4月12日(火)12:50

 新学期早々ではあるけれど、今日は学力診断テストだ。春休み明けにテスト勉強なんて当然しているわけがないけれど、進学校とは無駄にテストが多いものである。学期末以外にも定期的に学力を測られるのだ。特に今年は受験生だから、これまでよりもさらにテスト回数は増えていくはず。はぁ。憂鬱だ。


 そういえば、四月一日くんって学力の方はどうなんだろう。変な言動が目立つせいでどうしても変人の印象が強いけど、この高校に入学している以上はそれなりに勉強はできるはず。え、あれで万が一私よりも頭良かったらどうしよう。ちょっと立ち直れないかもしれない。


 休憩時間、真面目に教科書を読んでいる様子を見ると、別に頭が悪そうには見えない。そんなことを考えながらなんとなくぼーっと四月一日くんのことを眺めていると、私の視線に気がついたのか、ふとこちらを向いた彼と目が合った。そして恥ずかしそうに目をそらされた。なんでだ。どこに恥ずかしがる要素あった。いかつい男子に恥ずかしがられても、特に可愛くないんだが。






「四月一日ぃー。テストどんな感じ?」

「社会は自信ある」




 5教科中4教科を終えた昼休み。クラスで唯一四月一日くんと普通に接している例の男子が、四月一日くんの前の席の人の椅子に座って一緒に昼食を取っていた。名前は……何だっけ。忘れた。私は一人、自分の席で母の手作り弁当を食べながら、なんとなしに隣の会話に耳を傾ける。本当は反対側の隣の女の子と一緒に食べたかったのだが、残念ながらその子はさっさと他のグループに属してしまった。悲しい。




「お前、社会……というか、歴史か。歴史はやたら詳しいよな」

「過去の出来事について知るのは面白いからな」

「それに国語も得意っぽいし、何でお前理系クラスいんの」

「えっ、そっ、それは」




 この高校では2年生時に、理系と文系に振り分けられる。そして彼の言う通り、このクラスは理系を希望した生徒の集まりだ。私は数学や理科が得意だから理系を選んだし、ほとんどの人が同じ理由でこっちを選んでいるはず。しかし、どうやら四月一日くんの得意科目は国語と社会であるようだ。めっちゃ文系じゃん。なんで理系選んだんだ。


 理由を問われた四月一日くんはというと、なぜかちらちらこっちを見ながらもじもじしだした。何。何なの。思わず四月一日くんの友人の方に目をやると、彼の方も同じく私の方を見ていた。そして何かを悟ったような顔をした。マジで何なの。ちょっとその意味深な感じ止めてくれよ。






 隣の席の四月一日くんはどうやら文系なのになぜか理系クラスに来たらしい。

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