針をのける

@arup

針をのける

真昼間、私は逃げるようにして窓の外を見た。

雨はなぜコンクリートを溶かしてくれないのだろう。屋根も、家も、庭も、マンションも。全部洗い流して欲しい。人の考えることなんて人の中でしか使えないじゃないか。私は自然の中にいるはずなのに一枚のタイルでしかない。そんなの、ひどいじゃないですか。


その一枚のタイルはしかもひびが入っている。いや、よく見るとタイルの形をした石だった。だれが置いてきたのだろう。このタイルの形をした石が自然とそこに「ある」はずがない。これは何かしら意味があるはずなんだ。


「何してるの?」

小綺麗なチェック柄の服を着た少年が声をかける。

「この石は不思議じゃないか?」

ひびの入ったタイルの形をした石を見せる。


と、同時にそれを少年がぐいと掴んだと思うと駆けだした。

「え、それ、、」

引き止めようとしたが言葉がでてこない。

いいや、もういいんだ。そんなものどうでもいい。

そうじゃないといけないんだ。


少年はカーテンを閉める。

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