最後に


 開け放たれた入り口から、計8つ――4人ぶんの眼球がのぞいていた。


 そのいずれもが、厳冬期のサダイの尾根のように凍てつき、シァドの刑場を満たす闇のように、深い暗黒をたたえている。


 ――ルゥルの言葉通り、大陸が戦火から解放されるということで、バッシュは平和に惚けていたらしい。いくら彼女たちが手練れぞろいとは言え、こんな近くに、4人もの監視者がいて、勇者の五感が危険を察知し損ねるとは。


 どうやら、一部始終を見られたようだ。

 アイも、エルトも、マウサも、そしてレェンも、表情がない。


 得体の知れないおぞ気が背骨を貫き、バッシュは全身総毛立った。

 浮気の現場を抑えられた夫というのは、こんな気持ちになるのだろうか。


 彼女たちは何も言わず、示し合わせたように、そろって部屋に入ってくる。


 本能的な危険を感じ、バッシュは長椅子を降り、後ずさった。


「えっ何!? ちょ、何か言っ……何これ怖い! 怖い怖い怖い待って待って待って。いやだって……違うよ!? 何か誤解し……何で鍵をかけるんだよ!? 何でにじり寄っ――落ち着こう! ね!? みんな一旦落ち着こう! 落ち着いて俺の話を――君は何を出してんのレェン!? 駄目だよ、こんなところで! ここ聖地だから! そんなのここでぶっ放しちゃったら世界が終焉る――ちょ、止めてくれないのお師匠!? 何で協力し……ルゥルさーん! ルゥルさん、釈明! 釈明して! ルゥルさんてば! これ止めて! たすっ……助けてルゥルさあああああん!」


 ――以上が、勇者バッシュが引き起こし、決着させた騒動の、てん末である。







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ヤミにのまれしモノたち! ~史上最強と謳われし最後の勇者バシュラムが魔王アズモウドとの婚約に至った経緯とその後の修羅場について~ 海冬レイジ @ans_4_ex

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