第5話<<紺碧>>④
二人は
おでこを大っぴらに開き、耳の辺りで小さく
と言うのも、自転車を押している時に、後ろから彼女の二人目の
そんな彼は、二人を横切る寸前に口を大きく開いて春花に
「今日の小テスト、勝負な」
春花にとっては迷惑この上ない。元々勉強する予定も無いし、さっさと学校に行く予定も無い。だが、ここで負けたら一ヶ月は馬鹿にされるので、勉強しない訳にもいかない。そんなこんなで自転車を漕いでやって来た二人であった。
予習をする気になったから喜んでいるのか、それとも鉄郎と会えて嬉しいのか知らないが、牧子はそれでルンルンと跳ねている訳だ。
「あのさぁ。牧ちゃん、金ちゃんの顔が見れただけでそんな嬉しいの?」
「そ、そんな事ないよ」
まるで漫画みたいに慌てふためく牧子を見て、春花は更に大きくため息をつく。
実を言うと、この二人は付き合っていた。鉄郎と春花が幼馴染であると言う事は、鉄郎と牧子も小さい頃からの馴染みであると言う訳である。
鉄郎も負けず劣らずの怪獣で、昔から暴走する春花と鉄郎を抑えていたのも牧子であった。そんな二人が、春花の預かり知らぬ場所で付き合い始めていた様なのだ。
別に鉄郎の事が好きではないが、一年生で三人同じクラスの時は流石に居ずらかった。中学校までは教室で給食を食べていたが、弁当制になった高校生、いつも牧子と昼食を食べていた彼女にとって、最後の半年は一人寂しくパンを
そんなこんなで二年生に上がった今年、鉄郎だけハブられ別のクラスへ行ってしまった。だが、彼は彼女らと違って親しい
「そんな事あんじゃん。あーいーなー。お熱で」
「……でも、最近会ってないから……」
ポっと赤らめた
頭の後ろで手を組み、
「あたしも幸せになりたいな」
「あ、春ちゃん。勉強は?」
「しまった」
結んだ手を離し、春花は教室に駆け込む。
小さくクスクスっと笑う小さな少女。
今日も
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