第3話 新生活③

「へえ、ねえねはお姉ちゃんとお出掛けなんだ。ずっるーい!」


その日の晩、末っ子の美李と電話して愛姉との同居の初日を伝えた。


「お出掛けっていっても生活用品を一通り見て回っただけだよ」

「それでお姉ちゃんに色々買ってもらったんでしょ」

「うっ!?それはまあ…そうだけど」


結局家具やら服やらを買ってもらった。

私も多少持ち合わせがあるからいいよって言ったんだけど、がんとして引かない愛姉に圧しきられる形で買ってもらった。


「私がバイトし始めたら何か買ってあげるから」

「それはそれ。ねえねは一緒に買い物行ってくれないじゃん。お姉ちゃんと一緒にお出掛けがあたしもしたいの」


買い物って…。

私はまあネットで基本ちゃちゃっと済ますタイプなので、今日みたいに外に出て選ぶっていうことは誰かと一緒じゃないとまずない。


「夏休みには一度帰るからその時に愛姉にお願いしてみたら」

「えー、GWには帰ってこないのー?」

「去年も愛姉帰ってなかったじゃん。今年も帰らないんじゃない?分かんないけど」

「そうだけど、あたし一人は寂しいよ」

「お父さんは?」

「いつも通り、仕事ー」

「そっか。私も出来るだけ毎日電話したげるから元気だして」


なんていってもまだ美李は中学生だし。


「あ、ねえねからの電話はいいです」

「なんでそんなこと言うのさー」

「それより愛姉は?」


それより…。

私本気で落ち込んじゃうよ。


「愛姉ならなんか自分の部屋にこもったよ。なんでも2.3時間部屋にこもるから部屋入らないでって言われてる」

「なんだろ?彼氏とお喋りかな?」

「ああ…。もしかしたらそうかもね。もう愛姉も彼氏いてもいい年齢だし」

「ねえね、住まわせてもらってるんだから空気は読まないとダメだよ」

「わ、分かってる」

「ねえねはなんかそういうとこですぐポンするからなあ」

「だ、大丈夫。愛姉の幸せは私が守るから」

「ねえねが何もしなきゃ平穏なのよ」


くぅー、妹が辛辣なんですがどうしたらいいですか?

なんだか視界がにじんできたような気がする。


「ま、お姉ちゃんと話せないのは残念だけどもう9時まわっちゃうし、電話切るね」

「そうだね。私はまだ明日も休みだからゆっくりー」

「かー、これだから暇人大学生はー」

「えへへ、じゃあ美李、おやすみ」

「うんおやすみ」


なんだかんだ美李とはよくしゃべるんだよなー。

中学の時には愛姉が大学で家を出てたから、当然美李とは一緒にいることが多くなったから当然っちゃ当然なのかな。


通話を切ったあと、愛姉の部屋の扉を見たが、いまだ『作業中』の札が掛けられているところを見るに忙しいのだろう。

なんて部屋で横になってるうちにうとうとし出した私は、いつの間にか夢の国に誘われていた。

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