ヒモなダンナは宇宙人
無限飛行
ダンナは…
うちのダンナは、宇宙人。
もう一度言うね。
うちのダンナは、宇宙人です。
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2028年、宇宙から巨大な扇型の宇宙船が地球に降り立った。
それから、20年。
2048年5月現在。
世界は当たり前のように、
彼らは地球の事をよく知っていて、先進の科学技術を公開するかわりに、地球への移住を求めてきた。
彼らは破滅的大災害を逃れ、安住の地を求め、流浪の民となったという。
彼らは真っ先に先進国に同時に着陸し、同一の提案をしたらしい。
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私の名前は、星屑 亜里沙。
32歳。
中堅商社に務める、しがないOLよ。
私は既婚者で、ダンナと子供二人、母の5人家族。
子供は双子で、男の子と女の子の二人。
いずれも5歳。
ダンナの名は、星屑イケメーラ。
旧姓、イケメーラ▪タコレット。
タコレット星人、いわゆる宇宙人です。
しかも、マスオさんです。
いまや日本には、10万人のタコレット星人が暮らしている。
全世界では、100万人。
タコレット星人は外見的には地球人と、ほとんど変わらない。
外見的な相違点をいえば、髪の毛は淡いグリーン。
あと、イケメンが多く、何故か女性が居ない。
そう、何故か、女性が居なかったのだ。
この件については、タコレット星人のリーダー、イケイケ▪タコレットさん曰く。
◇星を出発する時、訳あって男女で別々の宇宙船に別れたとの事。
◇その時、女性の船に重大な事故が発生し、宇宙の深淵に取り残されたとの話。
なので、合流する事は困難なんだそうだ。
宇宙船を別々に別れた理由は、生理的問題だったとし、それ以上は語らない。
まあ、地球のお偉いさん達は、そんな些細な事はどうでもよくて、取り敢えず受け入れて、その科学技術を手にしたかったようで、さっさと地球に着陸させ、移住をすんなり認めてしまった。
それから20年、彼らは世界じゅうに散らばり、日本においては、政令指定都市なら必ず居るようだ。
まあ、そんな当たり前の情報なんて、今の私には必要ないんだけどね。
本当に必要ない。
だって私は、あのくそダンナに三行半を突きつけてるところなんだからーっ!
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正直、なんであんな奴と一緒になったのか、わからない。
まあ、あえて言うなら、夜の生活がめちゃくちゃ良かった事。
……そう。
あいつらのもう一つの身体的特徴ーー!
あっちのなにが、凄いのよ。
ハンパなく凄い。
欲求不満かって?
違うわよ!
あいつらの男性自身って、自由に意識して動かせるし、長さも大きさも自由自在。
そう、彼らタコレット星人の最大の特徴は、彼らの男性自身なのよ。
おまけに吸盤までついていて、子宮を引っ張られる感覚がもの凄いのよ!
正直、タコレット星人との夜のお相手をして、朝まで気絶せずにいられる地球の女は居ないでしょうよ。
これがタコレット星人の特徴、しかもかなりの絶倫ね。
イケメンで夜が凄くて絶倫でって、なんでそれで三行半って思うでしょ?
はっきり言うわね。
クズです。
は?
わかんない?
ええっと、なら最低男。
ヒモ、浮気者、くそ野郎、役立たず、粗大ごみ、只の種馬、3又野郎。
女をバカにし過ぎ。
先日も、家族の
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「アリサ、タクシー代足ンナイ。クレ」
「は?あなた、見てわかんない?私達、夕飯の食事中なのよ。あなたの帰りが遅いから、今、食べだしたところよ。そもそも働いてないあなたが、一体、何処からタクシーを使うっていうの!?」
イケメーラは靴下も履かず、玄関から廊下をペタペタと歩いてくる。
私は食卓で、子供達と母とケーキを囲んで、子供達の6歳の誕生日を祝っていた。
この男は放浪の癖があるので、何日も前から言っておいたのにも関わらず、家を開けて何処かに行っていたのだ。
「ミヨ子、友達。タクシーデ家マデ送ル。ソノオ金、必要」
片言の日本語で話すダンナ。
みよ子って、誰よ!?
