どこかの世界の物語

収録作品3『押し入れの住人』『黒歴史』『よろずの八記商店』『西方浄土』『達磨と蛇』『揺り籠の中で』『男の名』『探偵ミサキハルカの日常』『挫折と成功』『雪月』『恐ろしい話』『ナンバーズ』『夜明け』ほか

41

私は、交換日記をしている。

小さい頃からの幼馴染とやっている。

幼馴染は、恥ずかしがり屋で一度も姿を見たことがない。

住んでいる場所は､わかっているのでそこに日記を置いている。

　　　　　　　　　　　「押し入れの住人」

　　　　　　　　　　　　　　　椎名　麻琴

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　1月21日 赤波馬駄（アカナマダ）

　　　　　魚言葉　交換日記

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42

私は、辛口カレー大盛りをよく注文する。

カウンター席が私の定位置なのだ。

この店に来たら､これを食べないなんて勿体ない。

美人店主が丹精込めて作った極上のカレーを食べ、店主を眺めることに幸せを感じる。

　　　　　　　　　　　　　「黒歴史」

　　　　　　　　　　　　　　　佐田　健人

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　1月22日 真鰈（マガレイ）

　　　　　　　　魚言葉　辛口カレー大盛り

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43

おい、茶殻は捨てるなよ。

それは､今日の夕飯のおかずになるんだから。

使えるものは使わないと、金食い虫を養うのはいくらあっても足りない。

　　　　　　　　　「よろずの八記商店3」

　　　　　　　　　　　　　　　花形　竜星

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　1月23日 茶殻（チャガラ）

　　　　　　　　魚言葉　茶殻

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44

しまうまの視野の範囲は、350度ある。

それと同等とも言えるやつが、一人いる。

気持ち悪くてあまり関わりたくないが、どうしてこいつと組むことになるんだ。

　　　　　　　　　　　　　「黒歴史」

　　　　　　　　　　　　　　　佐田　健人

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　1月24日 片口鰯（カタクチイワシ）

　　　　魚言葉　しまうまの目

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45

西の方を進めて歩けば、苦しみのない理想郷があるとあの人は言った。

そんなものは存在しないと親は、あの人を嘲笑した。

でも、僕は本当にあると言うならこの目で見てみたい。

　　　　　　　　　　　　　「西方浄土」

　　　　　　　　　　　　　　　春野　夢彦

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　1月25日 豊年天狗魚（ホウネンエソ）

　　　魚言葉　西方浄土

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46

なんだこれは。

俺は、小学生が書いたような作文を朗読したいんじゃねぇ。

あんたの──達磨先生の作品でやりたいんだ。

俺は、まだ本物じゃない。

だけど先生は、モノホンの作家だ。

偽物のふりなんかするんじゃねぇよ。

　　　　　　　　　　　　　「達磨と蛇」

　　　　　　　　　　　　　　　新井　梧楼

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　1月26日 馬頭鯛（マトウダイ）

　　　　　　魚言葉　作文の朗読

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47

見ないふりをしてた。

自分さえ良ければ、ほかのことなんてどうでもいい。

だって､誰かが助けてくれるんだから。

余計なことをして、逆に迷惑かけるくらいなら、何もしたくない。

それでいいんだ､それで良かったんだ。

なのに、心は締め付けられて苦しい。

　　　　　　　　　　　　「揺り籠の中で」

　　　　　　　　　　　　　　田塚　恵太郎

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　1月27日 薄目張（ウスメバル）

　　　　　　魚言葉　見ないふり

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48

天下統一なんて夢のまた夢。

できっこないと誰もがそう思っていた。

だがしかし、それを可能にした男が一人。

その男の名は──今はやめときます。

これは落ちにでも名乗っていただきましょう。

　　　　　　　　　　　　　「男の名」

　　　　　　　　　　　　　　　夜桜亭万宗

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　　　　　1月28日 ラブカ

　　　　　　　　　　　　魚言葉　天下統一

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49

猫の手も借りたいくらい忙しいのに、あの人はどこ行ったんですか？

僕ばっかり仕事を押し付けて、呑気に散歩に出掛ける。

本当にあの人、探偵なんですか？

　　　　　　　「探偵ミサキハルカの日常」

　　　　　　　　　　　　　　百合崎　未来

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　1月29日 猫鮫（ネコザメ）

　　　　　　　　魚言葉　猫の手

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50

私は、一刻も早くこの状況を伝えなくてはならない。

携帯電話は､何処かに落としてしまった。

公衆電話でもあれば、良かったがそんな物ここにはない。

私は、友人を小屋に置いて急ぎ下山した。

　　　　　　　　　　　　　「黒歴史」

　　　　　　　　　　　　　　　佐田　健人

