美鈴編4

 有馬先輩は楽しそうに話している。 


 美鈴の様子は…なんかおかしかった。嫌がってる?嫌、嬉しそう?


 なんか複雑な表情。


 美鈴はこっちに気づいた。目で何か訴えてくる。


 しかし、俺はそれを無視した。


 無性にイライラした。 


 そのまま2人の横を通りすぎて自分の自宅へ向かった。


 胸が締め付けられる。なんだこのもやもやは。

 

 この日、美鈴からメールが来ることはなかった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 

 いつしか11月後半になっていた。 


 新人戦のメンバーに選ばれ、試合に出ることができ、団体戦、個人戦共に一定の満足の結果を得ることができた。


 もっと試合に勝ちたい、もっと上手くなりたい。 


 部活動に燃えていた。


 いつしか美鈴のことは考えなくなっていた。いや、考えないようにしていたのか。 


 ある日の休み時間


「優季、また勉強教えてー!英語なんだけど。。。」


 綾香が話しかけてきた。


「あーこれな。After ~ingを使えばいけるぞ。」


「んー。全然意味不明。でもとりあえず提出はできそう!サンキュー!」


「ジュース1本な。」


「な、私と話せてるんだから十分でしょ!」


「…やはり2本だ。」


「あいかわらずね。部活動調子いいし、最近かっこわよくなってきたと思ってたのに!」


「お、やっと俺かっこよさに気づいたか。」


「見た目は全然だけどね!」


「やっぱりジュース5本な。」


「ちょっなんでそうなるのよ!あ、そういえば最近美鈴とどうなのよ?」


「…どうもこうも連絡とってないし、話してもいないぞ。」


「優季。さっきちょっとかっこよくなってきたとかいったけど、やっぱなし。中身もブサイクじゃない。」


「急に突っかかってくるなよ。」


「女の子から連絡したいって脈ありに決まってるじゃない。それでなにもないなんて男としてどうなの?優季のこと信用してるから連絡先も教えたのよ。本当にがっかり。」


「…しかたないだろ。送る約束の時に美鈴が有馬先輩と話してたんだよ。」


「で、勝手に引いたんだ。」


「引いたとかじゃねえよ。よく分からなかったんだよ。」


「なんか聞いてみたの?」


「…聞いてない。」


「聞いてみないと分からないじゃない!」


「…もう遅いよ。今さらなんて聞くんだよ。」


「優季次第よ。遅いかどうかなんて誰にも分からないわ。」


 そう言って綾香は去っていった。俺はどうすればいいのか。戸惑いつつも今やるべきことはわかった。


 美鈴と話がしよう。


 でもどうすれば。 


 やはり部活動後に校門で待つしかない。


 部活後。 


 1ヶ月前は明るかったこの時間もいつしか真っ暗になり、寒さも冬に近づいてきた。 


 通りすぎていく人を見ては頭をかきむしった。恥ずかしさ、緊張、不安。さまざまな感情に揺り動かされる。


 なかなか美鈴は現れない。


 今日は諦めようかな。 


 そう思いながら寒さに震えていた時、


 遠くから聞き覚えのある甘ったるい声が聞こえてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る