私がダンナを睨みつけると、何かを感じたのか、子供達が私に抱きついてくる。
「「まま~っ」」
「はい、はい。大丈夫ですよ。パパはあてにならないけど、ママがいますからね!」
私が子供達を抱きしめていると、母が代わりにイケメーラに言った。
「イケメーラさん、誰かを待たせているのよね?取り敢えず、タクシー代はいくら?」
「母さん、払わないで!」
「どっちにしろ、家の前で近所迷惑だよ。話ならタクシーの後にしておくれ」
母子家庭で、私を大学まで行かせてくれた母。
さすがにサバサバして、確実にポイントは外さない。
「タクシー代、3万。オ願イ」
「はい、3万。さっさと払ってきな」
相変わらず、マイペースのダンナ。
母から3万円を貰うと、ニッコリしてペコペコお辞儀をし、また玄関に向かう。
無駄にイケメンが、癪に障る。
「3万!?あなた、一体何処まで送るつもりなの?」
私の驚きの声は聞こえているはずなのに、そのまま、ペタペタと出ていくダンナ。
何時もの事ながら、呆れてため息も出ない。
私は子供達を抱えながら、ガックシと肩を落とした。
「ママ、ママ、パパは何処にいくの?」
娘のアサリコが聞いてきたが、なんて言えばいい?
愛人のところ?
それとも、恋人のところ?
言ってもいいが、保育園の年長で来年には小学生のこの子達は口止めしても、友達には話すだろう。
そうなれば、ママ友達の格好の餌食だ。
ご近所だって満足に歩けなくなる。
それに小学生になれば、登下校の見回りは、ローテーションで回ってくる。
今だって職場では、ダンナとの夜の話しを聞きたがる後輩達が、いつも昼には押し寄せるのだ。
プライベートに近いところでも、それでは心休まる気がしない。
どういう訳か、タコレット星人達は、うちのダンナを含め、外面だけは、やたらいい。
いやいや、見かけの話じゃないよ。
勿論、見かけもイケメンだから、其もあるかも知れないが、其だけじゃない。
何故か、彼らは誰に対しても低姿勢だし、女性にたいしては、徹底的にジェントルマンだよ。
見境なく、徹底的にね。
【紳士で礼儀正しく、理知的で性格が良く、情熱的で恋多き人たち】
これが世間一般の彼らへの評価。
でもさぁ、所帯持ちのタコレット星人の評価は全く別人なんだけど!
だいたい、その【情熱的で恋多き人たち】のところがさ、何時までヤってんだよって言いたい!
ふざけるのも大概にして貰いたい。
「ママ?」
おっと、アサリコに聞かれてるんだった。
どうしよう。
仕事に行ったって答える?
20時から?
「アサリコ、パパは、職場に忘れ物をとりに行ったんだ。ね?ママ」
な、NICE、マサリコ、うちの息子。
6歳にして、空気の読める賢い子。
しかも将来、確実にイケメン。
超、有望株。
「そ、そうよ。マサリコのいう通り。だから、直ぐに戻ってくるから」
「はーい」
ふう、マサリコの機転で、アサリコを納得させられた。
あ、息子が私にウインクしてる。
なに、このイケメン。
惚れてまうではないか、ママは将来が心配だよ、息子よ。
流石に血は争えないか。
タコレット星人は、はっきり言ってタラシ。
呼吸をするように、タラシ。
歯の浮くような言葉を吐き、何時でも女を見境なく口説く、プレイボーイ集団。
けれど性格が良くて、低姿勢。
イケメンで夜が良くて絶倫でって、世の独身女性のあこがれの的よね。
だから、マスコミも世間も彼らに好意的で、芸能人のタコレット星人は多い。
まあ今のダンナも、そんなところに私も引かれたんだけど。
けれど、いざ家族になったら、私生活は変えるものでしょ!
あのダンナは、其が全く判って無い!!
だいたい妻の見てる場所で、堂々と他の女を口説くって、何よ!
隠さず堂々とやれば、妻公認になるからいい?
隠せよ!
いや、その前に口説くなよ!
いい加減にしてほしい。
それに子供の誕生日に遅刻した挙げ句、気にも止めずに、その遅刻理由の愛人との付き合いを優先するくそ!
何者だよ、宇宙人かよ!
あ、宇宙人だった。
とにかく、最低なダンナ。
その習性は結婚後も変わらず、仕事もしないヒモなダンナ。
もう、限界!!