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　1月30日 鯊口（ハゼクチ）

　　　　　　　　魚言葉　公衆電話

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51

絵にも描けない美しさという言葉があった。本当にそんなものが存在するなんて、自分には俄かに信じられなかった。

できないことは存在しないと、自負していた。

しかしどうだろう、目の前の光景に震えている。

筆を持つのが、恥ずかしくて投げ捨ててしまいたい。

　　　　　　　　　「挫折と成功」

　　　　　　　　　　　　ジャン・カーター

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

1月31日 竜宮の使い（リュウグウノツカイ）

魚言葉　絵にも描かない美しさ

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52

天使の羽根が舞っている。

真っ白な大地に舞い降りた天使のようだった。

無邪気に踊る君があまりにも美しく、僕は見惚れてしまった。

この時間が、ずっと続けばいいのに。

　　　　　　　　　　　　　　「雪月」

　　　　　　　　　　　　　　　　倉野　歩

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

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53

あ〜恐ろしい恐ろしい、この場から逃げたいくらい。

長いこと恐ろしい話を語ってきた私でも最も恐ろしい話が、一つだけあります。

それは､落ちがつかない話でございます。

　　　　　　　　　　　　　「恐ろしい話」

　　　　　　　　　　　　　　　夜桜亭万宗

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

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54

予約制の個室の店を用意するなんて、準備が良すぎない？

相手が私じゃなかったら、デートにしては殺風景ね。

　　　　　　「探偵ミサキハルカの日常3」

　　　　　　　　　　　　　　百合崎　未来

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　2月1日　黒底鱚（クロソコギス）

　　　　　魚言葉　予約制

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55

あの、先輩勝手にパソコンいじらないでもらえますか。

今、データの更新中なんです。

勝手にいじられますと、データが飛んでまた始めからやり直さないといけないので……。

私は､定時に帰りたいんですよ。

だから、邪魔しないでください。

　　　　　　　　　　　　　「ナンバーズ」

　　　　　　　　　　　　　　　樋川　五月

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　2月2日 楔河豚（クサビフグ）

　　　　　　　魚言葉　更新中

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56

気にしないでください。

これは､ただのバグで文字化けしているんです。

家に持ち帰って、直すので仕事に戻ってもらえますか。

それでは､私は定時なので失礼します。

残業頑張ってください先輩。

　　　　　　　　　　　　　「ナンバーズ」

　　　　　　　　　　　　　　　樋川　五月

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　2月3日　雁木鱏（ガンギエイ）

　　　　　　魚言葉　文字化け

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57

子宝にも恵まれて、幸せですね。

それに、奥さんは美人で羨ましい限りです。

あの日、あなたの決断は間違ってはいなかった。

誇っていいんですよ。

だから、こちら側とは縁を切って真っ当に生きてください。

さよなら他人さん。

　　　　　　　　　　　　　　「夜明け」

　　　　　　　　　　　　　　　　津田　和

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　　　　2月4日 鰊（ニシン）

　　　　　　　　　　　魚言葉　子宝

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58

いとこが、どっかの不良と喧嘩しているのを目撃してしまった。

巻き込まれるのが目に見えていたので、どうにかしてこの場を去りたい。

　　　　　　　　　　　　　「黒歴史」

　　　　　　　　　　　　　　　佐田　健人

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　2月5日 鬼虎魚（オニオコゼ）

　　　　　　　魚言葉　いとこ喧嘩

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59

昔々あるところに、とても美しいお姫様がいました。

宝石よりも美しく、国じゅうの女が嫉妬して家の壁を破壊するほどでした。

しかし、お姫様には秘密がありました。

　　　　　　　　「ザヴァール童話集

　　　　　　　　　　1巻9番偽りのお姫様」

　　　　　　　　　　ハウマン・ザヴァール

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　　2月6日 顎鯊（アゴハゼ）

　　　　　　　　　魚言葉　昔々あるところ

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60

俺達は、年中無休の四六時中で粉骨砕身で組織に尽くしているんだ。

これ以上の都合の良い道具は､他にないだろう。

　　　　　　　　　　　　「ナンバーズ5」

　　　　　　　　　　　　　　樋川　五月

　　　　　　　　　　　　　　　※一部抜粋

　　　　　　　　2月7日　銀鮒（ギンブナ）

　　　　　　　　魚言葉　年中無休