第36話 今日、二回目なんだけど……
それにしても、昨日と今日で
彼女が俺に対して『心を開いてくれた』という事だろうか?
色々と質問するには丁度いいのかも知れない。
俺の提案で『ゴミを拾う役』と『袋に詰める役』を交互に行う。
これでどちらかは休みながら、作業を行える
彼女が
「弥生はどういう【
と
周囲の連中が作業に集中している事を確認すると、
「【眠り】の【加護】だぞ……」
そう言って、俺に耳打ちをする。
――それは
「へぇ、
と俺は
実際、
そんな俺の言葉に気分を良くしたのか、
「わたしは小さい頃、大病を
苦しくて眠れない日々が続いていたのだ――と語り出す。
「その様子を見兼ねた【神】の内の一人――つまり母上がだな……」
わたしを眠れるようにしてくれたのだ――そう言って
想定していたよりもキツイ過去に、俺としてはどう返すべきか悩んでしまう。
「だから、小さい頃は寝てばかりだったな……」
何度も手術をして、やっと元気になったのだ!――と弥生。
(それで、こんなイベントでも楽しそうにしているか……)
ゴミ拾いの最中でなければ、俺は『彼女を抱き締めていた』かも知れない。
どうやら、彼女の人生の大半は
加えて、眠ってばかりの状態が続いたらしい。
精神的に成長していないのは、その
身体だけは成長したけれど『心は幼いまま』と言う訳だ。
「【眠り】を
元気になって良かったよ――と俺は彼女の集めたゴミを袋に入れる。
大きいゴミは
「
と弥生に
一瞬、どう答えるべきか迷ったけれど、
「俺は【
と素直に答えた。すると、
「おお、
弥生は目を輝かせる。
「わたしと一緒に組織の
と勧誘されてしまった。
正直、金欠のため――給料が
俺としては『人間社会で生きる上で欠陥だ』と思っていた自分の欠点が受け入れられるのも魅力だった。けれど、
「今は
そんな俺の気持ちが伝わったのか、
「そうか……」
と弥生は残念そうに
悪い事をしたかな?――と思わない訳でもない。
しかし
挽回する
「もう少しで、お昼だから頑張ろうか?」
そんな俺の言葉に、
「うんっ!」
と弥生は
大量に流れ着いていた砂浜のゴミも、いつの間にか綺麗に片付いている。
皆が協力したお陰だろう。
確かに、ゴミを散らかすのも人間だけれど、力を合わせて解決できるのも人間だ。
弥生が多くの人と関わって、人間らしさを取り戻す事を俺は願った。
◇ ◇ ◇
「ほら、そんなに食べると動けなくなるよ」
と俺は弥生に注意をする。
お昼になり、俺達は生徒会のメンバーと
(海が近いから、
――
焼いていた貝が開いて海水を吐き出すモノだから、女性陣が――キャーッ!――と騒いだ。こういう場合、若い男子は
いつの間にか、火の調整役を俺がやる事になっている。
遊びのつもりだろうか?
「それでは食べられないぞ?」「そうね……」
弥生と書記の先輩が交互に、俺に食べ物を食べさせてくれた。
神月さん達にいつも――あ~ん♪――とされているため、途中まで違和感を感じなかった。生徒会長達に――モテモテだな!――と
気分転換に他のグループを観察すると、オジさん連中は早々に酒を飲んで駄弁っていた。
(これは使い物になりそうもないな……)
子供たちは
砂浜なので、転んでも問題ない。
一方で弥生も大分、
心配していたのだけれど、その心配はないようだ。
彼女が美人だからなのだろうか?
それとも、転入生だからなのかも知れない。
生徒会の連中は彼女を持て成していた。
(もしかして……)
――【
可能性としてはありそうなので、朔姫にメールをする。
すると
どうやら、俺の質問には答えてくれないらしい。
しかも、今日の夕飯は
あの【神様】にも困ったモノだ。
(今日、二回目なんだけど……)
――でも、神月さんが喜ぶかも知れない!
俺は考え方を切り替える事にした。
それに、朔姫に逆らっても良い事はないだろう。
もしかしたら、肉の差し入れがあるかも――いや、違った。
弥生の事について、
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