第51話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ 23

「ああ、来ましたね?」

「来ましたね、じゃああ無い!」

 あんな、あんな好機二度と無いかも知れないのに!

 のんびりと出迎えたディランにルイの手前こそこそと怒る。

「?」

 ルイは首を傾げる。

 二人を連れてきたノアはもうフレイヤの元で明かりの魔法を指示どおりに設置するので楽しそうだ。

「!…そうか門限、…って今日は無いはずだろう?!」

 いつもならそろそろ寮の門限の時間だが、今日は祭りということで各自の自制に任せるという許可を貰ってある。

「ええ、ですから皆でお茶でもと。」

 庭園にはどこから用意したのか長卓が置かれ、お茶の用意とお菓子の山があった。男だけ、あるいは女だけならお酒という選択肢もあったが、両性共になので、健全にお茶らしい。

「!」

 ルイの瞳が楽しそう、と期待にキラキラ輝くのを見てテオは項垂れる。嗚呼。

 アイラがお菓子を盛り付けているのを手伝いにルイは行ってしまった。

「…時間は十分あったと思いますが。」

「…色々、あったんだよ。」

 話したところでディランは信じないだろうし、女性の死者のことは、ルイから固く口止めされた。

 両親から、誰にも言わないよう言い付けられていたらしい。二人だけの秘密だと浮かれたらノアも知っていると至極真面目に返されてしまった。

 その辺の事情はまた改めて聞かなければ。

 特にノアとのことは。


「テオ様、ディラン様、準備できました!」

 嬉しそうにルイが呼びに来る。

「うん、ああごめん手伝わなくて…。」

 落ち込んでいるうちに準備は終わってしまったらしい。

 ディランは先にお茶を淹れに行った。

「じゃあ行こうか。」

 腕を差し出すとすんなり掴まってくれる。

 ちょっとは距離が縮まった気がする。いや、だいぶか、まさかルイから…。ああ、もう少しだったのに。にやけそうな口元を隠したり落ち込んだりとテオは忙しい。

 くん、と腕を引かれた。

「次はちゃんとします。」

 こそっと耳打ちするとルイは離れていく。やや急ぎ足でぎくしゃくと。

 呆然と見送った。

 ああ、もう、本当、敵わないなあ。


 かぼちゃとおバケの大騒ぎ 終

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幻想恋愛~それぞれの溺愛事情~ @mohumohukurage

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