美鈴編6

 美鈴と再び話すようになってから、当たり前のように毎日駅まで送るようになった。 


「優季、寒いからそのマフラー貸してー。」


「そしたら俺が寒くなるだろ。」


「…ねえ、私と優季どちらがか弱いと思ってるの?」


「俺。」


「…あんたねー。」


 周りから見たらそれはもはや付き合っているように見えただろう。


 美鈴には俺から思いを伝えていない。 


 今思うとこの関係が終わることが怖かったのだ。


 いつしか12月中旬になっていた。


 周りは自然と冬休みやクリスマスの話題が及ぶように。 


「優季、あんた達めちゃめちゃいい感じじゃない!付き合ってるの!?」


 綾香が身も蓋もないことを急にぶっ込んできた。 


「逆に問うが、美鈴からなんて言われてんだ?」


「付き合ってないと。」


「うん、そのまんまだ。」


「…毎日送ってるのに?」


「その通りだ。」


「優季、それでいいの?」


「…分からない。」


「分からないなら思いを伝えなさいよ。誰かに取られるわよ?」


 美鈴が誰かの彼女になる。そう思ったらとても嫌だった。 


 フラれてもいい。思いを言わなきゃ。 


 そう覚悟を決めた。


 たしかあの日は12月20日。


 土曜日の部活動の後に遊びに行った。


 自転車の2人乗り。


 ただそれだけで楽しかった。たわいのない話をして、笑って、なんか幸せだった。 


 楽しい時間は早く過ぎる。いつしか暗くなってきた。 


 覚悟を決めて駅まで送る。言わなきゃ。


「美鈴、あの、…今日ありがとうな。」


「こちらこそありがとう!楽しかったよ。」


「じゃあまた来週な。」


「うん!またね!」


 土曜日の夕方は人が全然いなかった。


 駅の中に向かおうとする美鈴。 


 ださい俺がいた。また思いを言えなかった。 


 ただただ美鈴をずっと見ていた。 


 すると、美鈴がこっちを振り返って手をふってきた。


 街頭に照らされた美鈴はきれいだった。


 衝動的に俺は叫んだ。 


「美鈴!言いたいことがある!」


「え!?何?」


「好きだ!」


 俺の突然の告白が無人の駅にこだました。

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