部屋に引きこもってるかと思ってたわ。


一応想定してたから驚くことではないし、半年も一緒にいた親友だし一週間も部屋に引きこもるくらいならやりかねないなと、そう思って今日放課後奴の部屋に行く予定だったけど...。


「特にあかりだ。まさかそんなに力があるとは...というかこれほぼ全部君がやったようなもんだしな」

「ほ、本当にごめんなさい...」


意外にも元気な姿でいつものように両腕に美少女を侍らせる奴がいた。いや、何か聞き手の右腕にギプスがあるので何か骨折してるみたいだけど、それ以外は至っていつも通り元気な奴だ。


あれ?思ってたのと違うぞ?


てっきり今も部屋に閉じ込めて布団をかぶらせて「凜!ごめん!!ごめん!!僕のせいで、僕のせいで君は!!うわーん!!」ってべそかいて落ち込んでると思ってたのに。


「私もごめん。ていうか私があかりさんを強引に連れてきたし、責任は私にあるから」

「いやまあ、確かに要が俺を疑ったのは仕方がないと思うよ。初日に皆が来た時あんな逃げ方したし、俺もそっち側だったらあれくらいやってたかもな。まあいくら何でもやり過ぎではあるけど」

「本当にごめん...」

「ごめんなさい...」


そして奴の両側にいる、奴を支えながら歩いてるのは美少女ズの中で最古参である大堂要と最近奴のハーレムに加わったばかりの白椿あかりだ。二人とも物凄く申し訳なさそうな顔をしてる。


あれれ?もしかして実はとうに立ち直って、今日来てないのは何かあって腕が折れたからなのか?でも一週間も来てないって言ってたし、片腕骨折ぐらいで学校休むような奴じゃないぞ。全身ミイラになっても登校しようとしたし。流石に俺含め美少女ズ全員で止めたんだけど。


親友が死んで一週間もしない内に立ち直ったってこと?俺の死に対しての悲しみをそんぐらの期間で乗り越えたってこと?


え、普通にショックですけど。俺の死が一週間もしない内に乗り越えられたくらい軽かったってわりとショックなんですけど。奴が死んだら俺は一年も悲しむ自信があるのに、超ショックなんですけど。


「だからその代わりしばらく俺の世話を頼む」

「まあ、それは当然だけど」

「あ、私はちょっと...」

「あーあ。折角立ち直って学校に行こうと思ったのに、椿さんに抑えられて腕を折られた挙句、治療費も面倒も見てあげ貰えないとは、俺悲しいな」

「うっ...魔力さえ戻ればこんな目には...」

「そういうわけだからしばらくよろしくな、椿さん」

「...はい」


というか洋の奴、口調変わってない?時々出るわざと意地悪くいうのは変わってないけど、何というか、こう、鈍感主人公から意地悪俺様系みたいな...。


あと要はいつも通りだけど、あかりさんなんか洋に対する態度変わってないか?何か怯えてるようなまるで蛇に睨まれた蛙のような...。


「ま、俺も鬼じゃないから、このあと何が奢ってくれたらそれでいいよ。もちろんとびっきり高いやつで。それで面倒は見なくてもいいよ。というか要もな。冗談で言ってるから真面目に取らないでくれ」

「そ、それで見逃してくれるんですね。わかりました。使いたくはないのですが今日だけは白椿家の特権を使って今すぐ高級レストランを予約しましょう」

「いや、そこまでしなくていいよ。そこら辺高そうな寿司屋か焼肉屋でいいから。もうおなか減ったし」

「それなら私も出すよ。あかりだけに任せて私が一人だけただで許してくれる訳には行かないし。あと他の皆も呼んでいい?折角だから洋復活パーティーってことで」

「うん。いいよ。俺も皆に謝っておきたいしなしな」

「わかった。それじゃ一旦あそこのコンビニによって皆に連絡しよう」

「はい」

「ああ」


そういって歩き出す三人。


うーんこの流れは完全に悲しみから復帰した主人公を囲んで祝うパーティーってイベントだけど、どうするんだ?俺。


いや、そんなこと関係なく今から三人に声をかけて「よ!俺だぜ!!木霊凜だ!!一回死んだけどなんか復活したぜ!!心配させてごめんな!!」って、素直に声をかけてればいいだろうけど、そもそも主人公が落ち込んで、そこから復帰して祝うパーティーをすることになった原因の俺が、いきなり祝う直前に現れると不味くね?「え、お前生きてたの?なんだよー心配して損したわ。ついでにちょっと口調変えてイメチェンしたのに台無しだわー。かー萎えた。解散解散」ってなるんじゃね?


まずい。これは、とてもまずい事態になった。


ていうかそもそも今の俺が『木霊凜元の俺』を名乗って、それが俺であることの証明にもならないし、最悪の場合、死者の名を騙って侮辱してると勘違いされるかもしれない。「お前がどこの誰かは知らないが、凜を侮辱した罪はしっかりと払ってもらおう」って言われてあいつと戦うことになったら、百パーセント俺は負けるぞ。あいつって曲がりなりにも半年間主人公やってたし、覚醒イベントや何やらもあって当初と比べ物にならない強さになってるぞ。そもそもその当初でさえ俺を上回っていたしな。


それに今の俺の姿というと...。


「....。」


黒髪ロング美少女、しかもゴスロリ着てる。


「ーーーー!!!」


あああああ!!!改めて自分を見ると恥ずかしさが一気に湧いてきた!!なんで俺はこんなものを着て親友と知り合いに会いに行こうと思ったんだよ、畜生!!馬鹿か俺は!!いくら可愛いからって元男が堂々と大衆の前に着ていいはずの服なわけないでしょうが!!


何が、『一番まともそうな服』なんだよ!?!!全然まともじゃない!!俺だって昔こんな風にゴスロリ着てた人見かけたら『可愛いけど、まさか現実に来てる人がいると思わなかった。何か草』って思うぐらい珍しい服なんだよ!!無何にTシャツにパーカーとジーンズにしとけばよかったのに、何で変なところで思い切ってしまったの、俺!!!


だ、ダメだ。仮に信じてくれたとしても「ほ、本当に凜なんだな。それにしてもその恰好...っぷw」って、笑われる未来も浮かんできた!!うおおお!!恥ずかしい!!今すぐ地面に転がりたいくらい恥ずかしい!!!


よ、よし。三人はコンビニに入った。取り合えず奴らと合流するのはしばらく様子見てからにしよう。何か高い店食べに行くようだけど、後で尾行して俺も行こう。でもその前にーーー


マンションへダッシュだ!!早くこの格好を何とかしないと!!



##


洋「骨折られた。痛い。慰謝料払わんかったら君の実家にチクるで」

あかり「は、はい...」


何故骨折にあかりちゃんがさっさと治癒魔法使わないのかについてですが、ちゃんと理由があります。

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脳内ハイテンション馬鹿キャラを被ってるTS娘が、やけくそになって親友代わりに業を背負おうとしたら、全世界に追われて一人にボロボロなったところでその親友に救われる話。 @ragel

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