脳筋野郎パーティー

@kishibe0225

第1話 発端

 まだ春先だというのに温度計の針は30度を示している。ここ数日は肌寒い日が続いたものだから、暑さに慣れていない体が言うことを聞いてくれない。こういった日はただ時間を消費しているだけのようで、どこか勿体無い気持ちになる。そんなことを考えながら、筋野きんのは毎日のトレーニングをこなしていた。


 筋野が通っているジム「マッスルマスター」は、体脂肪率10%以下の女性しか通うことが許されない、世界でも5本の指に入る有名な女性限定のジムである。体を極限まで鍛え上げた筋肉のエキスパートたちが集い、さらに高みを目指して日々トレーニングを行なっている。


「あら、そんなヘボヘボなスクワットしかしないなんて、筋肉がかわいそうだわ。」


 背後から聞こえてきた甲高い声に、耳が拒絶反応を起こしている。茂枝もえだだ。茂枝は私の中学からの幼馴染…いや、腐れ縁とでも言えばいいだろうか。嫌味ったらしい性格で、いつも私に文句を言ってくる。普段は地下アイドルとして活動しているらしい。一定数のファンがいるらしいが、なんであんな奴を好きになるのか私には到底理解できない。


「はい!じゃーいつものトレーニング始めていくよー!!」


 聞き慣れた威勢のいい声が聞こえてくる。鬼のテツカベこと、鉄壁てつかべコーチだ。スパルタだが、筋肉思いの優秀なコーチである。


「今日はとても暑いけど頑張っていこう!」

「そぉですねぇ〜頑張りましょぉ〜!!」


 茂枝はコーチの前ではいい子ちゃんだ。こいつといるといつもイライラして仕方がない。暑さのせいで余計に苛立ちを感じていたその時、「ピッ」と何か機械が作動する音がした。


「クーラーだ!」


 私は嬉しさのあまり声を上げてしまった。「クーラーぐらいではしゃぐなんて…」と言っていた茂枝も、嬉しさでどこかニヤけ顔だった。鉄壁コーチも「筋肉が喜んでいるねぇ!」と独特の喜び方をしていた。


 でも、誰がクーラーなんてつけてくれたんだろう…?そう感じた筋野は辺りを見回した。すると、突然みんながバタバタと倒れ出した。


「どうしたの!?みんな!!大丈夫!?」


 叫んでも返事はない。どうやらみんなは眠っているようだ。気づいた頃には筋野の体にも力が入らなくなり、その場に倒れ込んでしまった。


「助…け…て…」


 掠れた声でそう言い残すと、筋野も深い眠りについた。最後の一人が眠ったのを確認すると、クーラーはピタッと止まった。




【生存者 残り20人】


遠藤間えんどうま 芽衣めい

柿久かきく 毛娘けこ

筋野きんの クリスティーナ

黒幕くろまく あやめ

こざと れっか

真田さなだ・ベンジャミン・節子せつこ

鯖洲さばす プロティーン

堕天使だーくえんじぇる 宝石じゅえりー

近松門ちかまつもん 左衛さえ

鉄壁てつかべ 京子きょうこ

十億とおおく まどか

中山なかやま 金仁子きんにこ

火苛木ひいらぎ かえで

樋口ひぐち 百葉ひゃくよう

日余子間ひよこま 芽衣めい

堀江池ぽりえち れん

本出ぽんで 雷音らいおん

茂枝もえだ 萌碑もえぴ

毛知もうし らん

ろん ちゃー

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