第17話 巡りあい

 夏休み最初の登校日。担任の先生から夏休みの宿題や、日常生活での注意事項など簡単な説明を聞いていると、あっという間に帰りの時間となった。

 ただ帰りのホームルーム後では、クラスメートたちが教室に残り、一様に同じ話題を口にしていた。

「餅太郎、校庭にミステリーサークルが描かれていたんだって!」

「……ふーん、そうなんだ」

「反応悪いな、ミステリーサークルだぞ、ミステリーサークル」

 クラスの男が鼻息を荒く話しかけてくる。この男が言うには、夏休みの初日、早朝に犬の散歩をしていた近隣住民が、学校横の歩道を通った際に校庭の異常に気が付いたらしい——俺はその話を軽く相槌を打ちつつ、窓から校庭を見渡した。

「今見たってもう何も残ってないぞ」

「そうだな」

 怪訝そうな表情で俺の横顔をクラスメートが覗き込んでくるが、別に校庭を見ているわけではない。思い出しているだけだ。

 我に返った際には、クラスメートは教室内には既にまばらだった。ランドセルを背負って振り返ると後ろの席は空席だった。

 心のどこかから寂しい気持ちが訴えかけているようだ。

 教室後ろの飾られている花がつややかに光っていた。

「いずれ会えるさ」

 その花に向かって一声かけた後、扉を開けて教室を出た。今日は猛暑日だったが、何故か気持ちは清々しいものだった。

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月日は百代の祝賀にて「小学生編」 羽織 絹 @silkmoth

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