第35話 フィッシュ&チップス ジャガイモ

第三節

 12月中旬。今年は暖冬と聞いていたが、さすがにジャンパーが必要になってきた。畑をパトロールしていても虫がめっきり姿を隠し、畝周りの雑草の丈も伸びてこない。

 遅まきながら植え付けたジャガイモはというと、茎がぐったり倒れかかっており、葉も縮れ縮れだ。そろそろ収穫か。

 ひと株つかんでごそっと引っこ抜いてみる。んっ、根っこに付いているのは大小さまざまなサイズでばらつきはあるが、納得の成果が確保出来るとみた。明日以降は雨が続いて土がじめりそうだ。一気に収穫することにした。

 ひとーつ、ふたーつ、みっつ。よしっ、20株でダンボール3箱分の収量だ。個人的にはかなりの満足度。


「あ~。これ、割れが多いなぁ」

 振り返ると畑の師匠。そう、なぜかイモの真ん中がパックマンの口の如く、ぱっくり割れた産物が多い。

「これってなぜでしょう?」

「肥料の遣り過ぎや。ジャガイモは元肥だけで十分で、追肥は要らん」

 そうか? そんなものか? マニュアルには追肥も必要と書いてあるが…。

 さっそくスマホを片手にペタペタ調べてみると、“雨が多く急な水分の吸収によって起こる現象。実の膨らみに皮の成長が追いつかなかったことが原因”とある。

 う~む、師匠の経験則も然り、マニュアルも然り。しかし、食するには何も問題がない模様。今後の自分の術に活用しよう。


 さて、家に戻って早速クッキングの開始。

 まず、秋に捕獲したハゼを解凍。イモも短冊状に包丁を入れ、高温油のプールの中にジュワッと。そして黄金の聖水をジョッキに注ぎ入れグビッと、揚げたてをパクッと。

 ブファー、旨い!

 やはり労働の後、風呂上がりの麦ジュースと旨いものは格別だ。ビンボー窓際サラリーマンが故のプチ自給自足。

 可愛く尻尾を振っていれば、安定的にエサをもらえる鎖に繋がれた飼い犬。自由だが、自分でエサを獲っていかなければならない愛想のない野良犬。どうやら自分には野良犬生活の方が性に合うようだ。

 本当の豊かさはどこにあるのやら。まだまだ探検は続く。


拝啓 母ちゃん

 農業は毎年一年生ながら、最近は大きな不作はなくなってきました。周辺ノイズに振り回されるサラリーマン仕事と違い、知力・体力・忍耐力をフルでぶっ込んだら純粋に結果として反映される素晴らしさが農業にはあります。

 さて、来年はどんな美味いものを作りましょうか…。寒い冬の間、自作のホクホクの焼きいもでもかじりながら、じっくり考えてみることにします。


写真掲載中

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窓際サラリーマンのサバイバル農業 林葉 @linye852

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