ケマリオのぼうけん

青波星来

第1話

 サッカーボールのケマリオは、とあそぶのがだいすきです。

 ケマリオは、いつもけられてばかりで、いやになっちゃうときもありますが、とんでいくと、ごろうたがしっかり、うけとめてくれます。ケマリオがめんをころがっていくと、ごろうたがだき上げてくれます。

 そう、ごろうたはゴールキーパーなのです。

 ごろうたはサッカーをしおわると、いつもケマリオをやさしくふいて、きれいにしてくれます。とてもきもちよくなるので、ケマリオはごろうたがだいすきです。

 ある日、いつものようにみんながケマリオでサッカーをしていると、ケマリオはいつもより大きくたかく、サッカーコートのそとまで、ずっととおくへ、とんでいってしまいました。

「うわぁっ! 空までとんでいっちゃうよー」

と、ケマリオはさけびました。

 ケマリオはコートのそとへとびだして、ずっとむこうのひろばにおちて、そのままコロコロころがりました。

 コロコロコロコロ、どこまでも ころがっていきました。

 いつまでたっても止まらないので、ケマリオはしんぱいになって、ごろうたにたすけをもとめて、さけびました。

「ごろうたー! たすけにきてよー」

 すると、ケマリオは大きなネットにひっかかり、やっと止まることができました。ケマリオはひとあんしんして、ふぅーっと大きく、いきをはきました。

「きみ、そんな大きなからだをして、じゃまだよ。さっさとコートから出てくれない?」

と、ケマリオよりも小さなからだをしたテニスボールが、ケマリオにいいました。ケマリオがやってきたのはテニスコートの中でした。

「きみこそ、そんな小さなからだをして、ここで、なにをしているの?」

と、ケマリオはテニスボールにききました。

 ケマリオはほかのボールにあったことがなかったので、きょうみしんしんで、ききました。

「じゃあ、いまから見せてあげるから、コートのそとから見ていてごらん。」

 そこで、ケマリオはいわれたとおりに、けんがくすることにしました。

 バシッ! ポーン、バシッ!

 ケマリオは、とてもおどろきました。びっくりぎょうてんです。

 なんてはげしく、ラケットでうたれているのでしょう!

 ものすごいスピードで、テニスボールはコートに うちつけられていました。そして、コートの中を、いったりきたりしています。

「そんなにおもいっきりたたかれて、いたくないの? なんだか、かわいそうになっちゃった。」

と、ケマリオはテニスボールにききました。

「そうでもないよ。おもいっきりうってもらうと、はやくとんでいけるからね。それに、ネットにひっかからずにうまくとべたら、すごくたのしいよ。」

「へぇー、そうなんだ。」

 ケマリオはテニスボールのはなしをきいて、ケマリオもこんどから、けられてばかりでも、たのしもうとおもいました。

 ケマリオはうたれっぱなしのテニスボールとちがって、けられたあとは、ごろうたがゴールで まっていてくれるからです。

 ごろうたのことをかんがえたら、ケマリオははやくサッカーコートにもどりたくなって、テニスボールとおわかれをすることにしました。

「ねぇ、おにいさん、ぼくをサッカーコートにむかって、なげてください。」

 ケマリオはテニスボールでテニスをしていたおにいさんにおねがいして、なげてもらいました。

 ケマリオはふわっとうかんで空をとび、めんにちゃくちして、ころがりました。

 コロコロコロコロ、どこまでもころがっていきました。

「あれぇー、どんどん、ころがっていくよ!」

 どんどんどんどん ころがって、ケマリオはべつのひろばに、たどりつきました。

 コロコロコロコロころがって、ひろばの草にひっかかり、やっと止まることができました。

 ケマリオはひとあんしんして、また、ふぅーっと大きくいきをはきました。

「きみ、そんな大きなからだをして、じゃまだよ。さっさと やきゅうじょうから出てくれない?」

と、ケマリオよりも小さなからだをした、やきゅうボールがケマリオにいいました。ケマリオがやってきたのは、やきゅうじょうの中でした。

「きみこそ、そんな小さなからだをして、ここで、なにをしているの?」

とケマリオは、こんどはやきゅうボールにききました。

「じゃあ、いまから見せてあげるから、すみっこで見ていてごらん。」

 そこで、ケマリオはいわれたとおりに、けんがくすることにしました。

 びゅーん! カキーン! ポーン、ゴロゴロゴロ。

 ケマリオはとてもおどろきました。びっくりぎょうてんです。

 なんてとおくまでバットでうたれているのでしょう!

