4月13日(水)14:30

 6限目。今日は体育館で部活動紹介だ。これは1年生のために行われるものだけれど、体育館には全校生徒が集まっている。一応、授業扱いということになっているようだ。


 だいたいの部活は部長と副部長がステージに立ち、活動内容などの発表をしている。大勢でパフォーマンスするのは、吹奏楽部や演劇部といった文化部辺りか。ちなみに私は写真部であるが、ただの平部員である私はステージに立たないで済んだ変わりに、何日か前に撮った写真をプロジェクターででかでかと表示された。そして部長は1年生たちに向け、その写真について細々と解説する。なんだこのいたたまれない感じは。


 それはそこら辺にいた鳩を適当に撮っただけなんだよ。羽ばたく瞬間と光のバランスがどうとか、そんな深く考えて撮った写真じゃないんだよ。というか部長。人の写真じゃなくて自分の写真を表示しろよ。こんなので新入部員は入ってくれるのか?




 まあとにかく、そんなこんなで部活動紹介はテンポよく進んでいく。どんどんやっていかないと終わらないからね。さて、次の部活はなんだろう。お、家庭部か。家庭部は裁縫をしたり料理をしたりといろいろやっているらしいが、写真部に時々手作りお菓子を差し入れてくれるので好きだ。多分、大量にお菓子を作ったときとかに、いろんな部活に配って回ってるんだと思う。詳しくは知らないけれど、とにかく美味しいので、家庭部から差し入れが来ると気分が上がる。


 大多数の部活と同じように、家庭部も部長と副部長がステージに立っている。そうして活動内容について説明しているわけだが、そんなことより二人の背後に姿勢良く立っている四月一日くんのことが気になって仕方ない。何やってんのあれ。あ、でもそういえば四月一日くんは家庭部とか言ってたっけ。勇者パーティーのインパクトが強すぎて忘れてたわ。部長も副部長も女の子であるということもあって、その背後にいかつい男子が微動だにせず立っているとかシュールすぎる。1年生の視線も明らかにそっちに向かってるし。


 しばらくそんな奇妙な状態が続いたのだが、やがて四月一日くんは部長の隣にすっと出てくると、手に持っていた特大の布をばさっと広げた。突然の奇行にぽかんとしたが、どうやらそれは部長の言葉に伴った行動であったらしい。部活説明、全然頭に入ってきてなかったや。申し訳ない。


 広げられた布を改めてじっくり眺めると、それはただの簡素な布ではなく、立派な刺繍が施されたそれはそれは美しい布だった。なるほど。これは確かに目を惹かれる。こんなすごいものを作れるなら自分もやってみたいと思う新入生も、きっと出てくることだろう。え、しかもそれ、四月一日くんが一人で作ったの? マジで?






 隣の席の四月一日くんはどうやら家庭部の中でも凄腕の部員らしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る