第11話 これで我にも彼氏が出来たのじゃ!
「上手く行ったようで
と
「「……」」
互いに
俺はもう一度、手を差し出してみる。
すると、
指が触れるか触れないかの距離で恥ずかしくなり、互いに手を引っ込める。
「
そう言って、
まあよい、中へ入れ――と俺達を
「あっ! 食事じゃから、手は洗うのじゃぞ!」
一度、立ち止まり、そう告げると食堂へ戻って行く。
夕飯の準備が出来たので、神月さんを呼びに行った事をすっかり忘れていた。
(少し
食事では仕方がない。俺は大人しく
俺達は席に着き、食事を始めたのだけれど、
「「……」」
会話が続かない。
そもそも、神月さんは話す方ではないし、俺も得意な方ではなかった。
「
気持ち悪いのう!――とは朔姫。
どうやら、俺達の様子が
「付き合っとるんじゃから、手ぐらい
そう言って、朔姫は溜息を
「つ、付き合っている訳では……」
と神月さん。確かに、お互いの気持ちは伝えた。
けれど、『付き合う』という確認は出来ていない。
「そうだな……もうちょっと、
俺はそう言って頬を
互いに顔を
朔姫は心の底から――うわぁー、こやつら面倒臭い――という顔をする。
「仕方ないのう……ほれ『あ~ん』するのじゃ」
朔姫は
恐らく、それも計算済みなのだろう。
「ほれ、手が疲れる……」
早よせんか!――と言われたので、仕方なく俺は口にする。
「
そう聞かれたので、俺が
「えへへ♪ 嬉しいのう……」
朔姫は両手を頬に当て、照れた仕草をする。
いったい、
「なぁに、分かっておる!
と朔姫。
(いきなり、
違うよ――とばかりに、俺は手と首を振る。
神月さんもコクコクと
「お
ならば三人で付き合えばよい!――と意味不明な事を言い出した。
「遠慮します!」
と俺。神月さんも、
「違う……」
と声に出す。しかし、
「これで
全然、聞いてはいないようだ。
「思い起こせば、人を別れさせる事はしてきた……」
だが、誰とも付き合った事はなかったのう――と急に
「人から必要とされなくなった【神】は、いつ消滅しても
しかし、『消滅』と言われると断りづらい。
ハッキリ言って――俺達の邪魔をしたいのではないか?――と
(いや、そう言えば『縁切り』の神様だったような……)
思い起こせば、俺と神月さんが『いい雰囲気』になると、必ず現れるような気がする。
「彼女が一度に二人も出来て良かったのう♡」
と朔姫。俺は困った顔で神月さんを見たのだけれど、彼女も同様に
本来は訂正すべきなのだろうけど、彼女の協力がないと神月さんの力を消す方法が分からない。
今は機嫌を
俺と神月さんは互いに
「
(こうして、俺に彼女が二人できたのだけれど……)
どう考えても、苦労する未来しかないようだ。
◇ ◇ ◇
翌日――俺は早起きをして、寮の庭を確認した。
神月さんを探す
日当たりも良さそうだし、水道の蛇口もある。
まだ五月なので草もそれ程、伸びてはいなかった。
俺は寮に戻ると朝食の際に、朔姫へ庭の使用許可を取る。
元々、使われてはいないので『好きに使ってよい』との事だった。
「良かったですね」
と神月さん。午前中は『草むしりをする』と伝えると、手伝いを申し出てくれた。
朝食を取った後、休憩をしつつ、道具を準備する。
神月さんは再び、麦わら帽子を貸してくれた。
どうやら、海に囲まれた島暮らしでは、こういった帽子が必需品らしい。
『くれる』というので、俺は遠慮なく
彼女と協力して、手早く草刈りを済ませる。
伸びている草を鎌で狩り、シャベルで根を掘り起こす。
単純な作業だけれど、屈んでいるため腰が痛くなる。
狩った草は神月さんに袋へと
最初は草に隠れていたけれど、
元が病院だった事から、患者達の
「ほほう! なかなか
恋愛は奥手なようじゃがな――と一言多い朔姫。
どうやら、冷えた麦茶を作って、持ってきてくれたようだ。
俺達は
「やはり、ダーリンと一緒だと【
と朔姫。『ダーリン』とは俺の事だろうか?
だとしたら止めて欲しい。俺がお願いすると、
「大丈夫じゃ! 『ハニー』と呼んでくれて構わんぞ♪」
と返される。全然、大丈夫ではない。
もし、学校でそんな呼び方をされた場合、色々と面倒な事になる。
――いや、それよりも【
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