第38話 手を繋ぐのなら我じゃろ?
「やあ、『
俺は一人の少女に話し掛けられる。
どう見ても小学生の女の子だ。
ただ、その雰囲気だけは
いや、よく知っている――と言い
(
【
それは俺自身が感じている訳ではなく、周囲の様子から判断できた。
いつの間にか、時が止まったかのように
(まるで世界から音が消えたようだ……)
やがて、信号が赤から青に切り替わった。
「行かないのかね?」
そう言って、少女は俺に手を伸ばす。
(『
俺は少女の手を
【
やはり、少女は朔姫と同じ【神様】で間違いないようだ。
そのまま手を
「どうやら、
――
清楚な見かけによらず、意地悪な言い方をする。
同時に少女は
先程までは、周囲に人の気配は無かった
それがいつの間にか、普通に人の姿がある。
(さっきまでは、無人の街に居たみたいだったのに……)
「理事長……ですか?」
俺の質問に、
「そうだね――『
と少女は答える。確かに、その長く綺麗で真っ直ぐな髪は瑠璃色に見えた。
深い夜のような黒だけれど、光の加減によって青く輝く。
「綺麗な髪ですね……」
つい出てしまった俺の言葉に、
「ありがとう」
と瑠璃姫は返した。その横顔は嬉しそうに見える。
「ふふふっ♪ 楽しいモノだね」
朔姫が君を手放さない訳だ――瑠璃姫が
「世界が音に
と少女は
瑠璃姫は【
「少し違うかな……」
まるで俺の心を読んだかのように少女は答える。
俺は『次の質問を考えよう』としたけれど、
「
そんな俺の問いに――いいだろう――と少女。
けれど、少し考える
「いや、ボクの話を聞いてくれればいいよ」
この坂を上る頃には話し終えている
俺は黙って
いい子だね――瑠璃姫は優しい表情を浮かべると、
「彼女は少し勘違いをしているんだ……」
弥生の母である【神】が
どうやら【眠り】と【死】を勘違いしているらしい。
正しくは、そう思い込まされているようだ。
当然、弥生の持っている【加護】は【死】となる。
死ねない人間――そんな
(そりゃ、本人には言い
【死】を
その結論については納得が出来る。
長い間、人間に【死】を与え続ける存在。それに疲れたのだろう。
また、母親である【神様】が
周囲の人間は【死】に取り
安らかな眠りにつかせる――と考えれば救いを与える存在だ。
けれど『これから生きて行こう』とする人間にとっては真逆となる。
「一人の人間の少女を救ったが
「それでも、最後に人を愛する事が出来ました」
そして、愛されていた――と俺は返す。
この遣り方が正しかったのか、俺には分からない。
けれど、『哀れ』などという言葉だけで片付けては行けない気がする。
瑠璃姫は
その辺は朔姫と一緒のようだ。
「ありがとう――でも、問題はそこではないんだ」
弥生が『【死】の【加護】を持っている』という事なんだよ――瑠璃姫は語る。
『死ねない』という事は、この世界の
「つまり『死に
代わりに周囲の人間が死ぬ――そう告げられた。
「『【死】を振り撒く』と言い換えてもいい。だから……」
彼女の【加護】が消えるまで、君が守って上げてくれ――そんな事を頼まれる。
けれど『見捨てる』という選択肢はない。
それは誰かを犠牲にして、神月さんを救う事になる。
――彼女はそれを喜ばない。
俺の弱さは、もう俺だけのモノではないのだ。
(これが人と関わるって事か……)
「分かりました」
と俺は答える。
「
瑠璃姫は笑った。俺としては複雑な心境だ。
弥生は【眠り】と言っていた。
だけど、それは――【生】と【死】を繰り返していた――という事だろう。
――そんな人間を俺は救えるのだろうか?
「いや、俺は誰も救えてはいない……」
そもそも『誰かを救う』という発想が間違っている気がする。
「瑠璃姫、教えてくれ……俺は――」
そう言い掛けた時だった。
「あーっ!」
と声がする。この場で、そんな声を上げるのは朔姫しかいない。
どうやら、瑠璃姫と手を
「残念、時間切れだ」
と手を離す。同時に少女は朔姫の攻撃を
朔姫のかなり本気の手刀が、俺の手を直撃した。
「
思わず声を上げる俺。
瑠璃姫と
「まったく……どいつもこいつも、人の
と朔姫はプリプリ怒る。
再び『【
――朔姫の【神気】とで
「お
手を
(やれやれ……)
【神様】という存在は余程、
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