美鈴編5
美鈴の声が聞こえてきて、焦りなのか、不安なのか、動悸が激しくなる。
話し声が聞こえるということはもしかしたら誰かと一緒なのかもしれない。
どうしよう。
やはり明日にするべきか。
寒いはずなのに汗をかく自分。
美鈴が見えた!綾香と別れて1人で出てきた。
意味分からないが、優季は急に怖くなり踵を返して逃げるように帰ろうとした。
「優季!」
「お、おー美鈴。奇遇だな。」
思ってもみなかった。美鈴から声をかけてきた。
「やっと話せたわね。なんで私を避けるの?」
「べ、別に避けてないぞ。たまたま会わなかっただけだろ。」
「うそばっかり。学校で目も合わせてくれなかったじゃない。」
「…いや、なんか俺のこと嫌になっただろうなと。」
「なんで?優季は私に何かしたの?」
「…お前が先輩と話していた時にお前を無視してしまった。」
「あの時助けてくれなかったもんね。」
「…美鈴が嫌がってるようには見えなかったんだ。」
「好きで付き合ってた人に話しかけられてすべてが嫌なわけじゃない。でもね、フラれた側からしたらあの瞬間はとてもつらかったよ。あの時は優季に助けてほしかった。」
「…そんなん俺には分からなかったよ。」
「あの時無視したの見て、私は優季に本当に嫌われていたと思った。だから私も連絡するのやめたし、声をかけるのもやめた。」
「…違う。逆だ。俺はあのことで嫌われたと思った。いや、嫌われて当然だ。俺は最低だった。ごめん。」
「優季のばーか!!ファミレスでパフェおごってくれたら許してあげる。」
「…許してくれるのか?」
「許すもなんも最初言ったけど、優季はなんもしてないのよ。ま、なんもしてないことがタチ悪かったんだけど。」
「分かった。ありがとう美鈴。パフェ…割り勘な。」
「そうそう、おごりで許し…って、なんでそうなるのよ!?」
「だって俺はなんにもしてないんだろ?」
「前言撤回!!!優季が全部悪い!!」
「もう遅いぞー。」
全然話していなかったのにいつのまにか自然に戻れた。
…この関係がいつまでも続いていくんだろうな。
まだ人生を知らない俺は安易にそう思い込んでいた。
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