第14話 橋本誠は休みたい……だけど休めない

「ああ……やっと休みか……疲れた。今日はゆっくりしよう。眠たい……」


 ベットに転がりながらそう思う。


 今日は学校が始まってからの初めての土曜日。つまるところ、休みの日だ。

 昨日が昨日だけに疲れている。

 

「部活も疲れたし、よくわからんけど、二人の喧嘩も疲れた……」


 はぁ……と大きめのため息をつく。

 そういえば、最後犬倉さんってなんのことを言ってたんだろう。気になるっちゃきになるんだよな……


「まあいいか。とりあえず、二度寝でもするかな。なにしろ休みだし! じゃあおやす……」


 不思議に思いながら、二度寝しようとした瞬間。


「お兄ちゃん!」


「うわ……びっくりしたなんだよノックくらいしろよ!?」


 妹が部屋に飛び込んでくる。はぁはぁと息が荒いようだ。


 めっちゃ飛び込んできやがって。危ないったらありゃしない。

 なにしてんだよ。


「ノックなんて言っている場合じゃないよ! いま、大変なんだよ!」


 あの妹が焦っている。

 なにかあったんだろうか。


「大変って……今日は土曜日だぞ。なにが大変なんだ……」


「いまね。下でママが熱を出して眠っているの!」


「熱だって!?」


 それを聞いて、ベットから飛び上がる。


「そう、超高熱で、さっき体温計で計ったら38.5度もあったんだよ」


「それはエグいな。38.5度とかあんまり聞かないぞ……」


「だから、お願いお兄ちゃん。助けて欲しい!」


 手をくっつけてお願いしてくる。

 お願いしてくるとかあまりないので、心配になってくる。大丈夫なんだろうか。

 

「助けるっていってもな……俺じゃなくて父さんとかじゃダメなのか?」


「パパはいまさっき仕事に行ったよ。取引先と色々あったらしくこっちもこっちで大変らしい……」


「マジか……」


 お父さんの仕事の話とか聞きたくなかった。

 どこも大変なんだな。


「……わかった。俺が助けるよ。それで、なにをすればいい?」


「それでこそ我がお兄ちゃんだよ。流石!」


 そう言いながら、飛び蹴りをしてくる。俺はそのまま倒れた。


「痛いな! なにすんだよ馬鹿野郎!」


「なにって愛情表現だよ。普通だろ」


「普通じゃねーよ。しかも笑顔で蹴ってくるとかマジのサイコパスなのかよ!?」


「ちょっとしたことでごちゃごちゃ言わないでよ。みっともないな」


「なんで俺が怒られてんの!? 蹴ってきたお前が起こられるべきだろ!?」


 みっともないとか家族にそんなことを言うなよ!

 酷いにもほどがあるぞ。ていうか普通に痛かったし。


「まあそれはいいとして、お兄ちゃんにはやってもらいたい仕事があるのさ。そう……お買い物だ!」


「買い物か……なにを買ってくればいいんだ?」

 

 床から起き上がりながら言う。

 買い物か。ほとんどしたことがないな。買うって言ってもお菓子くらいだし。


「えっとね、ママにはおかゆを上げるから大丈夫なんだけど、私たちの分がないから今日の夕飯と後は多分、ママは風邪らしいから風邪薬もお願い」


「夕飯はカップラーメンとかじゃ……」


「ダメに決まってるでしょ。お兄ちゃん、自立した時とかそんなんじゃ早死にするよ」


 ため息をはかれる。

 うっせ。余計なお世話だよ。


「はいはいわかった。じゃあ急いで買ってくる」


「はいよ。夕飯とかは適当でもいいからね~。私はお母さんの身の世話とかするから。じゃあ行ってきてね」


 部屋を出ていく。

 風邪になっちゃったのか、お母さん。ほとんど風邪になったこととかないんだけどな。きっと家事も仕事もやっているからだろう。少しでもいいから家事手伝えるようになろうかな。


 ……と、とりあえず、まずは夕飯から買いに行こう。

 後々になるとほとんど売れきれになっちゃうからな。


 行く準備をする。ちなみに自転車で向かうつもりだ。

 電車とかは面倒だし、さほど遠くに行くつもりはないからだ。


「よし、金も持ったし、携帯も持った。準備完了だ。出発しよう!」


 家を出て、自転車に乗る。

 久々に乗ったから若干使いずらい。


「あれ自転車ってこんな感じだったっけ。感覚が取りずらいな。転びそうで怖い……」 

 

 こいでると、たまに転びそうになる。 

 ……仕方ない。少しゆっくりと行くとするか。

 こぐスピードを少し抑える。


「はぁ……久々に休日に外にでてみると、こんな感じなんだな。意外と気持ちいい」


 ゆったりとしていると自然を感じれる。

 気持ちよくてつい寝てしまいそうになる。

 

 いかんいかん。こんなところで寝ると死ぬ! 絶対寝るなよ、俺!


 そんなことを考えていると、スーパーに着いた。

 めちゃめちゃにデカいTOUYUとうゆうという駅前にあるところで比較的なんでも売っている。


 ここで今日の夕飯を買おう。

 俺は駐車場に自転車を置いて、TOUYUの中に入っていく。

 そしてカゴをショッピングカートに入れ、歩き出す。


「よし、まずはなんの冷凍食品から……って着信音?」


 食材を選ぼうとしたところにスマホからチャリンと音が鳴る。

 まあ、食材っていっても冷凍食品なんだけどね。

 

 俺はスマホを取り出す。妹からのメールだった。


『お兄ちゃんへ。やっぱり心配なので冷凍食品なんかじゃなくて、ちゃんとした食材を買ってきてください。簡単にできるカレーにしましょう。私が作り方を教えるので! 追記、余裕があったらお菓子買って来てね♡』


 すると、すぐにカレーの食材のメモが送られてくる。

 

 はは……なんでこいつ俺が冷凍食品買おうとしてんの知ってんだよ。

 予知能力とか怖いわ! しかも最後のハートがなんか嫌だ……気持ち悪い。


 そんなことを思いつつ、仕方ないので、メモ通り食材を探していく。


「えっと、たまねぎ2つにニンジン1つ。それにジャガイモが2つで鶏肉を少し。あとはルーか。読み上げると結構多いな。地道に探すとするか」


 こんな感じのことなんかやったことがないので、時間が掛かりそうな気がする。


 店内を歩き回りながら探していく。

 

「あ、一つ目のためねぎ見っけ。ラッキーだこんなに早く見つけれるとは……」


 目の前には切ったら涙が出てくるで有名のたまねぎがみえる。

 俺はそれをとろうと手を伸ばした。


 すると、同じようなことを考えていた人がいたようで手同士がぶつかった。

 やっべ。まわり見てなかった。謝んないと。

 

「す、すいません。ぶつかっちゃって」


「いえ、私の方こそすいません。お先どうぞ」


「ありがとうござい……ます!?」


 横を向くと、見知った顔があった。


「犬倉さん!?」


「誠君!?」


 声が重なった。

 


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痴漢から超絶可愛い銀髪美少女を助けたら非モテ陰キャだった俺が急にモテモテになりました シア07 @sia1007

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