美鈴編7

 …やってしまった。なんてことを。。。 


 小説じゃあるまいに、なんて恥ずかしいことを。思わずうなだれる俺。 


「ちょっ急に何言ってるのよ!」


 美鈴が顔を赤らめながら戻ってきた。 


「優季!恥ずかしいじゃない!!」

 

 わりとまじで美鈴は怒ってる。


「…悪い。今のは忘れてくれ。」


 更にうなだれる俺。 


「…ぷっあはははは!まじうける!こんなことって実際にあるんだね!」


「いや、ち、違うんだ。今のは…その、あのな…」


「え?間違いなの?」


「いや、それも違うんだ。なんというか。。」


 その時電車の出発音が聞こえてきた。 


「あ、電車が!!」


 この駅は無人駅で、次の電車は1時間後だ。


「優季のせいだからね!!次の電車まで一緒にいてよね!」


 やばい。一緒にいるのは幸せだが、逃げられない。


 冷や汗が止まらない。どうしたらいいのか。


 とりあえず謝るしかない。


「なんか、ごめん。」


「謝らないで。告白の仕方はどうかと思うけど、告白されて喜ばない人はいないからね。」


「…振り向いた美鈴が可愛くて、思わず言ってしまったんだ。」


「前半は嬉しいよ!けど思わず言っただけ?」


「いや、今日思いは伝えようと決めていたんだ。美鈴にフラれてもいいからちゃんと伝えたいと。でもギリギリまで勇気がでなかった。変な形になったけど言えてよかった。」


「ありがとう。気持ちは受け取ったよ。…私も優季のことが好きだよ。」


「え!?本当に?」


「そりゃそうでしょ笑 好きじゃなかったらこんな一緒にいれないよ。」


「…そっか。ありがとう。あの、美鈴さえよければ付き合ってもらえないか?」


「…優季が思うより私の中身はきれいな女じゃないよ?綾香みたいに可愛くないし、過去もきれいじゃない。優季にはふさわしくないよ?私付き合うの怖いんだ。」


「…過去もすべて受け入れるし、俺が全部守りたい。本屋で会った時の悲しい顔をさせなくない。美鈴の笑顔を守らせてくれ。」


「…いいの?私はだめな女だよ?」


「だめなんかじゃない!一緒に乗り越えていこう。」


「…分かった。気持ちを伝えてくれてありがとう。よろしくお願いします。」


 美鈴が手を出してきた。俺はドキドキしながら手を握った。思う以上に小さな手。この子をちゃんと守ろう。強く思った。 




 …その時にちょうど流行っていた歌があった。それは一青窈のハナミズキ。


 君と君の好きな人が100年続きますように。 


 最初聞いた時は君の好きな人は俺であると疑ってなかった。


 そう、その時は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宿り木 @keke7921

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