最終話 億り人のその先へ
何気なく見ていたネットのローカルニュース欄に、
『交際相手を殺人未遂で逃亡中の
……パイセン、堕ちすぎだろ。
もう赤の他人だから知らないけど。
◇◇◇
クレメンス事件が落ち着き、パイセンがいなくなっても、僕はいつもと変わらず毎日夜に株価のチェックをして数字を書き込んでいた。
また数字が光る。
今度は東証スタンダードのウイングローラーという会社の株価だ。
ここはボロ株で有名なところ。
赤字続きなのになぜ上場を維持できているのか分からず、いつか上場廃止になると言われつつしぶとく生き残っている会社。
なんで僕がそんなのをチェックしているのかというと、ここはローラースケートを扱っている会社で、あまり運動をしなかった僕が唯一ハマったのがローラースケートだったからだ。
転んで怪我ばかりしていた子供時代が懐かしい。
そんなウイングローラーの株価はここしばらくずっと5〜6円。
ネットで検索すると、ボロ株には手を出すな、と大抵書いてあるから僕は今まで株価を書いて眺めているだけだった。
いつも通り上がるというイメージに従って、今回は10万株買う。
それでもたった50万円だ。
もし外れても大した額じゃない。
そして梨香さんにも伝える。
彼女も100万株くらい買うようだ。
「ふふっ、これってインサイダーになるのかしら?」
「そうだね。でも僕自身にも理由がわからないから当てはまらないんじゃないかな」
「そうね」
◇◇◇
次の日、ウイングローラーはストップ高を記録。
ニュースには、
『アメリカの企業再生専門のウォーリア氏が今朝、クレメンス社と並行してウイングローラー社の再生も手がけると表明』
とあった。
これか。
再生を手がける、と表明しただけで上がるなんてウォーリア氏は相当なやり手なんだろう。
期待で株価って上がるんだな。
ここからさらにストップ高を繰り返したウイングローラー社。
お洒落なデザインのローラースケートやキックボード、子供に人気のストライダーなどがSNSでブレイク。
Mytubeの動画再生数が急伸。
また、運動不足の現代人にと大人向け通勤に使えるスケートをプロモーションしたらしく、これも瞬く間に流行した。
◇◇◇
2週間ほどでウイングローラーの株価は1200円まで上がり、僕はそこで全株売り払った。
税金を引いても今回の収入はざっと9000万円くらい。
前にあった2000万ちょっとと合わせて証券口座の現金残高は1億を超えた。
これで俗に言う『億り人』だ。
◇◇◇
それから3ヶ月経った。
梨香との交際は順調だ。
それと、パイセンのあとに配属された新人の世話も順調だ。
しかし、全く数字が光らなくなった。
何回見ても、穴が空くほど紙を見つめても、何もイメージが浮かんでこない。
梨香に相談した。
「そうねえ、資産が1億を超えたからかしらね」
「どういうこと?」
「1億円がね、ようやくスタート地点なのよ。日本だと1億円を超える資産を持っているのは、わずか3%にも満たないの。でも、本当の資産運用はそこから始まるの。あなたはその光る数字のおかげで1億円を達成した。これは『スタート地点に立たせたんだから、ここからは自力で頑張りなさい』、ということだと思うの」
「1億円がスタート地点……」
「うん。何かの拍子で事業が成功して1億円を達成する人は毎年いるわ。でもね、それを維持して増やしていくことはさらに難しいの」
「そうなんだね……」
「ほら、そんな顔しないの。金持ちは大抵孤独なのよ。自分と同じ経験を積み重ねてきた人が周りにあんまりいないから。でも大丈夫よ、私が教えてあげるわ。だから一緒に頑張りましょう!」
「わかったよ、梨香。ありがとう。これからもよろしく」
こうして僕は、億り人のその先へ挑戦することになった。
期待と不安が入り混じるけど、彼女がいる限り道を踏み外すことはないだろう。
◆◆◆◆◆◆
これにて終わりです。登場する人物、事柄などは全て架空のものです。
異世界ファンタジーも連載しています。
固有スキル【交換】でいらないものを邪魔者に押し付けて成り上がります!
https://kakuyomu.jp/works/16816700426722156110/episodes/16816700426722225773
も応援よろしくお願いします。
億り人に僕はなる! ある日上がる株が事前にわかるようになった僕は彼女も出来て億万長者になります。僕と反対のことをした人が借金だらけになってますがそんなこと知りません。 気まぐれ @kimagureru
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