エピローグ
第44話 二度目の夏(2)
「やはり、
と
夏休み初日から、大変な事になってしまった。
「なぁ? これ、どうするつもりだよ……」
俺の
「わ、
と
確かに原因は俺なのだろうが、
「負けませんよ」
「あ、あたしだって……」
「わたしだって負けないぞ!」
今、俺の目の前では三人美少女が、それぞれ笑顔で向かい合っている。
(
どうやら、変なスイッチが入っているらしい。
この様子なら
(けれど、このまま放って置く訳にもいかないよな……)
以前は彼女達に同情している節があった。
そのため、平気でいられた。
けれど最近、
夜に二人きりとか、俺が我慢できない可能性が高い。
「で、
俺が質問すると、
「えっ⁉ どうしましょう?」
「てっきり、センパイが提案してくれるのかと……」
「わたしも経験がない」
どうやら、
いや、喧嘩の経験など無いのだろう。
三人とも俺が来るまで、人間関係は希薄そうだったので仕方がない。
唯一、菊花が姉と喧嘩をした事があるくらいだろうか?
(怒った菊花にヘコヘコ謝る
「
お
(事態がややこしくなるので黙っていて欲しいのだけれど……)
「こういう時は――」
と朔姫は
(暑いので早くして欲しい……)
「夏のチキチキセクシー水着対決じゃ!」
ドンドンドン、パフパフーっなのじゃ♪――と朔姫。
満足気に腰に手を当て、胸を張っている。
――拍手した方がいいのだろうか?
(いや、止めておこう……)
「チキチキの意味は分かりませんが……」
理解しました――と神月さん。
「水着……はっ! そういう事ですね!」
センパイを悩殺した方の勝ち――とは菊花。
勝機を見出したのか、口元に笑みを浮かべた。
「よく分からないが、水着という事は海に行くのだな!」
正直、スタイルの良さなら弥生が一番だろう。
彼女の性格を知らなければ、余裕とも取れる。
「甘いのう……勝つのは
メロメロじゃ♡――そう言って、朔姫は髪をかきあげるとセクシーなポーズで大きな胸を突き出す。確かに
――というか、さらりと参加しないで欲しい。
三人ともすっかり、朔姫の策に踊らされているようだけれど、大丈夫だろうか?
心配している俺に対し、神月さんは
「問題ありません、勝つのは『真の彼女』である私です!」
新しい水着も用意してあります――そう言って『王者の風格』を見せる。
自信がついたのだろう。出会った頃の彼女とは、別人のようだ。
(これでいいのかは、悩ましい所だけれど……)
「いいえ、神月センパイには悪いですが……」
勝つのは『未来の妻』である、あたしです!――と菊花。
高校生になり、女性としての魅力も上がっている。
(普段は大人しいのに、こういう時は積極的なんだよな……)
「フフン♪ 勝つのは『心の友』である、わたしだぞ!」
皆で海とは楽しみだな!――言葉通り、弥生はウキウキとした様子だ。
遊ぶ事しか考えていないらしい。逆にこういうのが一番、
(――というか、
「じゃあ、お昼を食べたら行こうか……」
――
そんな願いを込めて俺が
「おっ! 居た居た……」
「ほらね、ワタシの言った通りでしょ?」
と桜花さんと元書記で現生徒会長が現れる。
「ぬっ⁉
面倒事なら、お断りなのじゃ――と朔姫。
自分の事は棚に上げて、よく言うモノだ。
「お姉ちゃん⁉ これから皆で、センパイを悩殺するので邪魔しないでください」
菊花が余計な事を言う。しかも、誤解されそうな言い方だ。
「単に海に行くだけだよ……」
俺は訂正した。しかし、
「水着で勝ったら、
と弥生が追加で
ニャピーン☆――と桜花さん。猫耳と尻尾が生えた。
呪いはまだ、残っているらしい。便利に使っている。
「つまり、弟君を誘惑する女の戦いね! そういう事なら……」
お姉ちゃん達も参加するニャン☆――などと、とんでもない事を言い出す。
「そうだね……夏休みだし、少しくらい羽目を外してもいいだろう」
とは現生徒会長。眼鏡を直す。
止める立場だと思うのだけれど、俺の願いは届かなかったらしい。
「面白くなってきたのう♪」
朔姫が神月さんに
(どう考えても、状況が悪化している気がする……)
神月さんも困り顔で苦笑した。
やれやれ、去年の夏も大変だったけれど、今年の夏はもっと大変なようだ。
どうやら、俺の苦労はまだ続くらしい。
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