第5話 戦闘狂

「おおデルドくん!また会ったな」

 先ほど分かれた翼の街道のパーティーの人達と冒険者協会で再会した。

 まぁこうなるだろうとは思ってはいた。

 なんせ俺は冒険者協会で冒険者になるための試験を受ける、ならば冒険者の翼の街道の皆さんに会わないはずがない。

「さっきぶりですね、こんにちは」


「もしかしてデルドくんも依頼の報告かい?」


「いえ、俺は冒険者になるための試験を受けに来ました」


「え…まだ冒険者になっていなかったの!?」


「はい…」

 魔法師であるネラさんがもうなってると思っていたのに…という表情を浮かべ、大声で驚く。


「それなら邪魔したらいけねぇな、頑張ってきてくれよ!」

 と、リーダーであるジュルさんが俺にエールを送ってくれる。


「すみません!冒険者試験を受けたいんですけど」

 そう受付の人に言うと青色のオーブを持ってきて。

「それではこれに触れていただけますか?」

 そう言ってきた、持ってきたのは今までに使ったことのない魔道具だった。

 さすが王都の冒険者協会、俺が最初に行った場所よりも高度な魔道具を出してきた。


 これは相手の情報を見ることのできる魔道具だ。

 犯罪を起こしていないか、どんなスキルを持っているか。

 これ一つで知ることができる優れもの。


「はい、確認できました」

「それではあちらかから模擬戦場に入ってください」

 問題はなかったのだろう、案内されたのはドーム型の訓練場だった。

 今までの場所よりも設備はしっかりとしており、魔法をぶつけても壊れることはないだろう。


「お前か?今回の新入希望者は」


「はい!」


「お!いい返事じゃねえか、好きに来ていいぞ」

「スキルも使って構わねえ、俺はBランクの冒険者だからな、安心して来な」

 俺は言われるがままスキルを使う。


『お主、さっきの戦闘で少し強くなったの』

『狐の耳と尻尾がより濃くなってるのじゃ!』


 尻尾を見ると前回スキルを使ったときよりもはっきりと見ることができた。


『全力で行ってもいいが殺さないようにな?』


『はい!わかりました!!』

 俺は楽しみでならなかった、Bランクの冒険者相手に何処まで通用するか。

 そのことで頭がいっぱいだった。


「行きますね……ふぅ」

 渡された模擬戦用の剣をグッと握り込み、

「すぅ!」

 思いっきり地面を踏み込んだ。

 すると地面には足跡が残り、飛び出すときの音はザッではなくドッと聞こえた。


 ものすごいスピードで斬りかかる。

「おいおい!こりゃあ威勢の良いのが入って来たじゃねぇか」

「踏み込みは良いが…まだまだ甘いな」


 斬りかったが剣を吹き飛ばされた。

 あれほど強く握っていたのに、それも関係なく。

「すごい…!強いなぁ」

 俺は無意識のうちに笑みを浮かべている、それも口が裂けるのではないかというほど大きく口を開いて。




 剣を取りに行くことはせず素手で殴りに行く。

 それを相手が剣でガードした瞬間、

「狐火」

 剣ごと燃やした、俺の武器がないのなら相手にも持たせなければそれでイーブン。

 そこからはひたすらにラッシュ、攻撃の手を緩めることはない。


 ところどころ狐火で相手に追撃のダメージを与え、それを警戒させる。

 そして相手の警戒が最大値になった瞬間抱きつき、己ごと燃やす。

 これは自分も燃えるであろうと思っていたがそんなことはなかった。

 相手には炎でダメージを与えるが俺はノーダメージ。


 これ幸いと思い尻尾を使い首を締め上げる。

 そしてそのままダウン。


「勝った…!」

 倒れた相手を見るが一切火傷はなかった。

 不思議に思い聞いて見ると、

『おお、それはな?狐火は敵しか燃やさんからじゃ!だから痛みはあっても傷は残らん』

 と言うことらしい。

 無事ならば良かった。


「おいおい、負けたのかよ…新人に」

 俺の試験官をしてくれたバルクさんが目を覚まし、驚愕の表情で嘆く。

「まぁとりあえず、お前は合格だ」

「後で協会の人間から話があると思う、そこで色々聞いてくれ」

 覚束ない足取りでバルクさんは裏口から訓練場を出ていった。


 受付に行くと初めて見る人に対応された。

「さっきの戦いを見ていたよ!いやぁ、面白いものだった」

「君はBランクから初めてもらうことにする、それだけの実力があると判断されたからね」

 長い耳に長い髪、いたずらが好きそうな顔をした人だった。

 いや人ではないくエルフか。


 エルフとはかなり珍しい種族のはずだがこんなところに何故…。

「協会長!なんで勝手に決めてるんですか!」

 奥からスラッとした体型でツリ目の怖そうな女性が怒りながら出てくる。


「はははは!だってそのほうが面白そうじゃん」

「君は今日からBランクの冒険者だから、楽しんでね」


 エルフの女性は首根っこを捕まれ奥に引きずられて行った。

 俺はひとり取り残され、

「もう帰ってもいいかな?うん良いよね」

 待つのも面倒なので宿を探しに出た。

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〜神様とキスをして〜落ちこぼれだった俺、神社に行くと神様に気に入られて最強に!! 真堂 赤城 @akagi33229

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