 ものすごいスピードで、やきゅうボールは空にとばされていました。そして、めんにおちたあとはひろわれて、またとおくに、なげられていました。

「そんなにとおくまでとばされて、かなしくないの? なんだか、かわいそうになっちゃった。」

と、ケマリオはやきゅうボールにききました。

「そうでもないよ。すごくとおくまでとべたら、みんなよろこぶからね。それに、フェンスのむこうまでとんでいけたら、ヒーローになれるんだ。」

「ふぅーん、そうなんだ。」

 ケマリオはやきゅうボールのはなしをきいて、ケマリオもこんどから、とおくにけられても、たのしもうとおもいいました。

 ケマリオはとおくにいくほどよろこばれるやきゅうボールとちがって、なげられてもけられても、ごろうたがケマリオを、だきとめてくれるからです。

 ごろうたのことをかんがえたら、ケマリオはまた、はやくサッカーコートにもどりたくなって、やきゅうボールとおわかれをすることにしました。

「ねぇ、おにいさん、ぼくをサッカーコートにむかって、なげてください。」

 ケマリオはやきゅうじょうでやきゅうをしていたおにいさんにおねがいして、なげてもらいました。

 ケマリオはふわっとうかんで空をとび、くるくるまわりながら、とんでいきました。

 どんどんどんどん、どこまでもとんでいきました。

「あれぇー、どんどん、とんでいくよ!」

 どんどんどんどん、とんでいって、ケマリオはべつのひろばに、たどりつきました。

 どんどんどんどん、とんでいって、ひろばの木のえだにひっかかり、やっと止まることができました。

 ケマリオはひとあんしんして、また、ふぅーっと大きくいきをはきました。

「きみ、そんな大きなからだをして、じゃまだよ。さっさと木から、おりてくれない?」

と、ケマリオよりも小さなからだをしたカラスが、ケマリオにいいました。ケマリオがやってきたのは木の上の、はっぱのしげみの中でした。

「ここは、カラスくんのいえなんだね。とつぜんやってきて、ごめんなさい。」

と、ケマリオは木にとまっていたカラスに、あやまりました。

「ねぇ、カラスくん。ぼくもここからおりて、ごろうたのところへかえりたいのだけれど、どうしたらかえれるのか、わからないんだ。」

 ケマリオはなんども、ごろうたのいるサッカーコートにもどろうとしたのですが、こんども ちがうしょにたどりついてしまい、かなしくなって、そういいました。

「かえりかたが、わからないだって? へんなことをいって、ここにいすわろうとしてもダメだよ。この木の上は見はらしがよくて、さいこうだからね。

 でも、ここは、ぼくのなわばりなんだ。ごちゃごちゃいってないで、さっさと、かえってくれよ。さぁ、さぁ。」

 カラスはそういって、ケマリオのせなかをつついて、せかしました。

「うわぁっー! 下におちちゃうよー」

 と、ケマリオはさけびました。

 ケマリオは木のえだからすべってめんにおちて、そのままコロコロころがりました。

 コロコロコロコロ、どこまでもころがっていきました。

 また、いつまでたっても止まらないので、こんどこそ、しんぱいになったケマリオは、ごろうたにたすけをもとめて、さけびました。

「ごろうたー! かえりたいよー」

 すると、ごろうたのこえが、きこえました。

「ケマリオ、やっと見つけた!」

 ケマリオはふわっとうかんで、ごろうたのうでの中に、だきかかえられました。

「ずいぶん、さがしたよ。どこにいっていたの? もう、おそくなっちゃったから、いっしょにかえろう。」

 ケマリオはひとあんしんして、ふぅーっと大きくいきをはきました。こんどこそ、ほんとうにひとあんしんです。


 家にかえると、ごろうたは、やっともどってきたケマリオをやさしくふいて、きれいにしてあげました。

「あぁ、きもちいい。ごろうたのそばが、いちばんだ。」

「ケマリオ、なんだかきずができているみたいだね。いったいどこで、なにをしていたの?」

 なつかしいこえ、やさしいごろうたの手でした。


 やっともどれて、よかったね、ケマリオ。

 ぼうけんは、おしまい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ケマリオのぼうけん 青波星来 @seira_aonami_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