第20話 私も知りたい
「ただいまー」
そう言って、寮へ戻ってきた俺に対し、
「うむっ! 遅かったのう……」
と
「ごめん、
そう言った俺に対し、目を細め、じーっと視線を投げ掛けてくる朔姫。
最初は帰りが遅くなったため『不機嫌なのかな?』と思っていた。
しかし、彼女は
「ちゃんと手は洗うから……」
俺は食材の入った袋を一旦、床に置くと手を洗った。
けれど、朔姫が嫌そうな顔をしていたのは、それが理由ではなかったようだ。
――いったい、どうしたというのだろう?
「お
料理の手を
てっきり『怒られる』と思っていた俺としては調子が狂う。
(まだ、彼女の事を理解できていないらしい……)
そんな風に反省する程度には、
「うむっ! 見せてみるのじゃ……」
返事をするよりも早く、彼女は俺の左手を取る。
(相変わらず、強引だな……)
「やはり――【魔女】の【呪い】じゃな」
朔姫はそう
心当たりはあるけれど『
しかし『朔姫が
「どんな【呪い】なの?」
俺の質問に対し、
「『運命の赤い糸』じゃな」
と朔姫。それって【呪い】なのだろうか?
正直、もっと危ないモノかと思っていた。
『死ぬ』とか『病気になる』とか、そういう
「不完全じゃが、完成すると厄介じゃのう」
彼女の話によると【愛】により、相手を拘束する【呪い】らしい。完成すると相手の言う事を無条件に信じてしまい、相手の
「確かに、それは【呪い】かもね……」
「【魔女】のお願いを聞いたり、【魔女】の作った物を口にしたり、【魔女】と触れ合ったり――しておらぬであろうな?」
そんな朔姫の言葉に俺は固まる。
「ぜ、全部しました……」
隠しても仕方がないので、俺は正直に話す。
「まぁ、相手にその気がなかったようじゃから、良かったようなモノの……」
完全に操り人形にされておったぞ――と朔姫。
「こんなモノ、こうじゃ!」
そう言って、手でチョキを出すと俺の左手小指の辺りで――チョキンッ!――と
「これで大丈夫じゃ!」
「あ、ありがとう」
と俺はお礼を言う。多分、神月さんの症状が改善しないのも、朔姫が俺と神月さんの仲を邪魔している
そう疑わずにはいられない。
「まぁ、余計なモノも切ってしまったがのう……」
朔姫はそう言って、俺から視線を
――ちょっと、待って欲しい。
「それって……」
今度は俺が彼女に対し、じーっと見詰める番だ。
「か、彼女ならほれっ!
必要ないであろう!――と朔姫。
やっぱり、神月さんの症状が改善しないのは彼女が原因らしい。
俺は朔姫の頭を優しく
「そうだね」
と
「お、怒っておるのか?」
朔姫は申し訳なさそうに
俺は冷蔵庫の扉を閉めると、
「そんな事ないよ、感謝してる」
そう返した。俺の言葉に朔姫は――ホッ――と胸を
そもそも、俺は
彼女を
それよりも気になるのは、
「でも、
俺は疑問を口にする。その言葉に、
「お
そういう所が好きなのじゃが――と朔姫。
だけど、
「人間なぞ、心の中では
そんな忠告もしてくれた。俺は苦笑しつつ、
「それでも『人を信じたい』と思わせてくれたのは朔姫だよ」
と返す。すると、
「お
やれやれ、といったお
実際は喜んでいるように見える。
「まぁ、お
と朔姫。
「実は今日、菊花が倒れていたから家まで送ったんだけれど……」
俺は説明しようとしたが、
「分かっておるわ! 菊花でなければ、もう一人の方じゃな……」
いや、一匹かのう?――朔姫のその言葉に、俺は考えた結果、
「もしかして、お姉ちゃん?」
黒猫の事を思い出す。朔姫は――うむっ!――と
「奴も【呪い】であの姿をしているのじゃろう」
菊花を利用して【呪い】を発動させたようじゃな――朔姫は腕を組んだ。
彼女の話によると、あの黒猫は元人間で菊花の実の姉らしい。
「
朔姫は笑いを
「朔姫?」
そんな彼女に対し、俺が不思議に思って声を掛けると、
「なぁに、気にするでない……それよりも――」
「私も知りたい」
いつの間にか、神月さんも食堂に来ていた。
(この二人も相当、危険な気がする……)
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