第2話

「商談は成立したみたいだな、その分じゃ」

 行きつけの道具屋の親父がオレの顔を見るなり言った。

 この商売を始めた時からの馴染みで、先代の親父よりも遥かに年上であるオレを一番知ってる奴だ。


「今回の奴は、えらく気前が良いもんでね。変装道具一式と、特Aクラスの玩具おもちゃをくれよ」

「と、特Aだって?! 一体何処ぞのお偉いさんだい! 今だかつて特A使う程のモンスターに出会った事は無いぞ。だ、大丈夫かよ? ルシアン」


「その名は呼ぶなと言ったぞ、クソ餓鬼!」

「忘れてた、つい……すまんシャルル」

 済まなそうに禿上がった額を撫でるジャンを見てると怒りがスーッと消えていく。

 40年前の悪戯坊主のジャン、歳老いても変わらない癖を見てると何処と無くホッとする。


 気が付いている者も居るかと思うが、オレは普通の人間ではない。

 かといって、モンスターの類だと思われても困るがな。

 まあ、追い追い正体は明かす事にするが、今はこの狩を済ましてからだ。


 ヴァンパィアにウルフマン、スノーボーイまで居るんじゃ日本という所も案外危険区域なんだと思ってた。

 ――奴らに出会うまでは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る