4月16日(土)10:00

 主に第一・第三土曜日の月二回、土曜講座というものが行われる。これはクラスごとのものではなく、言うなれば選択授業のようなもので、各々が自由に受けたい授業を選ぶことができる。もちろん定員はあるので、必ずしも希望通りになるとは限らないが。そして残念ながら土曜講座を受けないという選択肢もないわけだが。


 選択する授業は全部で3コマあり、午前中で終了する。内容としては、大学の過去問など受験を見据えた課題を与えられ、最後に先生がそれの解説をしてくれる、という感じだ。ちなみに私は無難なところで、数学、化学、物理の国立難関コースを選んだ。難関コースなんて言うと偏差値が超高い大学を狙っているのかと思われるかもしれないけど、これはこの高校においてデフォルトの授業水準に当たる。もっと上を目指す人が選ぶのは超難関コースだ。だから、難関コースは無難なのである。




 1限目。数学の授業が行われる教室へ行き、適当な席に座る。まあまあ人数の多い高校なので、3年になった今でも知らない人の方が多い。だから誰かとおしゃべりするでもなく、一人静かにしていた。実際、周囲を見回してみても、知ってる顔はほとんどない。まあ、全くいないわけではないけど、気軽に話せるような人は本当にいないようだ。そもそも気軽に話せるような人自体がそんなにいないともいう。


 そんなことを考えながらぼーっとしていると、私の隣の席に誰かが座った。何となくそちらの方を見てみれば、そこに座っているのは四月一日くんであった。普段から隣に座っているというのに、ここでも隣に座るのか。自由席なのに、あえて私の隣に座るのか。


 いやまあわかるよ。知ってる顔を見つけたら、何となくその近くに座りたくなるよね。それが例えそんなに喋ったことのない人だとしても、知ってる人ってだけで気持ち的に楽になるもんね。だから隣に座ってくるのに文句はないし別に構わない。構わないんだけどさ。2コマ目の化学の教室でも3コマ目も物理の教室でも、まさか普通に隣に座ってくるとは思わないじゃん? 私、本当にびっくりしたんだけど。自由に3つの授業を選択したはずなのに、まさかの3つとも一緒なの? 同じ授業、同じコースでも先生ごとに別れて複数教室あったりするのに、そこまで完璧に合致しちゃったの?


 ひたすら問題を解くだけなので隣が誰だろうが関係ないんだけど、示し合わせたわけでもないのに全く一緒の授業になるとか、そんなの変に気になっちゃうじゃんか。と最初は思ったけど、黙々と問題を解いていればそんなことはすぐに気にならなくなった。






 隣の席の四月一日くんはどうやら当たり前に私の隣の席に座るらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る