第2話 1/8の命綱
「今からみなさんには、デスゲームに参加してもらいます」
目が覚め、しかしまだ意識が
そんな状態の彼女の脳にも、その言葉は強烈に残る。「デスゲーム」なんて、趣味の悪い漫画や映画などの創作でしか、聞くことがない言葉だからだ。
「夢?夢じゃない?」
時間が経つにつれ、筋野の視界のモヤは晴れていく。それに伴って、筋野は他ならぬ現実の世界に身を置いていることを確信していった。
周りを見渡すと、どうやら、寺の本堂らしき場所で眠っていたことが分かった。中央には不動明王が
灯りは、五つばかりの松明のみであり、暗さゆえに、ここの明確な広さは掴めない。しかし、そんな中でも、不動明王の顔だけが不気味に照らされている。
「しょーもな。デスゲームとか今どき流行らんンゴwwwてかコレ勝手に帰ってええんか?」
そう声を上げたのは筋野のすぐ隣にいた、
筋野は節子の存在を知らなかったため、その声に瞬間驚いたが、目を走らせ、ほかのジムメンバーも散り散りではあるが、すでにこの空間に集まっていたことを知った。
「仮にもみなさんの命がかかったゲームですが……」
さっきの声だ。私たちがデスゲームにどうと言っていた声と同じだ、と筋野は思った。
それは男の声であり、少し清涼感のある声色から、10〜20代だと大体の見当がつく。しかし、依然として、声の主は姿を現さない。
「命がかかった!?wwwワイらの命が!?www首とか、パァン!って飛ぶんか?wwwほならやってみるンゴwww」
今までたんと静かだった空間だが、節子の煽りに何人かが便乗し、だんだんとガヤが大きくなっていった。
「……実際にやってみないと、盛り上がりに欠けますしね」
そう司会が言うと、パタンッと何かが落ちてきた。そのとき、直感か、節子の首筋が凍った。
「…あっ、あれはワイのおきにのプロテイン用のシャカシャカやないか……!」
弓を構えた仏像たちが、一斉に、節子のシェイカーに向かって矢を放つ。
【生存者 残り19名】
バタッ
何かが倒れる音がした。考えずとも、筋野は節子だと分かった。それもそのはず、誰だって、愛用のプロテインシャカシャカを粉々にされれば、ショックで息絶えてしまう。特にジム通いの私たちにとっては、他ならぬ極刑である。
ホンモノのデスゲームだ。
筋野は確信した。
「さぁ、みなさん!改めて、デスゲームに参加していただきます!」
司会の声には勢いが増し、今まで節子に便乗していた者も、まるで電源でも落とされたかのように、静かになった。
「それでは『1st ステージ』の説明をさせていただきます」
「中央に見えます、八本のロープ。あのうち一本は、次のステージに進むための鍵となっています。しかし、それ以外のロープを引いてしまうと、さきほどのように、大量の矢がロープを引いた方に飛んできますので、ご注意を」
そう言って、司会の声がしなくなると、周りはざわつき始めた。
「えっ、アタシらマジでこのゲームしないとダメなの?つーか、さっきの矢、あんなん来たら死ぬでしょ。ふつーに」
「ここ出口なくね?ガチやばいじゃん…」
「あッ!ロープッ!ほらアレ、真ん中のぶら下がってるやつ!アレ引けってこと?正解のヤツ当ててさ」
「でも間違えたら死ぬって、確実に。運ゲーじゃん…」
「制限時間みたいなやつってあんの?あったら早めにやらないとやばくね?」
「おいー、試しに誰か引きに行けって」
司会のいう通りなら、一本のロープを引くために、一人の命を賭けることになる。そして間違えれば、そこには確実な死が待ち受けている。
初手で1/8の確率を引くことができれば、犠牲者を出さずに済む。しかし、最大では七人もの犠牲が出る。
「確率1/8とか……マジ低すぎでしょ。こんなん誰も行かないってか、行けないって」
「は?確率はアタリかハズレかの1/2だろ。何テキトーこいてんのw数学に謝ってこいよ」
「お前が謝れ」
司会の言う八本のロープ。それはまるで絞首縄のように、重たく、中央に垂れ下がっている。
場の緊張が続き、誰もロープに触れないままで、十数分が過ぎていた。
しかしそのとき、ただ黙って、ロープを見つめ続けていただけの筋野が呟いた。
「あれさ………八本あるけど、誰か一人、あのロープ全部まとめてさ、一気に引いたらどうなるんだろう」
その言葉で場は凍った。
たしかにルール通りなら、全てまとめて引けば、確実に正解のロープを引くことができる。しかし、もう一つ確実なことなことがある。
「それ………引いた人絶対死んじゃうじゃん…」
【生存者 残り19人】
脳筋野郎パーティー @kishibe0225
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