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私はついに、あのダンナに離婚を宣言した。
するとダンナは、目をパチクリして、こんな事を言いやがった。
「アリサ、構ッテヤレズ悪カッタ。今日ハ、抱イテアゲル。ダカラ、機嫌直ス」
ニッコリ笑い、私を抱きしめてくるダンナ。
いままでは、こうして誤魔化されたのよ。
でも、もう、誤魔化されなぁーい!!
あ、アンタなんか、アンタなんか、私の事を何とも思ってないんだからーっ!
チュッ
「……………!」
私がダンナを睨みながら、次の言葉を言おうとした途端、ダンナはキスで口を塞いだ。
ま、まだだ。
絶対、今度こそ言ってやる!
「愛シテル。コノ宇宙ノナカデ、誰ヨリモ愛シテル。ボクハ、君ガイナケレバ生キテイケナイ。ボクガ間違ッテイタ」
だ、騙されないで、星屑 亜里沙。
私は、今日、このダンナとの腐れ縁を立ち切るのよ!
このまま、押し切るの!
「女達トハ、今日限リ別レル。許シテ、奥サン」
ま、前と同じよ。
前もそう言ってたけど、そうじゃなかった。
確かに、いままで付き合っていた子達と別れたけど、直ぐに別の女を連れてたわよ!
貴方の別れるは、今付き合ってる子達と別れるだけで、また、直ぐ新しい女を作るのよ!
騙されないで、亜理砂!
ここで言わないと、繰り返しになるわよ!
「子供達、可愛イ。大事。ズット一緒二イタイ。アリサ、君ト、子供、オ母サン、大事二スル、ダカラ、シヨ?」
「………」
だ、駄目だ、亜理砂!
ダンナのペースだ。
また、優しく見つめるダークブルーの瞳が憎らしい。
ホントにイケメン顔で吐かれる甘い言葉と、仕草と、耳にかかるダンナの息が私の決心を鈍らせる。
うう、しかもダンナは、その匂いまで甘い。
これも、タコレット星人の得意体質。
女をその気にさせ、抵抗出来なくさせる。
い、いけない!
このまま、なし崩しに抱かれたいと思っている自分がいる。
駄目ーっ!
◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌朝、寝室で起きると、ダンナは居なかった。
時計は、Am9:30
完全に遅刻だ。
慌てて着替えて、下のリビングに降りる。
「子供達は朝御飯食べて、保育園のバスに乗せたよ。あと、会社には風邪で休みって連絡済み」
流石、お母さん。
何時も頼りになる。
「あ、有難う。お母さん。助かります。その、アイツは」
「ダンナ?朝御飯食べて、すぐに出て行ったよ。バスの保母さん達に愛想笑いして、キャーキャー言われてたけど」
「……!あの、馬鹿」
また、ヤってしまった。
アイツのペース。
私が何か言おうとするたびに、気絶させられ、なし崩し。
それから一週間、ダンナは何時ものように、家に帰って来なかった。
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それから一週間後の日曜日の午後、ダンナは帰って来た。
また、新しい女を連れて。
「イケちゃん、ここがイケちゃんのお家?思ったより質素じゃん。お金なさそーっ」
金髪で顔黒コギャル女が、ダンナの後ろから許可もなく、家に上がる。
また、見た事のない新顔だ。
しかも、何時もわざわざ紹介にくる。
ふざけんな!
私がじっと睨んでいると、コギャルはダンナに隠れて言った。
「ねぇ、ねぇ、イケちゃん。へんなおばちゃんがあたしを睨んでるよ。怖いんだけど」
「大丈夫。コノ人ガ、私ノ奥サン」
「え、そうなの?お小遣いをくれる人?」
誰が、おばちゃんだ!
誰がお小遣いをくれる人だ?!
お前は、奥さんがいると承知でダンナと付き合い、しかも、その奥さんからお小遣いをねだろうとするのか?
貴様、
「アリサ、オ金、5万、ホシイ」
「なんの為?何でアンタ達にお金を渡さなきゃなんないの?ふざけてんの?」
私がダンナの言葉に後ろを向いて、腕組みをしてると、あのコギャルが吐きやがった。
「奥さん、拗ねてんの?チョー受けるんだけど」
「何ですって!」
この世間知らずのションベン臭い小娘が!
私が震えながら耐えていると、私と二人の間に小さな人影が割って入った。
「ママを苛めるな。お前達は、出ていけ!」
息子のマサリコが、両手を広げて私を庇う。
ああ、なんてイケメン。
「あっれ~っ、かっわいい!これ、イケちゃんの子供?撫でていい?」
コギャルが、マサリコに手を伸ばす。
ウチの子に、その汚い手で触れるな!
