第35話 許可は取ったぞ!
「
俺はそう言って、スマホを取り出す。
連絡先さえ交換する事が出来れば、後はどうにでもなるだろう。
「分かった!」
と
「後は遊ぶ約束でも、すればいいと思うよ」
俺の言葉に、吹常さんは目をキラキラと輝かせる。
どうやら、今まで友達が居なかったようだ。
「
と教えておく。
梅雨も明け、本格的に観光客が来る前に島民達で行うのが習慣となっている。
俺としても――参加する事で『歴史研究会』の部としての活動にもなるだろう――と考えていた。
そのため、
(残念ながら、
あの二人は人前に出ると影響が大きい。
『
と言っていたけれど、多分ゴミ拾いでは、そういう雰囲気にならないだろう。
「そうか……じゃあ、また明日だな!」
と吹常さん。明日?――と俺は首を
一方で、
スーツ姿の女性の
「じゃあね、ふき……
俺が声を上げると弥生は立ち止まり、振り向いた。
そして、嬉しそうな表情で再び大きく手を振る。
(やはり、子供みたいだ……)
俺は弥生の姿が見えなくなるまで、軽く手を振り見送った。
「センパイ♡」
と声を掛けられる。菊花だ。
「綺麗な方でしたね」
そう言って
「良かった、行き違いにならなくて……」
そんな俺の
「そうですね」
と同意した後、素早く横に回り込むと腕を
いつもだったら、断ってから俺の横に並ぶのだけれど、今日は様子が変だ。
「どうしたんだ?」
俺の問いに対して、
「
センパイが浮気していると!――と菊花。
言い掛かりである。
(朔姫め……)
――
どうやら『ごっこ遊び』は次の段階へと進んだようだ。
完全に俺で遊んでいる。
(これは帰ったら、離婚裁判でも始まりそうだな……)
別に結婚している訳ではないので、納得が行かない。
「大丈夫ですよ……」
あたしは信じていますから♡――とは菊花。
「そもそも、センパイが女好きであるのなら……」
あたしも苦労はしません――などと
(
――みたいになっていないか?
まぁ、菊花に『誤解されるよりはいい』と思う事にする。
「それより、帰ったら裁判ですね」
魔女裁判なら任せてください!――菊花は意気込む。
その裁判だと、菊花が処刑されそうなのだけれど、俺は黙っておく事にした。
朔姫対策として、高い方の『アイス』を買って帰るのが良さそうだ。
(いや、神月さんと菊花の分も必要だな……)
――出費がかさむのは勘弁して欲しい。
これは夏休みに入る前に一度、父さんに会って
◇ ◇ ◇
翌日の朝。天気予報通りの快晴だ。
正直なところ、暑いので曇りの方が
(菊花に頼めば、天気ぐらい変えてくれそうだけれど……)
一瞬、そんな考えが
今日は土曜日で学校が休みなのだけれど、砂浜の清掃に来ていた。
梅雨明けのこの時期、島民達にとっては恒例の行事らしい。
参加しているのは旧市街の人が
砂浜を見渡すと確かに色々な漂流物が散乱していた。
これでは観光客だけではなく、島民も利用を
町内会長の
俺は生徒会のメンバーと一緒にゴミ拾いを行う。
また、それと同時に
――
昨日、余計な出費がかさんだ
ボーッとしていたようだ。俺を心配したのか、
「どうしたのだ?
と
どういう訳か昨日、別れた後に連絡が入った。
俺は今日の事を詳しく伝える。
すると早速、砂浜へとやってきた――という訳だ。
「許可は取ったぞ!」
清掃が終わった後――
きっと、それが楽しみなのだろう。
教えた通り、服の下に水着を装着の上、帰りの着替えも持ってきているようだ。
「弥生と一緒だから、嬉しくてね」
正直なところ、思っていたよりも大変な作業で辟易としていた。
急だったので『断られるかも』とも思ったけれど昨夜、生徒会長に弥生が参加する旨を連絡した。すると――是非に!――と喜んでいた様子だったのが、
(こういう事だったようだ……)
――これなんか、完全に日本のゴミじゃないよな?
先程から、あからさまに日本語ではない表記のモノが多く見付かった。
(砂浜でこの様子なら、海の中はどうなっている事やら……)
俺が心配しても仕方のない事だけれど、海の仕事をする関係者なら『現実逃避もしたくなる』というモノだ。
「そうか!」
頑張って、早く終わらせるぞ!――と弥生は張り切る。
しかし、体力には限界がある。
「いや、一生懸命やっても『ばてる』から、適度に頑張るようにしないと……」
遊ぶ体力が残らないよ――と忠告する。
「そうだな!」
そう答えた弥生は、明らかに子供っぽい。
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