エピローグ

 それから数日後。


「また今日も雨じゃん」


「またって言っても、あの日以来だよ?」


「……どの日だっけ?」


「ほら……紫乃が「私……双葉が大好き」って泣きながら言ってくれた日」


「は、はぁ⁉ モノマネすんな!」


 ポカっと双葉の頭にチョップがお見舞いされる。


「いったぁ~⁉」


「これも自業自得だからね」


 ふんっ、とむくれて顔を背ける。

 雨のせいか、揺れた黒髪が少し重そうだった。


「……やっぱり、雨は嫌い?」


 彼女の機嫌を伺いつつ訊ねる。


「まぁそりゃ、髪の毛がベタッとなるし……」


 そこまで言って、紫乃は歯切れが悪くなった。

 隣で双葉がニヤッと口角を上げる。


「でも、こうやって相合傘できるのは満更でもない、と」


「こ、心を勝手に読むな!」


 再びチョップをかまそうと腕を振り上げようとする。

 が、その腕に双葉が抱き着いた。


「なっ……ふ、双葉⁉」


 あざとさMAXの上目遣いで紫乃を見つめる。


「私はさ、毎日が雨だったらなって思ってるよ?」


 紫乃は再び双葉から目を逸らす。

 今回は頬が微かに染まっていた。


「…………わ、私だって」


「ん~、なんて? 聞こえなーい」


 耳に手を当て、もっと大きな声で言って欲しいと頼む。

 紫乃の頬がはっきりと色づいた。


「も、もうっ! 双葉ぁ~!」


 腕を振り上げようとするが、相変わらず双葉が抱き着いているせいで悔しげな声だけが狭い傘の中で響く。

 そんな幼馴染(こいびと)に双葉はニッと八重歯を光らせた。


     完

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【短編集】実は互いに好き同士な幼馴染が、思い切って「好き」を伝える話 春野 土筆 @tsu-ku-shi

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