第6話<<邂逅>>②
勉強など、
いつもより早めに着いたとは言え、残されたタイムリミットはたったの十分。それで充分と言う人もいれば、無理と言う人もいる。当初、
思わず
「まだ諦めるのは早いよ。もうちょっと頑張ろうよ」
「牧ちゃん、そう言ってくれるのは大変嬉しいんだけど、もう駄目みたい」
そう、春花は
一年生の時に、春花がたまたま得意な範囲で小テストが行われた時、鉄郎を
「牧ちゃんも、最後まで勉強しなよ」
「春ちゃん……」
先生とは時に、
遅れる事なく扉を開き、オジさん先生が入って来たかと思えば、次の
「小テストだぞ。自分の席に戻れ」
春花は心の中で「ひぃー」と
「その前に、お前らに言う事がある」
クラス内の同級生は皆、顔をハテナにした。
「今日からウチに転校してきた
扉からスタスタとやって
「石暮翔一です。よろしくお願いします」
ボサボサの髪の毛、程良く整った顔立ちではあるが、視線はおもむろに下を向いていた。なんと言ってもその声。必ず聞いた事がある、どこか
しかし、それがどこで見聞きしたのかを思い出せない。思い出せず、もどかしく感じながらも、
「アンタ、見た事ある」
立ち上がりつつ、声のトーンなんてものも気にせず、彼女自慢の大声を使った。ガヤガヤと
「……翔一君、知り合い?」
「……いえ、全く」
何とも
近くの席の牧子は「春ちゃん座って、座って」と小声で言うが、春花の耳には届かない。が、自分が何をしでかしたのかを
「な、なんでもありません。すみません」
「き、きっと
牧子がフォローを入れるものの、春花の
「えぇ。なら、じゃあ……翔一君、あの席に着いて」
はい、と答えると彼は後ろの席に向かった。
「じゃあ小テストやるからな。机
しかし、春花は諦めていた訳ではない。
(絶対どこかで見た事ある。絶対
と意気込んでいたが、配られたプリントを見ると顔から生気がどんどん抜け落ちる。
(こっちも全然分からない)
東雲春花は夢を見ない @nakayama_siun
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