第3話

「そんでね、お隣りに来た人って変わってんの。外見は普通なんだけど、臭うのよ。絶対何か秘密があるんだ!」

「お前は犬か!」と激しく突っ込みたいのをグッと我慢して何気無い風を装い聞いてみた。

 どうせ聞かなくても話したくてウズウズしてるのを分かっているが。


「それで、何処が普通と違うんだ?」

 かんなが黙り込んで必死で考えている間、雪彦に聞いてみる。

 だが、平日の昼間に来たため、雪彦は大学へ行っていたから噂の隣人に会ってないと言う。

「……とにかく、 挨拶にまた来ますって言ってたから、一狼が自分で確かめたら良いじゃん」


 考える事を早々に放棄したかんなは、目の前に並ぶご馳走へと意識を集中しだした様だ。

「わぁ、今日はハンバーグだ! いっただきま~す」

 その時、来客を告げるミハイルの声が。奴にしては珍しく話が弾んでいる様だ。





 昼間来た時は、訳の分からない小娘だけしか居なくて、出直して来た訳なんだが。

 玄関に立って呼び鈴を鳴らそうとした時、不意に後ろから声を掛けられた。

 オレには分かったね。ヤツはヴァンパィアだって。

ヤツら程、気配を消して近付くのが得意な輩は居ないし、食事して来たばかりなのか血生臭い匂いがプンプンしてやがる。


「何だ、新聞ならこの家は『毎晩新聞』と決まってるから諦めた方が。何だ、違うのか。雪彦か小娘の知り合いか? 違う? じゃ何の用だ」

 矢継ぎ早に質問責めに合い、いい加減キレ掛かってたオレは、つい睨み付けてたらしい。

 相手が思わずゴクリと息を呑む音が聞こえた。

「オレ……いや、僕は隣に越してきた『カノン・グレィ・末廣』といいます。引越しの挨拶に来たんですが、ご家族はご在宅ですか?」


 どうやらヤツが依頼人の怨みを買ったターゲットらしいな。

 病院で血液を盗み、自称未来の名医というMr.アカツキを死ぬ程驚かしたヴァンパィアというのは。

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月杯【エクソシスト】 水月美都(Mizuki_mito) @kannna328

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