どうも。異世界に初めて「じゃがいも」を持ちこんだのは、わたしです

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

異世界じゃがいもおじさん

【月刊 異世界】編集者:

 ええ、伊藤さん。あなたが異世界にじゃがいもをおろしているから、ヤロウ系でじゃがいもが普及してもおかしくないと。


伊藤氏:

 はい。わたしが神様からチートスキルっていうんですか? そういうのをもらって、じゃがいもを異世界でも栽培できるようにしました。


編集:

 異世界において、チートスキルを受け取った経緯などを教えてください。


伊藤氏:

 わたしが作っているのは、主にポテチ用のじゃがいもなんです。けれど収穫中、農具に巻き込まれて。


編集:

 亡くなったと?

 

伊藤:

 ええ。こうして異世界で生きているので、転生っていうんですかね?

 でも、元の体のまま力だけを引き継いで異世界に来ちゃったので、転移ですかね?

 まあどっちでもいいや。

 ソレ以降は、

「異世界作品にじゃがいもを普及させることが可能になる」

 チートスキルをいただきました。


編集:

 あなたが普及させたのは、じゃがいもだけですか?


伊藤:

 そうですよ。ソレ以外に必要なものがあるなら、よそを当たってください。

 ハンバーグとかは、わたしは作れません。

 異世界にあるのかどうかもわかりません。

 ですが必ず、

「異世界作品に、ハンバーグを作れる」

 チートスキル持ちが現れますよ。

 いらっしゃることでしょう。



編集:

 どうして、「異世界にじゃがいも」を持ち込むスキルにこだわったのですか?


伊藤:

 だってムカツクじゃないですか。

 これまで「異世界にじゃがいもがあること」は、度々問題視されていました。

 しかし、あったらどうなるっていうのです?

問題がありますか?

 異世界人がポテチを食ってはいけないとでも?

 わたしはそうは思いません。


 むしろ、主人公がどのようなドラマを起こすのか。

 注目すべきはそちらでしょう。



 じゃがいもでどんな奇跡を起こすのかのほうが、わたしは興味深いですけどね。



編集:

 今日に至るまで、ヤロウ系における設定のあら捜しに対して、ご意見は?



伊藤:


 PVを稼げるからでしょう。

 

 設定のあら捜しだけにこだわって本質を見失わせるのは、アフィカスの常套手段です。


 また、異世界じゃがいも問題を取り上げている輩も、設定の正確さなんか求めていない。

 単にマウントを取りたいだけなのです。


 幅の広い剣で、モンスターを切っているだけでもウソかもしれないのに。


 モンスターを焼いて食う描写があるなら、別にポテチが出てきても

「ああ、異世界だなぁ」

 って思っていただけるはずです。

 


 そもそも「中世ヨーロッパ風」と言っても、中世風なだけで十分です。

 なにもかも、中世期に寄り添った世界観にまでする必要はない。

 

 わたしはこれまでじゃがいもを作ってきましたが、

「お前の穀物は、時代のソレにマッチしていない!」

 なんて民衆から苦情が来たことなんて、一度もありません。


 来るのはせいぜい、

「ポテチ超うめえ!」

 って感想だけですよ。



編集:

 わかりました。最後に読者に向けてなにか一言を


 

伊藤:


 みなさん、異世界におけるじゃがいも発祥は、わたしにあります!

 

 わたしこと特別なのです!

 わたしにぜひとも投資を!




――彼とのインタビューで、私はひとつの学びを得た。

 偉業を成し遂げた人が、決して人格者だとは限らない、と。

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どうも。異世界に初めて「じゃがいも」を持ちこんだのは、わたしです 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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