第32話 その時は一緒に来てくれますか?
「教室に戻って、タオルを取ってくるよ」
と俺は言ったのだけれど、
(俺としては目のやり場に困るのだけれど……)
なるべく表情には出さないように、平常心を装いならがら、
「風邪、引かないようにね」
と告げ、俺は再びホースを持つ。
神月さんが水道の蛇口を
本当はもう少し、涼しくなってからの方がいいのかも知れない。
俺はホースの出口を指で
すると勢いよく水が飛び出す。
その
「わぁーっ!」
と神月さんが
「わぁーっ! ではないわっ!」
と
「
「別に掛けようと思って掛けた訳じゃないけどね」
俺は無駄と知りつつも訂正した。
「そんな事を言って、
分かっておるぞ!――と朔姫。
(邪魔しないで欲しい……)
俺は朔姫に水が掛からないように、ホースを左右へ揺らす。
すると彼女は、それに合わせて飛び
(
「ちょっ、危ないよっ!」
俺が慌ててホースの向きを変えると、
「キャッ!」
と短い悲鳴が聞こえる。
どうやら、やってしまったようだ。
俺は声のした方向へ恐る恐る視線を向ける。
そこには水を
「ごめんねっ!
俺は吹常さんに謝ると水遣りを一旦、
そして、鞄ごと持ってくるとタオルを渡す。
「もう、朔姫の
一緒に謝ってよ――俺がお願いすると、
「ふんっ!
朔姫はそう言って、そっぽを向く。
「
仕方なく注意すると――ぐぬぬっ!――と
「
――ひょっとして、俺を誘惑していたのだろうか?
となると『タオルを持ってこなくていい』と断った理由にも説明が付く。
しかし、神月さんは首をブンブンと横に振った。
(まぁ、それはそうだろう……)
一方、吹常さんは慌てて胸を隠した。
どうやら、朔姫の
◇ ◇ ◇
これ以上、学校に
そんな訳で今、俺達が居るのは寮の食堂だ。
(談話室もあるのだけれど……)
食堂の方が広くて明るく、風通しも良い。
この季節は特に過ごしやすい空間のため、
吹常さんに謝った所――寮に行きたい――と言われた事も理由の一つだ。
天気がいいため、洋服は
しかし、俺がやった事には変わりない。
(元々、寮へは案内するつもりだったので、お
取り
「高いヤツは
と朔姫。はいはい――と俺は返事をしておく。
吹常さんを連れて来た理由については、もう一つある。
色々と
朔姫に
これを
(答えてくれるかは分からないけど……)
俺はカップに入った高い方のアイスを朔姫に渡す。
「うむっ! ちょっと溶かしてから食べるのじゃ♪」
そう言って、彼女は水道で表面の
そして、アイス専用のスプーンを用意した。
「おっ♪ 一口、食べるかのう?」
と朔姫。どうやら――あ~ん♪――をしたいらしい。
お客様である『吹常さんが居るから』という理由で俺は断る。
「うーん、残念じゃ……」
そう言って彼女は落ち込む。
こういう態度を取るから、憎めないので困る。
(そうだ、
今日は『お姉ちゃんの様子を見てきます』という事で、寮には居ない。
俺としては一度――ご両親に挨拶しに行こう――と思っていた。
この間、その事を菊花に告げたのだけれど、
「センパイ、お話したい事があります」
と逆に相談されてしまう。どうにも、菊花が【魔女】の力に目覚めた事で、本当の記憶を取り戻したようなのだ。
彼女の話によると、先代の【魔女】である母親は彼女達を捨て『島を出て行ってしまった』という事になっていたらしい。
しかし、それは魔法により書き換えられた――
今までは記憶が
記憶を取り戻した今となっては『
菊花は真実を知る
『センパイ……その時は一緒に来てくれますか?』
などと言われてしまえば、断れる訳もない。
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