あとがき(難解すぎて分からない方へ)
このあとがきを見てくださっているということは、僕の小説を読んでいただけたと言う事でしょうか?
読んで頂き誠にありがとうございました!
評価等、是非お待ちしているので、お暇ができてこの作品を思い出したらちょこっとでも書いていただけると泣いて喜びます。
さてと。
ここからは作者の僕が作品に解説を幾つか挟む、ただの雑談会です。興味のない方、まだ読んでおられない方はそっと閉じて下さい。
というわけで始めましょう――
といっても何か話の取っ掛かりを作らないといけないので、一つ質問を。
この作品のテーマが一体何か、お分かりいただけましたか?
…………
色々な解釈ができるよう作りましたが、僕が言いたかったのは
『伝えることの難しさ』
です。
ロボットの博士は感情がわからないと言っていたが、実際には手に入れていた。ただ感情を伝えることが難しくて、放棄してしまう。一方の少女は確かに感情を持ってはいたが、自分をロボットだと信じ込み、否定し続ける。
伝えられないことのもどかしさと儚さを、僕も伝えたかったのです。
人はどこかで見栄を張ったりして思いを伝えられないことが多いですよね(コミュ障の僕の持論です)。自分の体面を気にしたり、相手を慮り過ぎたりして。後からそれが悪い選択であったと、人はよく後悔します。
「私、僕は〇〇だから」と言って伝える事を諦めてしまう人もいる。自分を型にはめて、そこから抜け出せない、もしくは抜け出したくない。
僕はそれを強調したくて、キャラクターを人間とロボットにしました。硬く冷たい型に収めてしまう、押し込めてしまう。そんな姿を表現したかった訳です。
そして、もう一つは、「言葉の難しさ」です。
今これを書いている最中でも、日本語という言葉の難しさに直面しています。どう上手く伝えられるか、どんな言葉を使うか。ずっと悩んでます。たくさんの多義語がこの世に存在し、一文字ですべての意味が変わってしまう。なんどもなんども見直しても、その言葉の意味や矛盾に拒まれてしまいました。今だってそうです。
言葉という道具は、一見慣れているようで、実は慣れてない。そんな道具なのかもしれないと、書きながら思っています。
簡単なテーマ紹介はこれで終わりにさせていただきます。もう話す事がないというのが本心ですが。
・世界観や設定
まず世界観。僕は『核戦争により壊滅的な被害を受け、人が生存できなくなった世界』を軸に作品を作りました。博士が言う『毒素』とは放射線のことで、少女に施されたメンテナンスはそれに耐えうる手術を指しています。彼女らが住む家は周囲に透明なバリアのようなものが張ってあり、一種の鳥かごのような状態です。
そして時間軸と派生した設定。
少女が途中、メンテナンス終了後に声を上げるのですが、その時うまく声を出せていないですよね。「ぁい」と発しています。本当は「はい」と伝えたかったのですが、暫く入院して目覚めると声が出なくなるアレと同じく、手術後目覚めるのにとても時間がかかったことを表してます。
その時間のずれは、題名に「花筏にのせて」と名付けたことが由来します。物語冒頭の初春から最後の晩春へ。花が咲き誇り花びらが舞い、散り流れる様を表現したかったのですが、これは完全に自己満なので気にしないで下さい。
ただ気づいて欲しいのは、博士が座っていた揺籠椅子が筏の比喩であったことです。個人的に一番気に入っている表現なので、皆さんにも伝わっていただけたら嬉しいです。
ちなみに花筏は極楽浄土へと行く様を表す言葉から派生したものです。だから『花筏にのせて』という題名をつけました。
(のせて、と平仮名にした理由は二つの意味を持たせたかったからです。一つは想いを花筏に乗せる意味。もう一つは自分を連れて行ってほしいという、乗せてという意味合いを持たせています)
また食事をするシーンを冒頭で書いていますが、あれは食事という行為そのものの寂しさを表しています。
僕の持論になってしまいますが、『食事』という行為は過程を楽しむものであって、おなかをいっぱいにするという原始的な目的を持つ食事の方が圧倒的に少ない、と思っています。
要は、食事という過程の中で「楽しむ」ということを少女と博士は分からない。そんな意味を表したかったわけなんです。
ままごとに近い行為ですね。まねをしてみるが、その本質を理解していない。そんな無知さを表現したつもりです。
ちなみに料理はフランス料理から持ってきました。学校の保健だよりに書いてあったので。深い意味はありません。ああ、おなか減った。
・人物
少女……本作の主人公。容姿端麗。何も感じていないようで、繊細かつ母譲りの頑固な性格。特技は家事全般。母と死別後、博士の元で育てられた。自身ををロボットと思い込んでいた。博士との死別後、彼女は家の外に出て夫と二人の子宝に恵まれる。
花筏が流れる季節になると、彼女は博士との家に戻り、窓辺の揺籠椅子に座る錆びた博士に逢いに行くとか。
博士……白髪混じりのボサボサ髪が特徴。よれたシャツを着る。50代に近い容貌を持つ。元は家事補佐用ロボットであったが、少女の母はロボットであることに関係なく接した。普段は無口で愛嬌のない顔だが、少女の作った料理を食す時のみ稀に笑顔を溢すらしい。が、本人は無自覚のうちである。
少女の母……少女や博士の心の根底にあり続ける『少女の母』。気さくかつ頑固な性格の一方、仕事は生物工学科の研究者という意外な一面を持つ。放射線除去状を確立させた時には既に体内は放射線に侵されており、少女を博士に預けた。博士の揺籠椅子は、元は彼女の物。
博士がメンテナンスを行えたのは、少女の母が作業する姿を記憶したためである。そのため一つでも例外が発生すれば対処出来なくなってしまうため、綱渡り状態だった。
◇
以上が説明になります。
ここまで設定は考えていましたが、やはり僕の力不足で伝わらなかったことと、5000字数制限という枷がキツかったので分かりにくかったと思います。場面展開が多く、読みづらかったと思いますが、単純に僕が下手だとご理解いただけるとありがたいです。
そして最後に一つ。
成長した「彼女」は物語の最後に、「手に入れた」と博士に語ります。「下さった」と断言しているので、手に入れたものの答えは『心』ではないです。
博士の手に入れたもの。そして少女が手に入れたもの。
その答えを自分なりに解釈して出して頂ければ、この作品の「伝える難しさ」というテーマに触れられるのではないかと思います。
この作品が貴方の心の片隅にでも残っていれば、幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
花筏にのせて 皇帝ペンギン @koutei0120
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