第13話 これが修羅場ってやつぅぅぅぅぅ!?
なんだろうこの状況。どうしてこうなった。
電車に乗りながらそう思う。
両隣には清水さんと犬倉さんが一緒に座っている。
他の人がこのことを聞いたら天国だとか、ふざけたことをいうかもしれないけど、俺からすれば地獄のような感じだ。
動けないし、話しかけにくい。
本当にどうしてこうなったのだ……
確か清水さんが俺にちょっと待ったと言ってからだっけ……
少し前のことを思い出す。
「一緒に帰らせてもらうって……私たちとってことですか?」
犬倉さんが聞く。
一体どういうつもりなんだろう、清水さん。
仲良くなったと思ったら、無視するし。無視されたと思ったら話しかけられた。
やっぱ女の子の気持ちとかよくわからないな……
「その言葉通りです。電車の方向は一緒だし、帰ってもいいですよね? 犬倉さん」
「私は……いいですけど」
俺の方を見る。
「お、俺も大丈夫。問題ないよ」
「なら決定ということで。とりあえず、駅に方に行きましょうか」
俺たちは駅へ歩き出す。
しかし空気は最悪だ。ずっとシーンとしている。
き、気まずい……なにか話しかけてこの場をもう少し楽にしようかな。うん、そうしよう。
「な、なあ、犬倉さん。二人ってもしかして知り合いなのか? 名前も知っているみたいだし」
「……はい、ちょっとだけ。同じ中学校ってだけです」
「なるほど、そういうことか」
中学が一緒ってことは仲は……いいんだよな?
二人の顔をみる。
なんだか、仲がいい人の感じがしない。どちらかというと敵同士みたいな……
ってそれヤバくね!? この状況ヤバくね!? これが俗にいう修羅場ってやつじゃね!?
「あんまり話したことはないんですけど、彼女は有名でしたから知ってました」
「そういう犬倉さんこそ有名でしたよ。銀髪の美少女でしかも陸上も結構できる方でしたし!」
「もう、清水さん。なに言っているんですか。部門は違いますけど、あなたは長距離走で県大会に出ていたじゃないですか。陸上部の中では断トツで有名でしたよ」
「まあ出てますけど……」
「!?」
県大会に出てたのかよ清水さん。
だからあんなに速かったのか。もし、なにも障害物のない状況で走ってたら絶対追いつけなかったってことだよな。す、すごい……
「ってなんで私たちはこんな話で盛り上がってるんですかね。馬鹿馬鹿しくなってきました……」
「ホントですね。つい私も清水さんに対して敵対心を燃やしていました。すいません」
「あはははは……」
一応、苦笑いしておく。
犬倉さんが言いあっているの初めて見た。清水さんも前とは違って話せてるし、なんだか色々と凄いな。
「……そういえば、誠君は陸上の大会とかは出たことあるんですか?」
犬倉さんに聞かれる。
ちょっと答えずらい。
「……いやないよ。そもそも中学の頃は部活やってなかったし。大会とかは見たこともない」
「へぇ……そうなんですね。意外です。あんだけ速かったからてっきりやっていると 思ってました」
「速いって……別にそんなことはないよ」
嬉しいな。褒められるとやっぱ嬉しい。
「ってなに橋本君はデレデレしているんですか!? 褒められたくらいでデレないでくださいよ!」
「ぜ、ぜ、全然デレてないから! 勘違いだからね!?」
「ふん、いいですよ。確かにこの人美少女ですもんね。デレる気持ちはわかりますよ」
「だからデレてないからね!?」
「それよりも、駅に着きましたよ。ちょっと喧嘩は止めましょう。みなさんの迷惑になりますし」
「喧嘩もしてないから! ていうかさっきまで喧嘩みたいなことをしてた人が言うなよ!?」
ということで駅に入り、電車に乗って、いまに至る。
結局、駅に入ってからは何の会話もしていない。
「ね、ねぇ……ちょっと……」
「「……」」
ヤバい。さっきとは違って二人とも全然話そうとする様子じゃない。
睨み合っている感じだ。
やっぱり仲が悪いのかな。俺、この空間にいてもいいのかな。
そこに犬倉さんが口を開ける。
「……清水さんはどうして今日、私たちと帰りたいって言ったんですか?」
確かに。どうして声なんかかけたんだろう。俺も気になる。
「そんな大した理由なんかないですよ。ちょっとたまたま見かけたので声をかけてみようと思っただけです。橋本君にはこの前の件ももう一回謝ったほうがいいかなって思ったりしたので」
もごもごとした感じで言う。ちょっと恥ずかしそうだ。
「この前の件? 誠君、なにかあったんですか?」
「……いや、別に」
「あれ、言っていないんですか? なら言おうかな。私が橋本君に……」
「みなまで言わなくていいから! 余計に話しこじれそうだから!」
嘘告とか恥ずかしいったらありゃしない。
聞かれたくない!
「ええ……私、気になりますよ。教えてくださいよ清水さん」
「もう、犬倉さんまで聞かなくていいから」
聞かれたらこいつは本当に言いそうで怖いんだよ。
口柔らかそうだし。そう考えると痴漢の件も言いそうだよな。
この場なら言ってもいいんだけど。後々困るぜ。
「そんなに私だけ共有できない話なんですか!?」
「そうですよ。別にそこまで嫌がることじゃないじゃないですか。ちょっとしたいたずらみたいなものですし。言ってもいいですよね」
「なんで、そこで二人で共闘するんだよ!? 本当はお前ら仲いいだろ!!」
そんなことをしていると、電車が駅に着く。
「あ、着いちゃいましたか。私はここが最寄り駅なので、お別れですね」
清水さんが席を立つ。
そのまま電車から降りる。
「じゃあ、今日はありがとうございました。色々話せましたし、よかったです。また今度もお願いします。犬倉さんもですよ!」
ふふっと笑いながらそう言い終わると、電車が閉まる。
そして出発した。すぐに清水さんの姿はみえなくなる。
「ふぅ……疲れた。部活の後にここまで疲れるとは思わなかった」
「私も疲れちゃいました。ちょっと喧嘩っぽい雰囲気にもなっちゃいましたし。これは反省ですね……」
ほんの少し落ち込む様子を見せる。
「ていうか傍から見たら、なんだか二人はライバルみたいな感じだったぞ。二人の間がビリビリしてた」
思ったことを正直に言う。
「ライバル、ですか……確かにその表現はいいですね! ピッタリな感じがします!」
「ピッタリっていっても部門が違うから競うことが出来ないじゃないか。ライバルっていうのはちょっと違くないか」
「いえいえ、競うっていっても陸上なんかで競ってませんから」
「え、違うのかよ!? じゃあなにで競っているんだ!?」
「……内緒です」
また電車が駅に着く。
「じゃあ私もつきましたのでさよならです。バイバイ!」
「っておい、ちょっと!」
そう言うが無視して電車から降り、行ってしまう。
「……なんだよ。俺だけわかんないのかよ!? 仲間外れかよ!?」
俺は一人でそうツッコんだ。
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