バシッ
マサリコが、コギャルの手をはね除ける。
「よるな、ババァ!」
「な、バ、ババァ!?」
マサリコ、よく、やった!
ババァって言われて、コギャルが目を白黒させている。
ざまぁ!
「マサリコ、ミサコ、パパノ友達。ソンナ言イ方、駄目」
くそダンナがなんかほざいてるが、マサリコは、無視だ。
「お前なんか、パパじゃない。この家から出ていけ!ババァもだ!」
「なんだよ、このガキ!あたしをババァだと?!」
手を上げるババァ、もとい、コギャル。
マサリコ、危ない!
バシッ
私は、コギャルがマサリコを殴ろうと手を上げた時、マサリコを抱きしめて防いだ。
コギャルの手は、私の頭に降りそそいだ。
こんなもの、痛くない。
私は、ダンナとコギャルに背を向けた状態で、マサリコを抱いたまま動かない。
「マ、ママ?!ママ、ママ!」
「大丈夫、大丈夫よ、痛くないから」
マサリコが心配して、私を呼ぶ。
大丈夫、あなたが無事なら、私はなにも怖くない。
「ア、アリサ?!」
チラッと後ろを見ると、ダンナがオロオロしており、コギャルが真っ赤な顔をしている。
「まま~っ」
アサリコが駆けてきて、私に抱きつく。
私はここよ!
私は、アサリコも一緒に抱き込む。
ダンナとコギャルを睨む、マサリコ。
「な、何よ?あたしが悪者みたいじゃない」
私達のやりようを見たコギャル、呆れたように言って後ろに下がる。
「なーんか、飽きちゃった。イケちゃん。あたし、帰るね」
「ミ、ミサコ。マ、待ッテ!」
ダンナは、私とコギャルを交互に見ながら、結局、コギャルに付いて行った。
マサリコは、二人の姿が見えなくなるまで、睨んでいた。
マサリコ、アサリコ。
ごめんね、今まで優柔不断で。
ママ、もう、迷わないわ。
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◆20年目のタコレット星人の件で、国連で一定の論文と報告がなされた。
◇タコレット星人達は、そのほとんどがオペレーター止まりの者しか居なかった。
機器の使い方は判るが、その詳しい技術系の者が居なかったのだ。
だから、地球の技術を超える機器について、地球人が新たに作り出す事が出来なかった。
◇それと、タコレット星人達は、どこでも怠惰で働かない者が多く、女性を見境なく口説くので、各国でも問題になっているらしい。
◇新たな報告では、もう一隻の扇型の宇宙船がすでに国連に接触しており、あらたな移住希望のあるタコレット星人である事が分かった。
その数、300万人。
此方は、宇宙の深淵で消息を絶っていた、女性だけのチームであり、先に到着した男チームと対を成すグループであると分かった。
◇また、タコレット星人の女性達は全て技術職で、全ての機器の構造からその製造方法まで判るらしい。
しかも、働き者。
◇だが、技術提供に当たって、彼女らから要求があったらしい。
その要求は、先に移住しているタコレットの男共と、会わないようにして欲しいとの要求だった。
何でそんな要求をするのか。
◇理由は、彼らが全て女タラシで、女から搾取する事しか考えないヒモ野郎集団だったからだ。
タコレットの男の習性で、下半身だけ旺盛。
もはや、ヒモが人生のような存在だったらしい。
完全にタコレット星人の男達は、タコレット星人の女達から、三行半を叩きつけられた状態のようだ。
同族の女達から総スカンって、なんとも情けない。
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あれから、ダンナとは会ってない。
時々、玄関口に姿が見える事があったが、徹底的に無視した。
その後、姿を見た事はないが、風の便りで愛人達の家を転転としているらしい。
離婚書類は、未だに印を押して貰ってないが、子供の親権やその他の手続きは、きちっと進めてる。
もう、貴方には振り回されないわ。
◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「マサリコは、わたしのものよ!」
「舞ちゃん、ズルい。マサリコはあたしの!!」
一つ、不安材料があるとすれば、息子のマサリコの事だ。
小学校に上がってそうそう、毎日の登下校に数人の女の子が取り囲んでいる。
皆、マサリコのガールフレンドだ。
はぁ、血は争えないのかしら。
ヒモなダンナは宇宙人 無限飛行 @mugenhikou
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